秘宝を求めて呪われたカリブ海へ漕ぎ出せ『Shadow Gambit: カリブの呪い』プレイレポート


朝比奈 / Asahina

Shadow Gambit: カリブの呪い』は、16世紀~19世紀初頭にかけて活躍した「カリブ海の海賊」をモチーフに、別世界の海賊の黄金時代を舞台とする戦略性とステルス要素を重視したストラテジーゲームだ。

本作を手掛ける開発スタジオ"Mimimi Games"では、2016年にSteamでリリースされた17世紀の日本を舞台とする『Shadow Tactics: Blades of the Shogun』にてケタ違いの圧倒的好評を得て以来、同様のゲームシステムを採用した西武開拓時代を舞台とする『Desperados III』、1作目のスピンオフ作品である『Shadow Tactics: Aiko's Choice』を制作している。

そして、4作目となる今作ではカリブ海を新たな舞台として設定し、多くの期待と注目を受けながらリリースされたというわけだ。本記事では、この海賊たちによる新たな物語の魅力をお届けしよう。

伝説の海賊の秘宝を求めて

本作のストーリーは、伝説の海賊「黒目のモルデカイ」が残したという謎めいた宝をめぐる冒険活劇だ。

主人公の女海賊アフィアは、ある時、かつてモルデカイの乗船だった魂を持つ海賊船レッド・マーリー号を敵の手から救い出すことになり、船の魂と取り引きを交わして航海士として乗り込むことになる。

アフィアと仲間の海賊たちは、皆「呪われ人」と呼ばれる生ける屍(アンデッド)であり、そんな呪われた存在すべてを異端として断罪しようとする組織「審問会」を相手にしながら、秘宝を求めてカリブ海に漕ぎ出していくというわけだ。

▲ストーリー進行に伴って呪われた海賊たちが仲間に加わっていく。

本作のモチーフとなっている「カリブ海の海賊」は、国内外において漫画やアニメ、映画、ゲームなど、さまざまな媒体で取り上げられていることはご存知の通りだ。そうした、フィクションの中の海賊たちは個性的で、豪胆かつユーモアを持った存在として描かれていることが多い。史実とは違う海賊像かもしれないが、そこにはエンターテインメント性があるからだ。

つまりは、プレイしていて好感が持てるやつらであり、彼ら自身がストーリーでもあるのだ。Mimimi Gamesが『Shadow Gambit: カリブの呪い』で描く「こういう海賊たち好きでしょ」という姿勢は、プレイヤーの期待にしっかり応えてくれていて魅力的なものだ。

常に身を隠して立ち回れ

本作のゲームシステムは、Mimimi Gamesによる過去の作品から一貫して「ステルスストラテジー」と名付けられている。

これは、従来のリアルタイムタクティクスコマンドスライクにあたるもので、俯瞰視点で見渡せるマップ内を複数のユニットをリアルタイムに切り替えながら立ち回り、敵から隠れて暗殺したり、仲間やNPCを助け出したり、脱出地点まで移動したりするものだ。

大前提としてステルス要素が必須で、敵に発見されれば極めて不利な状況に陥り、ときには即座に失敗扱いとなってしまうことさえある。敵の視覚や聴覚の感知範囲、行動パターンをじっくりと観察して、慎重に駒を進めていく必要があるため、忍耐強くプレイできる方に好まれるゲームシステムだろう。

▲敵の感知範囲をよく観察して戦略を立てよう

今作では、秘宝を追うメインクエストや、仲間の海賊たちのパーソナルなストーリーに迫るサブクエストなどに沿って、海賊船レッド・マーリー号を拠点にワールドマップから攻略すべきステージへと乗り込んでいく。

個性的な能力を持った8名の仲間から最大3名のユニットを出撃させるのだが、それぞれに得意分野があり、また、うまく連携することで強力な相乗効果を発揮するシーンもあるなど、その組み合わせを考えて編成することも楽しい部分だ。

攻略対象のマップは草木の生い茂るジャングルや、海に囲まれた島、砦や遺跡などロケーションはさまざま。高低差があり、自然の地形やマップ上に置かれたオブジェクトを利用したギミックやトラップも存在するなど、豊富をバリエーションな用意されていて、一筋縄ではいかない。

何度でもその瞬間をやり直せる

先に触れたとおり、ステルスが原則であるため、初見ではなかなか思い通りに事を運ぶことができないだろう。だが、本作ではトライアルアンドエラーがシステムの一部として組み込まれていて、何度でも繰り返し、納得がいくまでそのシーンに繰り返し挑むことができる。

具体的には、任意の瞬間をチェックポイントのように記録しておくことで、何度でもその瞬間に時間を巻き戻すことができるというものだ。そう聞くとヌルいシステムだと感じるかもしれないが、そのシチュエーションの難易度そのものが変わるわけではなく、また、ミッションを丸ごとリトライするよりもはるかにストレスがない(もちろん、使わないという選択も有り)。

▲戻る記憶は一覧から選択できるが、ワンボタンで直前の記憶をクイック選択も可能。

なにより、試行錯誤したアクションが完璧にマッチして、そのシーンを突破した際の快感は何物にも代えがたいのだが、これは、実際にプレイして体験しなければ伝わりづらい感動かもしれない。

なお、作中では「記憶の捕獲と解放」と呼ばれていて、レッド・マーリー号に記憶を預かってもらい、求めに応じてその瞬間まで戻ることができるという体裁を取っている。見方を変えれば、アフィアたちを永遠の円環の中に閉じ込める呪いのようですらあるが……。詳細は伏せるが、実際にストーリー展開にも関わってくるので、ただのシステムの都合というだけで存在しているものではないようだ。

期待を裏切らない洗練されたゲームシステム

長年にわたり「ステルスストラテジー」というスタイルを貫いてきただけあって、細かな変化はあるが、根幹となるゲームシステムはすでに完成の域に達していると言っていい。

ゲームプレイヤーとは、まだ見ぬ体験を求める一方で、すでに確立されたゲームシステムのままに新たな舞台やストーリーを楽しみたいという安定志向も持っていると思われる。本作はその後者の欲求を存分に満たすもので、既存のプレイヤーにとっては慣れ親しんだ環境で楽しむことができ、今作からのプレイヤーにとっては定評のある一種の約束されたゲーム体験を得られる作品だ。

ぜひ、この呪われたカリブ海に漕ぎ出してみてはいかがだろうか。

Update: 2023.09.01

2023年8月29日、Mimimi Gamesより『Shadow Gambit: カリブの呪い』が同スタジオとして最後のゲームとなり、今後「スタジオを閉鎖する意向」であることがアナウンスされた。

具体的な閉鎖時期は示されていないが、年末に予定されている『Shadow Gambit: カリブの呪い』の大規模な追加コンテンツの開発/実装、サポートは継続していくとしている。また、これまで手掛けた既存タイトルの販売も継続していくとのことなので、現ユーザーへの影響は実質的に無いと考えていいだろう。

この決断に至った経緯と思いは、アナウンスの内容を直接読んでいただければと思うが、実力あるスタジオの閉鎖は残念なニュースだ。だが、彼らが確立した「ステルスストラテジー」という灯火は今後も残り続けるに違いない。


基本情報 Shadow Gambit: カリブの呪い
開発 Mimimi Games
販売 Mimimi Games
配信日 2023年8月18日 / 日本語有り
定価 5,500円(Steam
5,489円(PlayStation 5
5,500円(Xbox Series X/S
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