現実を侵食する狂気に挑み、怪異に対する選択の行く末を見届けよう『恐怖の世界(WORLD OF HORROR)』


朝比奈 / Asahina

恐怖の世界(原題:WORLD OF HORROR)』は、ポーランドを拠点とするインディーゲーム開発スタジオ"panstasz"が手掛ける、旧き神が目覚め、狂気が渦巻く世界の真相に迫るコズミックホラーローグライトRPGだ。

2020年2月21日にSteamにて早期アクセスでリリースされてから約3年半。長年、日本語化が期待されていた本作が、この度、10月20日の正式リリースに併せてついに日本語がサポートされた。また、Nintendo Switch、PlayStation 4でも日本語版が10月19日にリリースされている。

本記事では、この待望のSteam版のプレイレポートをお届けしよう。

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Experience the quiet terror of this 1-bit love letter to Junji Ito and H.P. Lovecraft. Navigate a hellish roguelite reality with turn-based combat and unforgiving choices. Experiment with your deck of event cards to discover new forms of cosmic horror in every playthrough. The inevitable awaits...

現実に溢れ出すコズミックホラーの世界

本作では、ホラー漫画家"伊藤潤二"氏のアートワークと、ホラー作家の"H.P.ラヴクラフト"氏の「クトゥルフ神話」の世界観にインスパイアされた物語を体験していく。80年代の日本の小さな海辺の町「塩川町」を舞台に、至るところで発生する奇怪な存在と不可解な出来事の真実へと迫っていくのだ。

80年代当時の日本という昔懐かしく、今でも地方のどこかに残っていそうな風景の中をプレイヤーは探索を進めていくことになるが、ふとした瞬間に奇怪ななにかが目に映る。

出会う人、モノ、出来事。日常が侵食され、狂気に呑まれていく様はまさにクトゥルフ系のエッセンスを感じる部分だ。

▲PC-98を操作しているようなゲームプレイ画面はとてもユニーク。

狂気に挑み、世界の破滅を食い止めろ

プレイヤーは塩川町の奇怪な事件の真相へと挑む探索者として行動を開始する。いくつも発生している不可解な事件から任意の順番で調査を進め、その元凶を突き止めて撃破するのだ。

今回、筆者が最初に挑んだ謎は「月夜に連れ立つ船乗りの追弔」。1人の漁師が海で引き上げた"ナニか"をきっかけに、1人、また1人と漁師たちが海に姿を消していくというものだ。

プレイヤーは自宅を探索拠点に町の各所へと足を運び、聞き込みをしたり、古く荒れ果てた屋敷を探索したりする。そして、あらゆる場所でさまざまなイベントが発生し、選択と結果が発生する。それによって、有効なアイテムを入手や、調査が進むフラグが立つわけだ。

ゲームブックテーブルトークRPG(TRPG)を彷彿とさせるシステムで、あらかじめ結果が確定していない面白さがあり、さらに唐突さや理不尽さをも感じるのは狙ったものだろうか。

▲見るところは多いが、1bitスタイルのグラフィックは味があってとても良い。

ただ、運などのステータスを元にした行為判定(TRPGにおいてダイスロールでアクションの成否を決める判定)が行われることもあり、馴染みのない方にとってはややわかりにくさを感じるところかもしれない。

また、探索は気が済むまで続けることができるが、なにを行っても「破滅値」という数値が増えてしまい、100に到達すると強制的にゲームオーバーとなってしまうので注意も必要だ。

そうして、事件の真相に繋がるものを見つけ出した探索者は、ついに海辺で怪異の元凶と対峙することとなる。

戦闘は敵味方が交互に行動するターン制。アクションコマンドから、武器での攻撃や戦闘スキルをリソースの範囲内で組み立てて行動する。

例えば、数撃ちゃ当たるの精神でとにかく回数を重ねて殴っても良いし、一手損する代わりにスキルで命中率を引き上げてから殴ってもいい。いま最も有効な行動はなにかを考えて組み立てることが重要、というタイプの戦闘と言っていいだろう。

命中率のように多少運がからむ要素はあるが、通常の難易度であれば意外と力押しでなんとかなる場合もあるので、戦闘そのものはそう難しくはない印象だ。

やがて、見事に元凶を打ち倒せば、その事件は調査終了となる。

ただし、1つの事件に対して複数のエンディングが用意されていて、それは最終的な結末にも影響するようだ。果たして、自分が導き出した答えが如何なる結末へと繋がるのか……と言うのも見どころだろう。

ゲームの魅力を引き立たせる翻訳

本作のローカライズサポートはDragonbaby LLC、翻訳担当は英日ゲーム翻訳者の藤田優輝氏。レビューを英日ゲーム翻訳者のTomoko Takahashi氏が手掛けられている。

今作ではTRPGライクなスタイルとなっているため、テキストは現在進行系を主体に、過去形との使い分けがなされている。一見、淡々としているようだが、突如として巻き起こる狂気を孕んだセリフの言い回しや、アイテムのフレーバーテキストの遊び心など、随所を工夫されている印象だ。

伊藤潤二氏にインスパイアされたホラーテイストなアートワークと共に、独特の不可解さや、狂気を形作るのはテキストの表現だ。この作品を日本語でプレイできることに大いに感謝したい。


基本情報 恐怖の世界
開発 panstasz
販売 Ysbryd Games, PLAYISM
配信日 2020年2月21日 / 早期アクセス(Steam)
2023年10月19日 / 製品版リリース
2023年10月20日 / 日本語サポート(Steam)
定価 2,300円(Steam
2,420円(Nintendo Switch
2,420円(PlayStation 4
4,400円(パッケージ版
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