ロシア革命下のチェコスロヴァキア兵の帰還劇を描くサバイバルストラテジー『Last Train Home』


朝比奈 / Asahina

Last Train Home(ラスト・トレイン・ホーム)』は、大戦後の混乱の中で祖国へと帰還しようとするチェコスロヴァキア兵たちの物語を描いた、史実に基づくサバイバルストラテジーゲームだ。チェコ共和国のブルノを拠点とするインディーゲーム開発スタジオ"Ashborne Games"が手掛ける。

本作の舞台となるのはシベリア。
第一世界大戦の終結後、遠く離れた中央ヨーロッパにある祖国へと帰還しようとしたチェコスロバキア軍団の兵士たちだったが、折り悪くロシア革命により内戦が勃発してしまう。

プレイヤーは兵士たちを率いて装甲列車に乗り、革命には干渉せず中立を保ったままシベリアを横断し、祖国へと続くウラジオストクの港を目指そうとするのだが……彼らの思いとは裏腹に、否応なしに戦火に巻き込まれていくことになる。

Last Train Home on Steam
The Great War is over - the fight continues. Command a legion of soldiers, desperately trying to make their way home amidst the chaos of civil war. Lead them through the unforgiving wilderness onboard an armored train. Manage your crew and resources and try to survive.

指揮官として仲間と資源を管理する

本作の目的は、装甲列車に乗って無事にシベリアを横断することだが……その道は険しい。物語冒頭である出来事を経て、列車や兵士たちを維持するための資源や食料も欠乏。さらにその道中で、いつ戦場に阻まれるともわからないからだ。

そこでプレイヤーに求められるのは、仲間たちと資源を管理しつつ、戦場と机上の両方でさまざまな課題に立ち向かうことだ。その内容は、大まかに以下のような要素が含まれる。

  • 物資や食料の探索
  • 兵士の日常生活の統制や食料の配給・健康管理
  • 移動の手段であり、拠点となる装甲列車の維持・管理
  • 部隊を指揮しての戦略的な戦闘

こうした多方面での要素で構成されているところが本作をユニークなものとしていて、現実的に必要とされるアクションを省略せずに描いている作品となっている。だが、それだけに求められる要素が多いため、手を出しにくいと感じるかもしれないがそこは安心してほしい。

細かな難易度設定が用意されており、要求されるアクションをカスタマイズすることが可能。例えば、物資や食料の調達にそれほど気を配らなくとも済むように消耗を抑える調整ができる。プレイスタイルに合わせて楽しめるようになっていることを、最初にお伝えしておきたい。

過酷な旅が兵士たちを待ち受ける

本作のゲームシステムは、シベリアを装甲列車で横断し、物資や食料の補給をしつつ、ときには敵を退けながら終着地を目指すというもの。主に全体マップ上での移動・探索パートと、小規模マップに突入しての戦闘パートに分かれている。

全体マップ上では列車で移動しながら、線路沿いにある集落に部隊を派遣して物資を取引したり、森での採集や湖での釣りなどで食料を調達したりする。外部からの補給に期待できないため、列車の修理や、兵士たちの士気を保つためには欠かせないものだ。

移動中には突発的にランダムイベントが起こることもあり、選択肢によって良い結果にも悪い結果にもなる。どちらかと言えば悪い結果を引き寄せることが多いのは、戦時下の過酷さを表しているのか、筆者の運が悪いからなのかはわからないのだが……。

そして、メインミッションとして立ち寄ることになる大きな街や敵軍陣地などでは、戦闘に巻き込まれることとなる。干渉したくなくとも、相手がそれを許してはくれないのだ。

戦闘においても探索同様に部隊を編成することになるが、偵察兵・ライフル兵・機関銃兵・榴弾兵・衛生兵といったユニットの専門スキルが活かされる。離れた位置から敵兵の展開状況を偵察したり、ダメージを受けた仲間を回復したりといった具合だ。

的確にユニットを動かして、可能な限り有利な状況で攻勢を仕掛け、ときには静かに忍び寄って1体ずつ排除していく。泥臭く地道な戦略が求められるが、榴弾で敵車両を破壊したり、装甲列車からの援護射撃で一気に敵部隊を殲滅したりと派手さもあるのが面白い。

いずれのパートにおいても目を配る対象は多く、なんとも忙しい限りだが、それこそが本作の魅力なのだろう。

史実に基づく重厚なストーリー

本作はあくまでフィクションであって歴史的事実をそのまま再現しているわけではないが、その内容は史実に基づき制作されている。戦争当時の悲惨さや、時代背景を感じさせるストーリーがリアリティを持って展開されていく。

プレイヤーの操るチェコスロヴァキア兵は、ロシアの友軍として活動していた軍団だ。内戦を行っている赤軍と白軍とはもともとは敵同士ではないが、複雑な状況や思惑が重なって友好が許されない場合もあるのだ。

彼らの言葉を借りれば他国の内戦など知ったことではなく、ただ祖国に帰りたいだけの兵士たちの思いをよそに、否応なしに戦火へ巻き込まれていく様は、一方の思いだけではどうにもならない理不尽さが表されている。

果たして彼らが生きて祖国の地を踏めるかは、彼らを率いるプレイヤー次第だ。ぜひ、あなた自身の手でその結末を目撃してほしい。


基本情報 Last Train Home
開発 Ashborne Games
販売 THQ Nordic
配信日 2023年11月28日 / 日本語有り
定価 5,170円(Steam
Indie Freaks

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