『ミスター・クーのいろいろ』は、クラシックなカートゥーン風のポイント・アンド・クリック式アドベンチャーゲーム。
体をバラバラにされてしまったミスター・クーの胴体を助けるために、彼の頭部と下半身を切り替えて操作し、さまざまな仕掛けを作動させて謎を解いていく。順序やタイミングを工夫して、いろいろ試してみよう。
本作は言語による表現をほとんど用いず、映像と音だけで表現されている。
本作は、からくり装置を動かしてみる楽しさや、びっくり箱を開けたときのような驚きにあふれていて、アートとゲームプレイがうまくマッチしていると感じた。
アニメーションを眺めるのがとにかく楽しく、ミスター・クーが滑らかによく動き、喜劇役者のようなオーバーで表現豊かなリアクションをしてくれる。海外アニメーションのファンなら、トレイラーを見ただけで即買いしてしまいそうだ。
この記事では、ネタバレを控えつつ、キャラクターやストーリーについてもご紹介したい。
奇妙でかわいいキャラ、荒涼とした世界
一目見て、本作の奇妙で独特なアートスタイルに惹かれた人も多いだろう。
キービジュアルに描かれているのは、黒い背景に古びたガラクタが並んだ静物画のような場面。ゲームでは中盤以降にあたる。バラバラにされた後、連れて来られた不気味な場所だ。
ホラーが苦手な方もプレイできるかどうかは、人によって感じ方が違うため何とも言えないが、「ピエロのお面や人形が置いてあるだけで怖い!」という方にとってはやや恐怖を感じそうなシーンもある。巨大な甲殻類の足のような怪物に襲われるシーンは筆者も少し肝を冷やした。
脇役としてたびたび登場するのは、単眼双頭のキャラや、ヤギの角と足を持つファウヌスなどだ。
いったい何者なのかよく分からなかったとしても、『不思議の国のアリス』のように、奇妙なキャラクターばかり出てくるナンセンス文学的なものとして受け入れられるだろう。キモかわいい(?)キャラがいっぱいだ。
深い意味を読み取れそうなストーリー
ミスター・クーは見つけたリンゴを食べようとして追いかけるうちに、いろいろあって体がバラバラになってしまい、檻に囚われた胴体や下半身を解放して再び元の自分を取り戻そうとする。
序盤でミスター・クーは卵の殻に閉じ込められ、ヒヨコと一緒に外の世界に放たれる。この物語の象徴的な意味を読み取るなら、「外の世界に生まれ落ちて困難にぶつかり、やがて自己を確立する」という人生の過程と重ね合わせて解釈することもできそうだ。
ストアページに「自分探しの旅」と書いてあるのは、文字通り自分の体を探しに行くという意味にもなっているようだが、自分の生き方や居場所を探すという意味もあるのかもしれない。
もちろん、ただのドタバタ・コメディとして力を抜いて鑑賞しても全然かまわないように思う。深い意味が隠されているのかもしれないが、基本的には絵本やキッズアニメのように無邪気に楽しめる内容だ。
詰まったときはヒントの図解を見よう!
「Hints」と書かれた本をクリックすると、謎解きのヒントを見ることができる。ヒントは文章ではなくイラストで表現され、順番が鍵となる場合は番号が振ってある。
その後の展開のネタバレになってしまうので、詰まったときにひとつずつ見るのがオススメだ。
たいていのプレイヤーは2~3時間でエンディングまで到達できるだろう。詰まったらヒントをすぐ見てスムーズに進めていけば、2時間かからずにクリアできてしまうかもしれない。
短編アニメーション作品と考えると十分なボリュームだと思うが、アドベンチャーゲームとしてはやや短く感じた。気になっている方は参考にしてほしい。
リトライはチェックポイントから
ヒントの本を見るには、特定の場所に戻って本をクリックしなければならないこともある。閉じ込められてその場所に戻れずヒントを見れなくなる場面もあった。
この状況で詰まったら、セーブされた時点に戻って本のところに行けばいいのだが、各シーンの最初にあるチェックポイントからリトライすることになるので、できれば改善して欲しいポイントだ。
リリース時のバージョンではバグによって進行不能になることもあったようだが、発売翌日には修正とアップデートを配信したことがSteamで告知されている。
バグの修正に関しては、アップデートが早いと思われるSteam版がオススメだが、近いうちに他のプラットフォームも新しいバージョンに更新されていくはずだろう。
基本情報 | |
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開発 | Gammera Nest |
販売 | Meridiem Games, Astrolabe Games |
配信日 | 2023年9月7日 / 日本語有り |
定価 | 1,520円(Steam) |
2,160円(Nintendo Switch) | |
2,970円(PlayStation) | |
2,350円(Xbox) |