2023年もたくさんのインディーゲームがリリースされ、皆さんそれぞれに1年で1番思い出に残ったタイトルがあるかと思います。本記事ではIndie Freaks所属メンバーによる、個人的に「2023年で一番思い出に残ったタイトル」をご紹介していきます!
Sea of Stars
(by 朝比奈)
『Sea of Stars』は古き良きゲーム作品へのリスペクトである。
この「古き良き」というワードは魔法の言葉だ。懐古主義的な意味ではなく、思い出の中に強く焼き付けられたゲーム作品たちを思い起こす、なにかに出会える言葉なのだと筆者は思っている。
本作がその言葉の対象とするのは、90年代に最盛期を迎えたスーパーファミコン世代。『クロノトリガー』や『ブレスオブファイア』など、2Dにおけるゲームシステムと表現力の1つの到達点を目撃した時代。その時代に憧れたSabotage Studioと、それを後押ししたユーザーの思いが結晶化したようなタイトルが本作だ。
あの頃の体験を新作でプレイできることに感謝し、筆者個人として、そしてKickstarterで支援した1人のユーザーとして今年のゲーム・オブ・ザ・イヤーを贈りたい。

FAITH: The Unholy Trinity
(by Masa Kei)
ビデオゲーム黎明期の表現にこだわり、あえて解像度を下げて、音割れしたような合成音声を用いたドット絵ホラーゲーム。有志翻訳が推奨されており、2023年に日本語化modが公開された。
かつて少女の悪魔祓いに失敗した神父が自らの過ちに苦悩し、悪魔に取り込まれそうになりながらも信仰を貫けるかというシリアスなストーリー。それがロトスコープの手法で実写をトレースしたカットシーンで描かれ、拾い集めたメモの記述により断片的に語られる。
神父がのろのろと歩いてワンボタンで十字架を掲げるだけのアクションなのに、ボスの攻撃が苛烈で、100回死ぬと実績が解除される「死にゲー」。隠しボスとの激戦にドハマりして、自分にとって伝説のゲームになった。
短編として無料公開されてから、長年かけてチャプター2と3が追加されて完結したという経緯も、開発者とファンの熱量が感じられて素晴らしい。インディーゲームならではの傑作。

Against the Storm
(by LayerQ)
このゲームには恐ろしいほどの魅力が詰まっている。時間が信じられない速度で溶け出し、鉄の意志でいったんゲームを遊べない状態に(=アンインストール)したほどに。
『Against the Storm』は、リアルタイム都市建設シミュレーションにローグライトをかけ合わせた新感覚のゲームだ。2022年10月に早期アクセスとしてリリースされ、2023年12月に正式リリースを迎えた。
早期アクセス直後に購入したものの、当初は「リアルタイム都市建設とローグライトが上手く噛み合うのか?」という疑問もあり、なんだかんだと積み状態に。そして、今年の秋頃に「そろそろ正式リリースされるらしい」ということを知って本格的に遊んだが、これほど面白いゲームを積んでしまっていた自分を悔いた。
都市建設、国家運営などのシミュレーションやストラテジーゲームにおける大きな快感の一つに、貧しい状況からの脱却があると思う。安定した都市や国家を築いた後に他者を圧倒して得る快感もあるが、やはり自分らしく考え抜いて窮地を脱するまでの時間がより魅力的に感じる。
『Against the Storm』はその時間を延々と楽しめる上に、良い都市を築けば築くほどに新たな選択肢が手に入りと、さらに頭を悩ませてくれる状況が出現するゲーム設計になっている。詳しいルールを説明は省略するが、先ほどの快感に覚えがある方は、チェックしておいて損はないタイトルだと保証する。

異世界の創造者
(by テヌキボーズ)
今年を振り返ったとき、一番時間を忘れて没頭したゲームといえば『異世界の創造者』かもしれない。
極めて自由度の高いローグライトRPGで、ダンジョン攻略はもちろん、鳥からご老人まで誰でも仲間にでき、農業や釣り、鍛冶、錬成、調合、さらにはマイタウンの建設までできてしまう。かの名作『Elona』をご存じの方は、そちらを思い浮かべるとイメージと近いだろう。
プレイヤーの分身たる主人公は世界創造の力を持つが、それ以外は平凡な一般人と同等な存在である。そんな主人公が、自ら生み出した世界へと降り立ったところから物語は始まる。
世界を旅し、創造の力で世界を広げていくうちに、さまざまなトラブルに巻き込まれていくことになる。とはいえ、そんな物語は放っておいて自由気ままに冒険できるのも本作の魅力だ。
ひたすらにスキルを集めて自身を鍛えるもよし、最強の武具を生み出すべく鍛冶に没頭するもよしである。さまざまな楽しみ方ができてしまう本作は、筆者の2023年ゲーム・オブ・ザ・イヤーとなった。

食糧天使
(by ばんじーよこすか)
私は今年の9月にIndie Freaksのライターチームに参加しました。いくつかのオフラインイベントを取材した中で、特に思い出深かったのがノベルゲーム『食糧天使』です。
『食糧天使』に初めて出会ったのは、11月に開催されたデジゲー博2023。当日、開発者である爆爆赤青のお二人に取材を申し出たところ、「やった!取材だって!」と笑顔で快く受け入れてくださいました。その笑顔が強く印象に残っています。
実際にゲームをプレイした後に、私は「これだ!見つけた!」とワクワクしました。もっと爆爆赤青のお二人のゲームをプレイしたい、このゲームの魅力をできる限りたくさんの方々に伝えたいと感じました。私はIndie Freaksのライターとして喜びと共に身が引き締まる思いを抱いていたのです。
今後もたくさんのオフラインイベントに出向き、ゲーム開発者の方々のゲームへの愛と情熱を読者の皆さんにお伝えしていければと思っています。『食糧天使』は、Indie Freaksのライターとしてこれから活動していく上で大切な矜恃のようなものを芽生えさせてくれた、忘れられないタイトルです。
