ジュール・ヴェルヌと共に冒険の旅に出よう『Verne: The Shape of Fantasy』


朝比奈 / Asahina

Verne: The Shape of Fantasy』は、フランスのSF作家ジュール・ヴェルヌの生み出した作品とその世界観をベースとした、ストーリー主導のSF海洋冒険アドベンチャーだ。

本作の舞台となるのは、地球とよく似ているが違う歴史を歩む異世界ヘメラ。世界各国は覇権国家ネーションによって侵略され、統一されようとしていた。主人公ヴェルヌは、潜水艦ノーチラス号を駆るネモ船長たちレジスタンスの一員として、世界を救う切り札である古代アトランティスの叡智を求めて冒険の旅に出る。

本記事では、この神秘的なSF冒険譚の魅力についてお届けしよう。

ジュール・ヴェルヌの世界を冒険しよう

冒頭で触れたとおり、本作はSF作家ジュール・ヴェルヌの作品とその世界観をベースとしていて、特に『海底二万里』および『神秘の島』から多大なインスピレーションを受けているようだが、主人公はアロナックス教授ではなくヴェルヌ自身だ。ただし、作家本人ではなく、この世界における科学者という立場で登場する。彼は彼自身も思いもよらない重要な秘密と役割を持つのだが、ここでは伏せさせてもらう。

スティーヴン・キングの『ダークタワー』シリーズのように、架空世界を舞台とする作品内に作家が本人役として登場するケースはあるが、こうして主人公として活躍するというのは面白い発想だ。

本作はチャプター制となっていて、舞台となるマップもストーリーに沿ってリニアに移り変わっていく。潜水艦ノーチラス号の船内、その秘密のドックがある神秘の島、アトランティス文明の謎が眠る無人島や海底遺跡などさまざまだ。

マップ内を探索し、発見したアイテムでギミックを動かしたり、パズルを解いたりしながら先へと進み、そのチャプターにおける目的を達成すればクリアとなる。敵から身を隠して移動するイベントもあるが、あくまで観察と発見、謎解き、そして奥深いストーリー展開に重きが置かれている印象だ。

▲十分な観察と閃きがパズルを解く。

また、重要なアイテムとして「IMAG」と呼ばれるアトランティスのアーティファクトがある。ネモ船長たちと出会う前に謎の孤島でヴェルヌが発見した現実改変装置であり、次元の亀裂がある場所で使用すると、そこで起きた出来事とは別の可能性を引き寄せられる。

崩壊した岩場や遺跡を崩れなかった状態にしたり、ある人物が死ぬ間際に固く握りしめたメモを手放した状態にしたりとさまざま。それには途方もない想像力を必要とし、ヴェルヌのような限られた人物だけが使用することができるというものだ。

それはマップ上のギミックを作動させるためのアイテムとしてだけではなく、ストーリー上においても重要な意味を持つこととなる。

ひしひしと伝わる制作陣のヴェルヌ愛

本作では、チャプター毎に設けられたサイドクエストや、マップ内に隠された収集物の発見によって、並行世界の謎や物語の背景により深く迫ることができる。加えて、作家ジュール・ヴェルヌの生涯と作品を紹介しつつ豆知識までもが披露されていて、本作を手掛けたGametopiaの溢れんばかりのヴェルヌ愛が伝わってくるかのようだ。

ヴェルヌの作品からは、古今東西においてさまざまな二次創作やオマージュ作品が生まれているが、本作も例に漏れず原作から大きく想像を膨らませたストーリーとアートスタイルで制作されている。SFとはそうした想像から始まる物語であり、その開祖の1人と呼ばれるヴェルヌへのリスペクトは時代を超えて続いていくように感じる。

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なお、本作の日本語翻訳は『Iratus: Lord of the Dead』や『Endzone - A World Apart』で知られる、英日/韓日ゲーム翻訳者のTobineta氏が手掛けている。この、魅力的な物語を表すそのクオリティにも一見の価値ありだ。

▲ドット絵で表現されたノーチラス号の船内は緻密で美しい。

物語はゲームの外にも広がる

基本的にゲーム内だけで完結するように制作されているが、本作において重要な意味を持つ古代アトランティスの顛末を描いたWebコミックが、公式サイトで公開されている。英語とスペイン語のみでの公開とはなるが、合わせて読むことでより本作を楽しめるはずだ。

興味があれば、こちらから覗いてみてほしい。


基本情報 Verne: The Shape of Fantasy
開発 Gametopia
販売 Assemble Entertainment
配信日 2023年8月14日 / 日本語有り
定価 1,700円(Steam
Indie Freaks

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