2023年9月21日~9月24日に千葉県の幕張メッセにて開催されている「東京ゲームショウ 2023(以下、TGS2023)」に出展された、国内外のインディーゲームのパブリッシング、および、パブリッシングサポートを担う「架け橋ゲームズ」のブースレポートをお届けしよう。
TGS2023では、同社が販売/サポートする14タイトルが出展された。
※リンク先はいずれもSteamストアページ
- Sagres
- SONOKUNI
- Dicefolk
- Kamaeru: A Frog Refuge
- Baladins
- Headbangers: Rhythm Royale
- Moving Out 2(ムービングアウト 2)
- ブラスフェマス 2
- Wargroove 2
- Gunbrella
- スナフキン:ムーミン谷のメロディ
- Sea of Stars
- Vikings on Trampolines
- Savant - Ascent REMIX
同社がサポートする『Sea of Stars』は、コナミデジタルエンタテインメントブースでの出展。『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』、『Vikings on Trampolines』、『Savant - Ascent REMIX』は、Norwegian Gamesブースでの出展となる。

2023年7月に開催された「BitSummit Let’s Go!!」にて発表された、同社として初のパブリッシングタイトルとなる『Sagres』と『SONOKUNI』も含めて、いずれも注目されている方は多いことだろう。
どれも魅力的なタイトルばかりで目移りしてしまうが、今回、筆者が注目する出展タイトルは『Baladins』だ。
Baladins
『Baladins』は、フランスを拠点とするインディーゲーム開発スタジオ"Seed by Seed"が手掛ける、1セッション1時間ほどで手軽に遊べる1~4人用ロールプレイング・アドベンチャーゲームだ。
本作は、2022年5月にクラウドファンディングサイト「Kickstarter」にて開発資金調達を目的とするプロジェクトを開始。そこから、約1ヶ月間にわたるキャンペーンにて当初目標としていた€18,000を大幅に上回る€52,872(現在の為替レートで約830万円)を獲得し、2024年のリリースに向けて開発中のタイトルだ。

実は、筆者も支援者(バッカー)なのだが、しばらく開発チームからの進捗報告が無く、正直に言えば少し心配していたところであった。
だが、この度TGS2023にて、架け橋ゲームズのサポートタイトルであることが初公開された。もちろん"日本語サポート対応"となり、クラウドファンディング開催時にはその情報はアナウンスがなかったため、非常に嬉しいサプライズというわけだ。
そして今回、いち早く日本語が実装された体験版を試遊することができた。

プレイヤーは、本作のタイトルにもなっている「バラディン」と呼ばれる旅芸人の一座として、ドラゴンを楽しませるという大仕事に巻き込まれる。しかし、ドラゴンはなかなか満足してくれない。失敗する度に、何度でも過去へと送り返されてしまうのだ。
果たして、タイムループを繰り返しながら、彼らはこの大仕事を達成することができるのだろうか……!というのが本作の中心となるストーリーだ。

テーブルトークRPG(TRPG)や、ボードゲームにインスパイアされたという本作。プレイヤーは個性的なスキルを持った4人のペーパークラフト風のキャラクターから1人を選んで、冒険に出ることになる。最大4人までのオンライン協力プレイに対応しており、1人でも、友達や家族と一緒にも楽しめる。
基本的なゲームシステムとしては、ボクセルアートで描かれたボードゲーム的なマップにあるマスを進んでいき、そこで発生するイベントに挑む。街の住人と会話をしたり、酒場で食事をしたり、崩れたトンネルの岩をどけたりとさまざまなイベントが待っているが、スキルによって選択肢や結果は変化していく。もちろん、プレイヤー自身の好みや考え方も重要になるだろう。
つまり、それぞれのイベントが小さなストーリーを持っていて、そのすべての決断が世界に影響を与える可能性があるのだ。

イベントにて何らかのアクションを起こすとAPを消費し、マスを移動するとMPが消費されるのだが、それを使い果たすとターンエンド(任意でも可能)。1ターンが1週間となっていて、7週間が経過するとドラゴンが登場し、ひとつの結末を迎えることになる。そして、引き起こされたタイムループにより、また新たな物語を紡いでいくわけだ。
じっくりとイベントを楽しんでも、1セッションは1時間程度。パーティプレイ向きな印象はあるものの、1人でも十分にロールプレイングを楽しむことができた。
会場に足を運ばれる方は、この可愛らしいキャラクターが活躍するセッションをぜひ体験していただきたい。なお、現在Steamでも体験版をプレイすることが可能だが、そちらには日本語が実装されていないのでご注意を。

翻訳者インタビュー
本作の日本語翻訳を手掛けるのは、英日ゲーム翻訳者のChisato氏だ。架け橋ゲームズとは別のブースにいらっしゃったが、今作の翻訳について興味深いお話を伺えたのでご紹介しよう。
【質問】本作を手掛けることになったきっかけは?
架け橋ゲームズから翻訳のお話を頂いたときに、実はゲームの中身を把握するよりも先に、このキュートなキャラクターに惹かれて手を上げたというのがきっかけです。
キツネのプレイアブルキャラクターがいるのですが、彼はナルト走り(漫画『NARUTO -ナルト-』のキャラクターが見せる独特の走り方)をするんですよ。可愛いですよね!
【質問】こだわりのポイントなどはありますか?
イベントが発生した際、質問に対する答えの選択肢の個数が異なり、その個数によって一行あたりの表示文字数も異なります。LQA(言語に関する品質保証)を実施した際に、どの選択肢もきっちりと意味上の区切りとなる箇所で改行されるよう、見栄えの良さにもこだわりました。
町(ロケーションポイント)でのアクション、修練、チャレンジも同様に改行位置にこだわっています。
なお、テキストが複数行となった場合に、選択肢上部に表示されるアイコンがズレてしまうという問題があるのですが、開発チームとしても問題は認識していて、改善したいとのことでした。
筆者注:普段ゲームをプレイしていて、「このテキストの改行位置なんだか読みにくいな」と感じた経験がある方も少なくないだろう。こうした違和感を極力なくそうという気配りというのは、一見地味に思えるかもしれないが、ゲームのプレイ体験を確実に向上させてくれるのでとてもありがたい。

【質問】翻訳にあたり注意された点はありますか?
この作品は「テーブルトークRPG(TRPG)」にインスパイアされていますが、TRPGの文章は現在進行系であることが一般的です。
本作においてもその点は意識していて、これから何かが起きそうだと期待できるように現在進行系を基本としています。ただし、結果が出ているもの(例:金貨が増えた)については過去形となります。
【質問】特に印象深かったことはありますか?
開発チームが非常に協力的ということですね。
例えば、原文の英語では、何かが上向く際には共通して「プラス(Plus)」という表現が出てきます。しかし、金貨ならば「増える」、ステータスは「上がる」と表現を分けた方が日本語としては自然というフィードバックを上げたのですが、それを汲んでゲーム内に(いつの間にか)実装してくれました。
また、作中にルディンという種族の「バンガス」というキャラクターが登場するのですが、妖精で性別がニュートラルとなっています。日本語での一人称を考える際に、漫画『メイドインアビス』のナナチという、性別が明言されていないキャラクターが使っている「おいら」ではどうかと提案したところ、すんなり通りました。
翻訳者にとって、とてもやりやすい環境を提供してくれる素敵な開発チームです。
【質問】本作をプレイされる方に向けてぜひメッセージを!
もともと、グループSNEなどのリプレイ(実際にTRPGなどをプレイした記録を小説風に書き下ろしたもの)が好きなのですが、実際にTRPGをプレイするには1人でというわけにはいきません。しかし、ゲームであれば1人からでもプレイすることができます。
そして、家族や友人はもちろん、ゲーム実況をされている方などが集まって、4人でプレイするとさらに楽しいものになるはずです。『Baladins』が、TRPGに触れてもらうきっかけとなってくれればと思います。

基本情報 | Baladins |
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開発 | Seed by Seed |
販売 | Armor Games Studios |
配信日 | 2024年予定 / 日本語有り |
定価 | 未定(Steam) |
基本情報 | 架け橋ゲームズ |
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公式サイト | kakehashigames.com |
公式X(旧Twitter) | @kakehashigames |