インディーゲームを支えた10年の足跡とこれから「架け橋ゲームズ 設立10周年 記念ライブイベント」


朝比奈 / Asahina

2023年4月7日、日本国外タイトルの国内パブリッシングサポートを担う「架け橋ゲームズ(Kakehashi Games)」の設立10周年を記念する「【架け橋ゲームズ】設立10周年記念!特別ライブイベント」がYouTubeにてライブ配信された。

番組のMCは、弊Indie Freaksの一員でもある、架け橋ゲームズ マーケティングマネージャーのLayerQYouTubeTwitter)が務める。

架け橋ゲームズ (Kakehashi Games) とは

日本国外のゲーム開発者/販売会社が日本向けにタイトルのリリースを望む際にビジネスサポートを行っているチーム。

クライアントは国内のパブリッシャーパートナーを持つことなく、高品質の日本語ローカライズやユーザーの手に届くマーケティング、レーティング審査、メタデータ編集、そして、国内のイベントオペレーションなどさまざまなサービスを受けることが可能。

2013年の設立から10年を節目に開催された今回の番組では、架け橋ゲームズがたどってきた歩みや、創設メンバーの座談会、関係者や日本語ローカライズに関わった翻訳者から寄せられたメッセージなどが紹介された。

また、ライブ放送には多くのファンが集い、10周年への祝いの言葉だけではなく、高い品質で日本語に翻訳された国外のインディーゲームを届けてくれたことに感謝を伝えるコメントも見られた。

ユーザーとの距離も近く、誠実に歩みを進めてきた同社らしい光景だろう。

ライブコンテンツ

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代表挨拶

まず、架け橋ゲームズの代表であるザック・ハントリ氏から、10周年を迎えるあたってのメッセージがあった。

10年という月日の中で、単体のインディーゲームでの小さなプロジェクトに始まり、やがて著名なインディーパブリッシャーとの関係の構築や、セルフパブリッシングでの成功にいたる道のりを旅に喩え、一緒に歩んでくれたインディーゲームファンへの感謝の言葉が述べられた。

10周年とは言え、その道のりはまだ始まったばかりで、これからも期待に湧く計画が控えていることにも触れ、早くも次の20周年に向けた展望の言葉と共にイベントの開幕となった。

これまでの歩み

これまで架け橋ゲームズがサポートしたタイトルは300本を超える。紹介された画像はそのほんの一部だが、ファンにはそれぞれに「これこそ架け橋ゲームズを代表するタイトル」という思い出深い1本があることだろう。

ライブ放送のチャット欄でも、思い思いのタイトルが並べられていた。

▲これまでサポートしたタイトルは300本を超える

ビデオメッセージ

ビデオメッセージでは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント インディーズ イニシアチブ代表 吉田修平氏と、グラスホッパー・マニファクチュアCEO 須田剛一氏から、それぞれ祝いのメッセージが届けられた。

架け橋ゲームズとの厚い親交がうかがえる内容で、知名度のあるビッグネームからのメッセージに、インディーゲーム業界における同社の存在感の大きさをあらためて認識させられた思いだった。

最新サポートタイトルのアナウンス

架け橋ゲームズがサポートするインディーゲームから、4タイトルが紹介された。いずれも比較的近い時期のリリースが予定されている魅力的なタイトルで、日本語に翻訳されてプレイできることに期待が高まるばかりだ。

Cassette Beasts カセット ビースト

モンスターフォームを集めて戦うオープンワールドRPG。レトロなカセットテープでモンスターに変身してバトルをしながら、世界を探索して故郷へと帰る方法を探していく物語。録音することで敵モンスターフォームを手に入れることも可能。ターン制の戦闘も特徴。

『Cassette Beasts カセット ビースト』は、Steamで2023年4月27日リリース。他プラットフォームは晩春予定。

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Sea of Stars

90年代の古き良きJRPGを彷彿とさせる、ドット絵が美しいロールプレイングゲーム。同スタジオの『The Messenger』と共有する世界観で、その前日譚にあたる。クラウドファンディングで圧倒的な支持を集め制作されていた本作が今夏待望のリリースを迎える。

『Sea of Stars』は、Nintendo Switch・Steam・PlayStation・Xboxで2023年8月29日リリース(Steamは8月30日)

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Gunbrella

神秘的なガンブレラ(傘を兼ねる銃)を手に、パルクールも駆使してノワールパンクの世界を旅するアクションアドベンチャー。物資を集めて装備を強化し、人々から情報を集めて調査を進め、銃で戦い抜こう。高い評価を得た『Gato Roboto』開発元の新作。

『Gunbrella』は、Steamで2023年リリース予定。

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Moving Out 2

へんてこ引っ越しシミュレーターの続編。1人、あるいは最大3人の仲間と協力して、住民の引っ越しを手伝おう。動く足場を渡り、時に窓をぶち破るなどさまざまな仕掛けを突破して荷物を運ぶのだ。無数の衣装やスキンも用意されている。

『Moving Out 2』は、Steamで2023年リリース予定。

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創設者 座談会

座談会では架け橋ゲームズの創設者である、代表のザック・ハントリ氏と、現在は同社を離れて活躍されている矢澤竜太氏(公式サイト)によって、創設から10年の歩みが語られた。

創設当時のナイーブな(”青臭い”という表現だった)思い出や、軌道に乗り新たなメンバーが増えた時期、立ち上げを志したきっかけや思い、また「架け橋ゲームズ」と名付けた際のエピソードなど興味深い内容をうかがうことができた。

(左上)矢澤氏 (右上)ザック氏 (中央下)LayerQ

もっとも嬉しかった出来事を問われて「本田翼さんが架け橋ゲームズがサポートした『Overcooked! 2Steam)』を配信してくれて、大いに盛り上がっていたこと」と語るなどユーモアのあるエピソードも飛び出したが、やはり初めてのプロジェクトとして、ザック氏からコンタクトして実現した『AnodyneSteam)』を担当できたことだと語るなど、創設者ならではの姿もあった。

コーナーの最後に、ザック氏には「架け橋ゲームズをこれからどうしていきたいか」、矢澤氏には「どうなっていってほしいか」というトピックが投げかけられた。

まず、矢澤氏からは「インディーゲームを熱心に遊んでくれるユーザーや、日本のゲーム開発者に貢献するという姿勢をブレずに続けてほしい」との希望が語られ、続けてザック氏からは「次のステップに進めるため、原点に立ち返り日本のゲームを世界に展開していきたい」とのことだった。

もちろんローカライズサポートも変わらず続けていくとのことだが、これからの架け橋ゲームズの姿をうかがい知れるような座談会となった。

翻訳者からのメッセージ

架け橋ゲームズと関わりのある翻訳者から寄せられたメッセージを、ローカライゼーションマネージャーの桑原頼子氏が読み上げる形で紹介された。

10周年への祝いの言葉だけではなく、長く関わられているベテランの方々だけに、思い出のエピソードや、翻訳者にとって同社がより良い環境を構築してきたことにも感謝が述べられていた。桑原氏が思わず涙ぐんでしまうシーンもあり、良好な関係性がうかがえたのが印象的だった。

(右上)桑原氏

紹介された順に翻訳者のお名前を掲載させていただくが、実際のメッセージの内容はぜひ動画でご覧いただきたい。

Q&A

続けて行われたQ&Aのコーナーでは、今回のライブイベント開催にあたってファンから寄せられた質問に回答していくという内容だったが、やはり翻訳に関する質問に占められていた。

  • 英語以外の言語から日本語へローカライズすることはあるか?
  • 逆に日本のゲームを英語にローカライズすることは?
  • 翻訳する際にしっくりくる日本語が思い浮かばないときに参考にするWebサイトや本、アイデアを生み出すルーティンは?
  • 日本語未対応タイトルについて架け橋ゲームズにローカライズサポートを手掛けてほしい、といった要望を送ってもいいか?
  • 「宗教や文化に根ざした特殊な言い回し」と「若者言葉やミームなど最近生まれた意味の変化した言葉」とでは、ローカライズする上でどちらが難しいか?
  • 翻訳する際に印象に残ったフレーズ
  • 架け橋ゲームズ側からローカライズを持ちかけることはあるか?
  • ゲームのアップデートやDLCなどは同じ翻訳者をアサインするのか?

気になる回答内容は割愛させていただくが、時間の許す限り丁寧に、ときには苦労したエピソードなども混じえて回答されていた。BitSummitなどのイベントでも気軽に質問をして欲しいとのことなので、機会があれば質問してみるといいだろう。

プレゼント企画

番組の最後にはファンに向けて、架け橋ゲームズがサポートしたインディーゲームのSteamキーのプレゼント企画も行われた(応募期間は終了済)。

ここ1~2年以内にリリースされた比較的新しいタイトルから10本がピックアップされていたが、いずれも魅力的、かつ、ユニークなタイトルばかりなので、当選された方はこの機会にぜひ楽しんでもらいたい。

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これまでの10年、これからの10年

話は尽きず予定をややオーバーして、2時間半ほどのライブイベントとなったが、架け橋ゲームズのこれまでの歩みをより近くに感じられる内容で、ライブ放送のチャット欄にはプロジェクトマネージャーの渡辺裕美氏の姿や、関わりのある翻訳者、そして多くのファンが集い盛況なひと時だった。

締めくくりとしてイベント後に投稿されたツイートを掲載するが、座談会でも矢澤氏から語られたように、10年後と言わず、さらにその先の活躍にも大いに期待したい。

基本情報 架け橋ゲームズ
公式サイト kakehashigames.com
公式X(旧Twitter) @kakehashigames
Indie Freaks

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