孫娘と暮らす童話作家の悲しみと思い出『FAKE HEART』


Masa Kei
Masa Kei

2023.03.30

FAKE HEART』は、2023年3月25日に早期アクセスで配信開始されたインタラクティブ・ビジュアルノベルで、孫娘と暮らす童話作家ジェイドの悲しみと思い出が描かれている。キャラクターデザインは日本のマンガやアニメに近く、孫娘のサラがかわいくて親しみやすい。

実は、このゲームの日本語翻訳は、私から開発チームに連絡してお手伝いさせていただいた。開発元のBLANBEEは韓国の学生が集まって作ったチーム。いま韓国ではこうした学生チームによるインディーゲーム制作が盛んで、パブリッシャーがついていない場合は海外展開をどう進めるか悩んでいることが多い。

それでも『FAKE HEART』チームは、私が協力する前から日本になんとかこのゲームを届けようと翻訳を進めていた。その想いが少しでも伝われば嬉しい。

▲サラのごっこ遊びに付き合う優しいおじいちゃん

モノクロで描かれる美しい世界

白黒映画を意識したデザインが特徴で、数百枚にのぼるイラスト、美しい音楽と物語が調和し、一本の映画を観るような没入感を生み出している。シーンによっては部屋を片付けたり、ピアノを弾いたりと、その場にある物に触れてパズルを解くインタラクティブな要素がある。

▲旅行に持っていく物を詰め込もう。かわいい物がいっぱい!

家族を取り巻くドラマと謎

童話作家のジェイドは孫娘のサラと二人暮らし。
サラの親はなぜ不在なのか、何か深い事情がありそうに見える。ゲーム序盤の回想シーンで、家族がそろっていた頃の様子と悲しい事件の一部が描かれる。ジェイドは幼いサラに事件のことを話すべきか迷っているが、ある日思い立って打ち明けたのち、再び過去の回想となって事件当日にあったことが詳しく語られる。

このように、あらすじとしては家族をテーマにしたヒューマンドラマだ。打ち明け話が終わったあとは、夏休みにサラと旅行に出かけるエピソードが続き、コミカルで楽しいトーンになる。

▲家族写真。サラの両親はどうなったのか気になる

一方で『FAKE HEART』の世界にはジェイドたちが気づいていない謎があり、何やら不穏な空気が漂っている。『不思議の国のアリス』をモチーフとした要素が随所に見られ、ジェイドの書いた童話にトランプの王国が出てくる。また別の人物の口からもトランプたちの話が語られる。それらが意味するものは?

▲トランプ王国の物語は何を暗示しているのか?

『FAKE HEART』の”謎”は、2000年代の国産ビジュアルノベルに夢中になっていた頃の興奮を思い出させてくれた。早期アクセス版でもストーリーは折り返し点まで進むものの、まだ完結していないため、続きが気になってしょうがない。

実は翻訳している私も続きがどうなるか知らされておらず、いちファンとして楽しみにしている。まだ世に出たばかりの若い才能が集まって作っているということもあり、期待を込めて推したい。この記事を読んでくださったみなさんにも、『FAKE HEART』がどういう結末を迎えるのかをぜひリアルタイムで目撃してほしい。


基本情報
開発 BLANBEE
販売 BLANBEE
配信日 2023年3月25日早期アクセス開始 / 日本語有り
定価 1,400円 (Steam)
Indie Freaks

Support us