『TOBOR』はRA社のスパイロボット「トボー」となり、16台の監視カメラを操るリアルタイム監視シミュレーションゲーム。隔絶された海中施設「アンダークロフト」にいる5人の情報を集めていくことになる。ダークで狂気に満ちた世界観で、ときには極彩色の悪夢を見るような恐怖演出がある。
本作はリリースされた2023年11月16日の時点で日本語には対応しておらず、英語または韓国語でプレイできる。デモ版が公開されているので、購入を検討している方は、リアルタイムに流れていく会話テキストを見てプレイできそうか試してみよう。
体験型の演劇からヒントを得た監視システム
本作は、ニューヨークのイマーシブ・シアター(体験型演劇作品)である『スリープ・ノー・モア』に影響を受けているという。『スリープ・ノー・モア』は舞台と客席の境界を取り払ったような形式で、ホテルの各部屋で多数の俳優たちが同時多発的に演じているのを、仮面で顔を隠した観客たちが間近で鑑賞できる。
この形式をゲームで再現しようとしているのが『TOBOR』の監視システムだ。施設内は多数の部屋に分かれており、監視対象である5人のキャラクターが部屋を行き交い、会話する。プレイヤーは16台もある監視カメラをリアルタイムに切り替えながら、どのキャラクターを目で追っていくかを判断するのだ。
任務を遂行するために与えられた期間は6日間。朝、業務を開始する前に監視対象を1人選び、夜、業務時間が終わってから監視対象に関する報告書を作成してRA社に送る。
報告書は、その日に「盗聴」して重要なセリフを聞いたタイミングでキーを押して記録したキーワードと、「スキャン」して集めた証拠品の情報をもとに作成される。
基本的には、監視対象1人を追い続けてカメラを切り替えればいいようだが、他のキャラクターたちの動向も気になる。同時多発的に起こる出来事を1人では追い切れないため、自然と取捨選択することになるだろう。
だが、繰り返しゲームをプレイすることで、キャラクターやストーリーへの理解が深まって展開が予測可能になり、より多くの出来事をカバーできるようになっていきそうだ。1周の想定プレイ時間は2~3時間だという。
容疑者たちを監視して失踪事件の謎に迫れ!
具体的に、5人の監視対象者を紹介しておこう。
舞台となるアンダークロフトの支配者で、女王と呼ばれる「マヤ」。聖職者で、「マキナ教会」の長「エレクトラ」。演劇の俳優であり、朝のニュースも放送している芸能人の「ステラ」。どこからともなく現れた、突然変異体らしきモンスター「セレステ」。アンダークロフトのために働く勤勉なエンジニア「テイラー」の5人だ。
初日の朝に報じられるニュースで、「クロトー」という人物が行方不明になって一週間経ったが、まだ見つかっていないということがわかる。RA社から渡された資料には行方不明者のポスターが貼ってあるが、行方不明ではなく殺害されたとメモもしてある。犯人はいったい誰なのか?
監視していると、女王マヤは「クロトーに関するものを見つけたら報告するように」と部下に命じている。そして、監視対象者の1人がクロトーの筆跡らしきメモを見つけたという。手がかりをめぐり、監視対象者たちはどう動くのだろうか。
プレイヤーの選択が運命を変える?
RA社から突き付けられたルールは、監視対象に「共感しないこと」「干渉しないこと」、そして、「RA社を裏切らないこと」だ。これは逆に、干渉し、RA社を裏切ることもできるという示唆になっている。
盗撮や盗聴という違法な手段で調査をさせているRA社に従っているだけでグッドエンディングにたどり着けるかというと、そうは思えない。プレイヤーの選択によって、どう結末が変わっていくのかが気になるところだ。
プレイヤーキャラクターであるスパイロボット・トボーの身に起こる出来事も謎めいている。ロボットなのに、夜に極彩色の幻覚のようなものを見て、悪夢を彷徨うような体験をするのだ。
夢の中では、監視カメラで見ていた世界の中にトボーがいて、ポイント&クリック形式でオブジェクトに触れ、アイテムを手に入れて使用するという、今までと異なるゲームシステムにより物語が進行する。
ロボットも幻覚や夢を見るのだろうか? アンダークロフトに隠された秘密を解き明かしたとき、トボーの運命はどうなるのだろう? 謎が謎を呼び、ぞくぞくさせられる。
流れていく会話に追いつけないかも……
記事の冒頭で述べたとおり、本作はリリース時点で日本語には対応していない。筆者は英語でプレイしてみたが、ストーリー中心のゲームで、さらにリアルタイムにセリフが流れるため、理解があまり追いつかなかった。何度もプレイして、あらすじや設定を把握すればなんとか理解できそうだが……。
ストーリー中心のゲームこそローカライズが必要とされるのだが、テキストの量が比較的多いため、コストも安くはないだろう。本作はアドベンチャーゲームファンにぜひともオススメしたいタイトルなのだが、言語の壁があるという点が惜しまれる。
もし、日本からのウィッシュリストが増えれば、開発チームが日本語対応を前向きに検討してくれるかもしれない。
基本情報 | TOBOR |
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開発 | Cogoo |
販売 | Cogoo |
配信日 | 2023年11月16日 / 日本語なし |
定価 | 2,000円(Steam) |