事件にまつわる情報量の海に溺れる、本格派の推理調査ゲーム『Scene Investigators』


朝比奈 / Asahina

Scene Investigators』は、インベスティゲーター(犯罪捜査官)の訓練生として、再現された事件現場の真相に迫ろうとする推理調査ゲームだ。アメリカのネバダ州ラスベガスを拠点とする、インディーゲーム開発スタジオ"EQ Studios"が開発を手掛けている。

同スタジオは以前に、ペインスクリークという田舎町で起きた未解決殺人事件を捜査する『The Painscreek Killings』をリリースしている。同作では、ほとんど一切のヒントが示されないままに、事件解決の糸口となる証拠の発見と推理をもって挑む本格推理アドベンチャーとなっていた。

同じ趣きを感じる新作タイトルとして2019年に発表された本作は、数度のリリース延期の報でファンをヤキモキさせていたものの、この度ついに2023年10月24日にリリースされた形だ。

正直なところ何を書いてもネタバレとなる恐れがあるため、本記事ではその点には十分に配慮した形でプレイレポートをお届けしよう。

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Scene Investigators is a deductive reasoning game for fans of the "true crime" genre. Step into re-created crime scenes, observe closely for pieces of evidence, analyze possible motives behind the crimes, and uncover what truly happened.

チュートリアルから試される観察と推理力

本作では、プレイヤーはインベスティゲーター(犯罪捜査官)の訓練生として架空の事件の捜査に挑む。実際の事件と同様に、現場に存在するあらゆるものを観察/捜索し、事件解決の糸口となる情報や痕跡を発見して、自らの推理によって答えを導き出さなければならない。

ただし、これはあくまで訓練生としてのテストだ。現場からは"特定の要素が意図的に排除あるいは省略されている"。これは、ゲーム側のミスやバグではなく、欠落した要素があっても捜査官であるプレイヤーが事件を解決できるかどうかを試すものなのだという。

ヒントも何も示されることはないが、「テスト問題」として「この答えを推理してください」という目的は用意されている。プレイヤーは推理によってそれを導き出せばクリアとなるわけだ。

余談だが、ゲーム内ツールとして「懐中電灯」、「カメラ」、「フォトアルバム」、「メモ帳」が用意されている。おかげでゲーム外でスクリーンショットを撮ったり、メモアプリを立ち上げる必要がないわけだ。情報量が膨大なゲームとなっているので有効活用するといいだろう。

まず最初に挑むチュートリアルでは、ある銀行強盗事件に関わる資料が置かれ、ホワイトボードには地図上で起きた出来事が何枚かの付箋で示されている。容疑者は、1人の女性の財布ひったくり事件にも関わっているようだ。

そこにあるのは情報の羅列であって、問題の回答が直接書かれているわけではない。はっきりと誰がどういった役割を担っていたか表示されているわけでもなく、複数の資料を見比べ、登場人物の相関関係を推測しなければならない。

▲インタラクトすることでさらに情報が細かく表示される。溺れそうだ。

3人の容疑者の中で誰がどの役割に収まるのか。そもそも、なぜ彼女の財布を狙う必要があったのかと思考がゆれそうになるが、問われていることはそこではないのだと思い直す。とは言え、全体像を掴まなければ答えに辿り着けそうにないのはさすがの作り込みだ。

先に触れたように、意図的に情報が伏せられている部分があるので、確信に至らないまでも「自分の中で腑に落ちる」結論を導き出せたならば――思い切ってテスト問題に回答しよう。

その結論は何であったにせよ、チュートリアルを突破したプレイヤーはいよいよ試験の本番に挑むことになる。

ついに本気を出してくるテスト本番

本番では複数のシナリオを内包する3つの事件ファイルと、まだ選択できない伏せられた事件ファイルが1つ用意されている。挑む順番は自由だが、すべて解決しなければ合格とはならない。

もしかしたら、チュートリアルを経て少し自信を持ったプレイヤーもいるかもしれないが、ここからが本番だ。ホワイトボードと机が1つだけだった空間は、複数の部屋で構成された丸ごと家一軒へと拡大される。

そこに散りばめられた資料は非常に多く、そして肝心のテスト問題は……たった2問で良かったチュートリアルとは比較にならない選択肢の多さだ。

観察するもの、調べるもの、重要なものとそうでないもの。何らかのアクションを取れたからと言って、それが必ずしも重要だとは限らないもの。逆に言えば、何でもないように見える些細なものが、やがて線と線で結びつくかもしれない。

ここで、まるで濁流のような情報量の多さに途方に暮れるか、逆にやる気をみなぎらせるかはプレイヤー次第だが、十分な時間を確保して観察と推理に挑んでみてほしい。1人で解いてもいいし、友人や家族と共に考えてみても面白いだろう。

あなたはテストを卒業して、一人前のインベスティゲーターになれるだろうか。今年中に卒業できるかあやしいが……筆者も頑張ってみようかと思う。


基本情報 Scene Investigators
開発 EQ Studios
販売 EQ Studios
配信日 2023年10月24日
定価 2,800円(Steam
Indie Freaks

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