白血球がミクロの世界を救う倉庫番パズル『HYNPYTOL(ヒンピトル)』


Masa Kei
Masa Kei

2024.01.03

HYNPYTOL(ヒンピトル)』は、90年代のピクセルアートゲームに影響を受けた倉庫番パズルゲーム。「キラーT細胞」となってヒトの体内を巡り、ウイルスに侵されたミクロな世界の崩壊を食い止めようとする壮大なストーリーが楽しめる。

開発元は韓国の学生が集まったチーム、base0。本作は、プサンで開催されたBIC Festival 2023でルーキー部門の「Excellence in Game Design」賞を受賞している。

2023年9月22日にリリースされ、その後もステージ追加などのアップデートが続いていた。一区切りついたようなので、ご紹介させていただきたい。本作の日本語翻訳は筆者が担当させていただき、8bitのレトロゲーム風テキストにしてある。

Save 30% on HYNPYTOL on Steam
They’re coming. There’s no hope. Still, you’re a HYNPYTOL.

かわいい細胞たちとの会話で進んでいく冒険譚

迷路状のステージのところどころに、免疫を担当する細胞たちがいて、ハイタッチすると会話ができる。チュートリアル的なことを教えてくれる細胞のほかに、ただ楽しそうに遊んでいる細胞もいて、ゆるくてのんびりしている。

▲手で進んでいくゲームだけにハイタッチが挨拶

だが、ウイルスという見えない脅威が侵入しており、穏やかな様相は一変する。世界の滅亡(=人体の死)を止められるかという壮大な冒険が、細胞たちの視点で描かれる。

キラーT細胞はセリフのないプレイヤーキャラで、ひたすらに突き進んでいくが、キラーT細胞に指令を与える「樹状細胞」が相棒的存在で、もうひとりの主人公として、葛藤を抱えながらも異変の真相に迫っていく。

意外とボリュームのあるシナリオで、世界の危機に立ち向かう勇敢なヒーローの物語でありながら、しんみりと味わい深い読後感を与えてくれるだろう。

▲この樹状細胞が主人公を導くメインキャラクター

移動するときも手だけを使って進め!

細胞に足が生えているわけではないので、手だけを使って移動する独特な操作が特徴的だ。

まず、進みたい方向のキーを押して、手を伸ばして壁などをつかむ。次に、逆方向のキーを押して、自分の体を引き寄せるようにして移動する。直進しかできず、壁などにぶつかりながら進んでいくような感じだ。

オプションで操作タイプを「アシスト」に切り替えると、手を伸ばす動作と引き寄せる動作がセットになって、キーを一回押すだけで移動できる。ゲームパッドで遊ぶときにおススメだ。

▲お好みで選べる2種類の操作方法

ブロックを押したり引いたりしてうまく使え!

白血球の一種である「単球」は、通路をふさぐブロックのようなもの。手を伸ばして押したり、逆に引き寄せたりして、どかしてしまおう。

単球同士が並ぶと、くっついて離れなくなる。単球をくっつけて固定させたほうがうまく進めることもある。

▲道をふさぐ単球をどかしてから進もう!

次のステージに進むための血管の穴がふさがっているときは、周りにある「感染細胞」をすべて除去すると穴が開く。感染細胞に付いている取っ手のようなものに手を伸ばして引けば、感染細胞を除去できる。

ここまでが基本のルールだが、他にもチャプターごとに新しいギミックが登場。異物を捕食して掃除する役目の「マクロファージ」など、ギミックが細胞をモチーフにしたものになっているのが面白い。

▲マクロファージに異物を食べさせて一掃しよう

レトロゲームへのリスペクトも!

本作はゲームボーイカラー風の画面構成になっている。寄り道すると、レトロゲームのワンシーンを再現した部屋を見つけることができて、実績を解除できる。どんなネタが仕込まれているのか探してみるのも面白いだろう。

本作のゲームシステムは、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』に登場した「フックショット」から着想を得て作られたという。確かに、フックを撃ち込んだモノを引き寄せたり、自分の体をフックに引っ張ってもらったりするアイテムが、本作のベーシックな移動方法やアクションのヒントになったことがうかがえる。

また、8ビット風チップチューンのサウンドが好きな方にもおススメしたい。

▲どこかで見たことのある伝説的な旅立ち

時間制限ありのステージは演出として面白いが……

少し気になる点として、一定時間内に感染細胞をすべて除去しないと破裂するステージが各チャプターの終盤にいくつかあり、その時間制限がやや厳しいように感じた。何度かやり直して最適なルートを構築したあとも、複雑な操作での移動をミスなく実行する必要があった。

ピンチの中で駆け抜けるシーンは演出としては盛り上がるところで、ムダな動きを減らしてスピードを上げていくほど没入感も増すが、素早く正確に入力できるかどうかは人によって差があるはず。時間制限にもっと余裕があっても、同程度の楽しさを体験できたように思う。

▲時間内にすべての取っ手を引く必要があるタイプのステージは忙しい

上述のように、やや難所になっているステージを乗り越える必要のある本作だが、このレトロゲーム愛や不思議な世界観の魅力を語りたくなるようなゲームだった。

家庭用ゲーム機が日本ほど普及していなかった韓国で、学生たちが8bit世代のレトロゲームに夢中になり、そこから継承したものを再構成して自分たちのゲームを作ったということが興味深い。日本のゲームファンにも遊んでいただけたらと思う。


基本情報 HYNPYTOL(ヒンピトル)
開発 base0
販売 base0
配信日 2023年9月22日 / 日本語有り
定価 1,700円(Steam
Indie Freaks

Support us