死と隣り合わせの迷宮を手書きマッピングしながら探索『Demon Lord Reincarnation』


Masa Kei
Masa Kei

2023.07.22

Demon Lord Reincarnation』は、一見すると『ウィザードリィ』ライクなダンジョン探索RPG。しかし、死んだ仲間を復活させることができない代わりに、新しいメンバーを加えながらパーティーを存続させていきやすいゲームにうまくアレンジされた一作だ。

2023年9月4日 追記

リリース時には英語にしか対応していなかったが、2023年9月4日のアップデートで日本語が追加された。

起動時の注意書きには「このゲームをちゃんと楽しむには説明書を読む必要があります」と表示される。Steamストアページ右下にあるメニュー「マニュアルを見る」から確認しよう。マニュアルもしっかり日本語翻訳されている。

この記事では、従来のダンジョンRPGとの違いを中心に、基本的なゲームシステムの解説を中心に紹介していきたい。

▲4人パーティー、伝統的なターン制バトル

地上はメンバー補充の場

なんと、本作は大胆にもキャラクターメイキングや装備品収集の要素をカットしている。まず、スタート地点のたき火に立ち寄ると、名前のついたさまざまな職業のキャラクターが現れ、パーティーに加入させることができる。

▲20種類以上のキャラから仲間を選べる

お金やアイテムの概念はなく、店も存在しない。死者を復活させる寺院もない。地上に戻ってできることは、パーティーメンバーの補充と、敵に襲われることなく休憩して回復できるという2つだけだ。

▲仲間が死亡したら、たき火に戻って欠員を補充しよう

罠を解除して宝箱を開ける要素はあるのだが、戦利品を手に入れる描写とともに能力値が上がる効果となっていて、アイテムがストックされるわけではない。

▲アイテムはその場でキャラの強化に使われる

迷宮内で休憩しつつ探索に没頭しよう!

本作には宿屋も存在しないが、どこでも休憩することが可能で、HPやスキルポイント(SP)を回復できる。ただし、開けた場所で休憩すると敵から襲撃される確率が高くなるため、できれば三方が壁や扉に囲まれた場所を探したほうがよい。

地上に店も宿屋もないということは、所持品の整理や回復のために戻ってこなくてもいい。パーティーメンバーを補充する必要がない限りは、ずっとダンジョンを探索し続けられるわけだ。休憩を取りつつ、仲間を死亡させないように気を付けて、ひたすらダンジョンに潜っていこう。

友好的な相手に遭遇したときは、パーティーに加えることもできる。実際に筆者も体験したのだが、ダンジョンに深く潜ったときに退路を断たれ、帰り道を探してさまよっているうちに仲間を一人失った。ちょうどそのとき、壊滅したパーティーの生存者とばったり出会ってメンバーを補充することができた。

このように、仲間を失う要素があるからこそ、そこから立て直すまでが踏ん張りどころで、用意された筋書きのないドラマが体験できるのである。

▲初めて下の階へ。勇気が試される

能力値とスキルを成長させよう!

本作はレベル制ではなく、経験値の概念がない。代わりに、戦闘に勝利すると能力値がアップする。成長速度は倒した敵の強さと数によって決まるようだ。

また、戦闘中に新しいスキルを閃いて習得することがある。『ロマンシング サガ2』の「閃き」システムを思わせる仕様だ。各スキルは繰り返し使用しているとランクが上がって効果が増す。

▲育てたスキル名の後に I 、 II 、 IIIのランクがつく

マニュアルによれば、たき火でパーティーに加えた新しいメンバーの能力値とスキル成長は、残りの仲間におおよそ一致するように調整されるという。戦闘で犠牲者が出やすい分、あとから加入したメンバーでも十分に戦えるように配慮されているのだ。

たとえパーティーが全滅してもゲームオーバーにはならない。たき火から再開して新しいパーティーを編成すれば、前のパーティーに近い能力値のメンバーが集まるため、弱いパーティーを育て直す必要はない。ただし、スキルの習得と成長を引き継ぐわけではないので、やはり全滅は避けたいところだ。

マッピングは手書きで!

オートマッピング機能がなかった頃のダンジョン探索RPGでは、方眼紙などにマップを書いて攻略することがよくあった。ユーザーは自分だけの攻略本を作って楽しんでいたのだ。

本作では当時のスタイルそのままに、オートマッピングは採用せず、手書きでのマップ作成を推奨している。各階のマップは20×20マス。フィールドメニューの「チェック」コマンドで現在位置の座標と向きをいつでも確認できるので、マップを書きながらダンジョンを歩き回ろう。

ちなみに筆者はファミコン世代で、『ウィザードリィ』シリーズのシナリオ#3にあたる「リルガミンの遺産」ファミコン版のマップを完成させたことがある。少年の頃の冒険の思い出だ。のちにニンテンドーDSで『世界樹の迷宮』が発売されたときはタッチパネルでマップが書けると聞いて購入を決めた。

マッピングに思い入れのある方には本作をぜひおすすめしたい。一方、マッピングをしたことがない方には少しおすすめしづらいが、マップを隅々まで埋めて完成させることが目的になってしまうくらい、当時のゲーマーは夢中になった。その面白さは今からでも味わえるはずだ。

クリア後は魔王のパーティーに!?

ストアページによると、最終ボスである魔王Leinadを倒した後もゲームは継続し、今度は魔王の視点に切り替わり、魔法陣で召喚したモンスターに命令して、ダンジョンを脱出するために地上へ向かうことになるという。

この趣向は『ウィザードリィ』ファンならシナリオ#4「ワードナの逆襲」のオマージュだと気づくだろう。ワードナ(Werdna)は開発者の名前Andrewの逆さ読みだというネタはファンの間で有名だが、本作の魔王Leinadも逆さ読みするとDanielという一般的な人名になる。

▲魔王のパーティーが冒険者たちと戦う!

こうしたオマージュのあるダンジョン探索RPGの新作がリリースされることは、ファンとして純粋に嬉しい。大胆にゲームシステムを変える試みにも納得がいき、成功しているように感じる。

開発元のGraverobber Foundationは『ハイドライド』に影響を受けたとみられる『Ringlorn Saga』もリリースしている。今後もレトロゲーム愛にあふれるタイトルが期待できそうだ。

基本情報
開発 Graverobber Foundation
販売 Graverobber Foundation
配信日 2023年7月19日 / 日本語有り
定価 1,000円(Steam
Indie Freaks

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