『El Panadero -The Baker-（エル・パナデーロ ～沈黙のパン屋さん～）』は、手描き風のアートワークが独特の勢いを感じさせる2Dアーケード風の横スクロールアクションゲームだ。東京を拠点とするインディーゲーム開発スタジオ"Sketchy Ceviche（スケッチ・セビーチェ）"が手掛ける。

突如として宇宙から襲来した人食い生命体によって、大切なお客を食べられ、店舗を破壊されてしまったパン屋の夫婦。長年のパン作りで鍛え上げられた肉体と、湧き上がる純粋な「怒り」を武器にヤツらに立ち向かおう！

El Panadero -The Baker- on Steam

Action Packed 2D Arcade Action Platformer featuring hand-drawn graphics. Armed with your fists (or a rolling pin) and a variety of bread-based boosts, fend of the the Alien Plants, and avenge the Bakery they destroyed.

STEAM

宇宙から襲来した人食い生物に立ち向かえ

本作のゲームシステムは、リニアな横スクロールステージを戦っていくオーソドックスなスタイル。雑魚を倒しつつステージを進み、手強いボスを倒すというパターンだ。

プレイアブルキャラクターはパン屋の夫婦の2人。それぞれ性能差があり、主人はジャンプ力とスピードは控えめだが攻撃力が高く、妻はその逆というステータス。好みで選んでしまって構わないが、筆者は軽快に動ける妻が好みだ。

宇宙生物にも負けない屈強な身体を持つ夫婦だが、アクションはシンプルにアタックとジャンプのみ。アタックは、敵や破壊可能な障害物に近ければ近接攻撃。離れていれば遠隔攻撃に自動的に切り替わる。コンボや二段ジャンプといった特殊なアクションはないが、直感的にプレイできるところに取っ付きやすさが感じられた。

体力はパンのアイコンで表示され、全て失うと倒れてしまう。残機制でその場から再開できるが、残機もゼロになればゲームオーバーだ。コンティニューしなければ、最初のステージからとなってしまうのは実にアーケードらしい。

ステージにはパワーアップアイテムが落ちていることがあり、取得するとキャラの攻撃性能が変化する。例えば「うなぎパイ」を拾うと、遠隔攻撃がホーミング性能を持ったうなぎパイとなって飛び交うようになる。

本作の特徴にも数えられる手書き風のアートワークも相まって、なんともシュールでコミカルな雰囲気を感じられるのも魅力だ。

なお、最大2人までのローカル協力プレイに対応。単純に戦力が増した状態で挑むことができるので、フレンドや家族と一緒にプレイできる方は、昔のアーケードを思い出して一緒に楽しんでみるのも良さそうだ。

ストアページにもあるとおり、ゲームクリアまで1～2時間程度とボリュームは控えめ。加えて、難易度もカジュアル寄りとなっているので、あまり苦労することなくエンディングまで到達できる。普段アクションが苦手な方でも気軽に挑戦できる反面、歯ごたえのあるアクションを求める方には物足りなさを感じるように思う。

独特の味を感じさせるローカライズ

厳密にはローカライズの枠には当てはまらないが、本作の日本語翻訳は、東京在住のメキシコ人開発者inubass氏が自ら手掛けている。そこにはトレーラーにも見られる独特の言い回しや、本作の雰囲気にマッチするかのような勢いが感じられ、何とも言えない味わいがあるのだ。

日本語としての文法的な部分に目を向ければ正確ではない部分も多々あるが、面白いと感じる絶妙なラインと言っていい。ただ、念のために断っておくと、筆者にはこうした日本語翻訳を手放しで擁護する意図はない。例えば、ストーリーを主軸としたテキストの正確性が重要となるRPGやノベルゲームでは通用しないだろう。

本作がそうしたものとは一線を画しているからこそ楽しめるものではあるが、熱量や勢いといったものが伝わるのは、言葉の正確さだけが重要となるわけではないことがよくわかる。

先に触れた本編のボリュームや難易度もそうだが、Sketchy Cevicheは誰もが楽しめる作品を目指して制作しているとのことなので、トレーラーを見てこの世界に魅力を感じたならば一度手に取ってみてはいかがだろうか。