約2年越しの日本語サポート! スラヴ神話をモチーフとしたカードRPGアドベンチャー『Black Book』


朝比奈 / Asahina

Black Book』は、亡き婚約者の魂の救済を求める若き魔女の姿を描いた、スラヴ神話をモチーフとするデッキ構築型カードバトル要素のあるアドベンチャーRPGだ。

本作は、ロシアのペルミを拠点とする開発スタジオ"Morteshka"が、2020年にKickstarter(クラウドファンディング)にて開発資金調達を目的とするプロジェクトを成功させ、複数のプラットフォームにて2021年8月11日にリリースされたタイトルだ。しかし、当初サポートが予定されていた日本語を含む6言語が各ストアの表記から削除され、英語・ロシア語・中国語(簡体字)のみでのリリースとなっていた。

それから、約2年間にわたって他言語サポートに関する動向は不明なままとなっていたが、この度2023年8月18日のアップデートにて、ついに日本語がサポートされた形だ。

魂の救済を求めて魔女は動き出す

本作のストーリーは、自ら命を絶ったことで地獄へと行くことになってしまった婚約者の魂を救済するため、封じられた「黒の書」の力を利用して事を成し遂げようとする、若き魔女ヴァシリーサの姿を描いたものだ。

黒の書はどのような願いでも叶える。だが、その力を奮うには7つの封印を解かねばならないとされており、彼女はそのために魔女となった。孤児だった彼女の育ての親であり、魔術の師でもあるエゴール老の助けを借りながら、各地に隠された封印を探し求めていく。

▲さまざまな訪問者たちが悩みを抱えて訪れる。

本作はチャプター制となっており、ストーリー進行に伴って目的を達成すると次のチャプターへと移る。基本的な流れとしては、自宅にて魔女としての仕事をこなし、厄介事を解決するためにマップに出て現場へと赴くという形だ。封印の所在は最初は明らかにはなっていないため、その過程で探っていくことになる。

作中の19世紀のロシアのペルミ地方では、魔女や魔物が現実に息づいていて、それが疑うことなく信じられているという世界観だ。主人公は魔女として近隣の村人たちから敬われる立場であり、彼らはなにか厄介事があれば、助言や解決策を求めて訪ねてくるので、それを解決に導くことが重要な仕事というわけだ。

▲寄り道をすることでさらに報酬が得られることも。

マップに出ると目的地が示されるが、そこにたどり着くまでには、ルート上にある村や森といったポイントに必ず立ち寄らなければならない。そこでは選択肢によって展開が変化するイベントが発生し、魔物と戦闘になったり、経験値などの報酬を得られたりと、ゲームブック風な演出が楽しめるだろう。

必ずしも満足のいく結果になるとは限らず、いっそ何もしないというアクションを取ることもできるが、RPGとしての成長要素も重要なので、ここでは積極的に選択を行っていきたいところだ。

▲テキストだけで展開されるイベントはとてもゲームブック風。

魔術をカードに置き換えたバトル

戦闘は、ターン制のカードバトル形式。黒の書が「デッキ」として機能し、そこに綴じられたページを「カード」として扱うという構図だ。

カードバトルと言ってもさまざまなスタイルがあるが、本作では主人公側だけがカードを用いて戦う。デッキからランダムに選び出されたカードから手札を選び、それによって攻撃と防御を行うというものだ。

▲魔物が次に行うアクションは頭上のアイコンで判断できる。

カードは「」と「」という特性の異なる2種類があり、カードの数値がそのままダメージや防御力になったり、その性能をブーストしたりするなど効果はさまざまだ。カードは自作したり、戦闘やイベントの報酬として増やしたりすることも可能だ。

初期状態ではデッキから選び出されるのは6枚まで、手札に出せるのは3枚までと限られているが、主人公が成長して黒の書の性能を引き上げるスキルを習得することにより、その上限も引き上げられていく。

敵の行動を予測して手札に出すカードを考えるといった戦略性が重要だが、難易度も4段階まで設定することができるので、ストーリー中心に本作を楽しみたいという方も安心してプレイすることが可能だ。

約2年越しの日本語サポート

記事冒頭で触れたとおり、本作はリリースの3ヶ月前に日本語を含む6言語のサポート表記が削除され、英語・ロシア語・中国語(簡体字)のみでリリースされていた。他言語サポートは、Kickstarterで開発資金を募る際に予定されていた実装項目でもあったため、特に支援者にとっては悩ましい事態となっていたわけだ。

この出来事については、2021年当時に開発チームより「テキスト量と翻訳コストが見合わないため、サポートする言語を絞った。リリース後に状況を見て検討する。」との経緯を伺っている。

それが今回、約2年越しの日本語サポート実現となった形だ。翻訳はチーム体制とのことで、ゲーム中のクレジット掲載順に、英日ゲーム翻訳者のIori Honda氏、山村眸(あなたま)氏、Rie Ihara氏、舟橋大(くらむ)氏、Slack氏という実績ある方々が名を連ねている。

現在、開発側のミスによりSlack氏がゲーム中のクレジットに掲載されていない状態とのこと。

本作は、モチーフとなっている神話・宗教・民間伝承などと深く関わる内容となっており、ゲームシステムとしてもそうしたロアー(世界設定や背景など)を補完する用語集が用意されている。テキスト量も豊富で、これを原文を損ねることなく翻訳されているのは見事だ。

ただし、本作には特徴的な「固有名詞」が多く登場し、それらは日本語翻訳においても原文ままに片仮名表記されている。こうした題材を取り扱う作品や、同様のゲームシステムに馴染みのあるプレイヤーであれば、それほど違和感なく頭の中で使い慣れた単語に置き換えることができると思うが、戸惑ってしまう方もいることだろう。

だが、それも世界観と深く結びついたものであるが故だろう。筆者としても、こちらの方が雰囲気が守られていると感じるところだ。

なお、今回日本語が実装されたのは(まだストア上に掲載されていないが)Epic Games Store版のみとなり、Steam版は近日中に実装予定とのこと。それ以外のプラットフォームについては言及されていないため、今後実装されるかは不明だ。

この機会にプレイ/購入を検討される方は注意していただきたい。

Update: 2023.08.22

Steam版においても、2023年8月22日のアップデートにて日本語が実装された。翌日には正式にアナウンスも行われている。


基本情報 Black Book
開発 Morteshka
販売 HypeTrain Digital
配信日 2021年8月11日
2023年8月18日 / 日本語サポート(Epic Games)
2023年8月22日 / 日本語サポート(Steam)
定価 2,800円(Steam
2,800円(Epic Games Store
Indie Freaks

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