本稿は事前にレビューキーをご提供いただき、執筆しています。
『Alone in the Dark(アローン・イン・ザ・ダーク)』は、謎と狂気に満ちた屋敷を舞台に、叔父を探すエミリーと彼女に雇われた私立探偵エドワードの探索劇を描くサバイバルホラー・アドベンチャーゲームだ。スウェーデン中南部のシェブデ市(※)を拠点とする、ゲーム開発スタジオ"Pieces Interactive"が手掛ける。
本作は、3Dサバイバルホラーの原点的作品とも言われる、1992年にリリースされた『Alone In The Dark』シリーズ1作目のリメイク作品。舞台設定や登場人物はオリジナルをなぞっているが、全体を通して大胆にプロットが再構築された物語となっている。
今回事前にプレイする機会を頂いたので、本稿ではその内容と魅力についてご紹介しよう。
※余談だが、Pieces Interactiveが拠点を構えるシェブデ市は、産学官連携でインディーゲーム開発をはじめとするゲーム産業をバックアップするプロジェクト「Sweden Game Arena」に取り組んでおり、同スタジオもそれを支えるメンバーに名を連ねている。
同プロジェクトについては、2020年11月7日に配信された「INDIE Live Expo II」の番組内コーナーにて、ゲームジャーナリストの徳岡正肇氏がレポートされているので、興味がある方はご覧になってみてはいかがだろうか。
それぞれの視点で描かれる物語
本作の舞台は1920年代、アメリカ南部のルイジアナ州にある精神病棟「デルセト屋敷」。芸術家の叔父ジェレミー・ハートウッドから受け取った手紙を携えて、彼の姪の"エミリー・ハートウッド"と、彼女に雇われた私立探偵"エドワード・カーンビー"の2人が屋敷を訪れるところから物語は始まる。
ジェレミーの姿を探してその謎めいた屋敷の探索を進めるうちに、やがてそこに渦巻く謎と狂気に巻き込まれていくこととなる。
先述のとおり、本作の主人公はエミリーとエドワードの2人。プレイヤーはそのいずれかを選択して一種のパラレルワールド的にゲームを進めることとなり、一方でしか立ち入れない場所や、見ることのできない展開が待ち受けている。
途中で交代することはできないため、それぞれのキャラクターで1周ずつプレイすることで物語を最大限に楽しめる形だ。似て非なるものではあるが、ご存知の方は『バイオハザード2』の仕組みをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれない。
なお、本作でエミリーはハリウッド女優の"Jodie Comer"。エドワードは同じく俳優の"David Harbour"という、実在の人物がモデルを務めることでリアリティさが高められている。
特にDavid Harbourは、日本でも非常に人気の高いNetflixのSFホラーテレビドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界(原題:Stranger Things)』の主役の1人、ジム・ホッパー役でご存じの方も大勢いらっしゃるだろう。ちなみに、日本語吹き替えも同じく声優の山野井 仁氏が担当されている。
屋敷に潜む闇と秘密へと迫る探索
本作のゲームシステムは、選択した主人公視点での探索を主軸としたもの。さまざまな仕掛けや隠された秘密を解き明かす謎解きあり、人外のクリーチャーとの戦闘ありという古典的なスタイルの組み合わせで、一定の目的を達成することでストーリーが展開していくチャプター制となっている。
最初こそエミリーの叔父ジェレミーを探す2人だったが、やがて徐々に不可思議な事態へと巻き込まれていく。エミリーは叔父の行方を探し、エドワードは事態の裏側に潜む秘密を捜査するために、それぞれの目的に従って行動していくのだ。
デルセト屋敷は広く入り組んでいて、閉ざされた扉や不可思議なパズル、奇妙な登場人物たちとの会話イベントといった要素が散りばめられている。
また、そこかしこに置かれた資料や特殊なアイテムを集めると、物語を取り巻く背景や隠された知識を得ることも可能。プレイヤーにヒントやハイライトを示すオプションも用意されているが、注意深く観察していくことでより本作を楽しめるだろう。
変容する世界で闇に潜むものに立ち向かえ
探索の舞台は屋敷の中だけとは限らない。とある出来事を経て邸内から繋がる異世界では、異形の怪物との戦いにも巻き込まれる。
主人公は手持ちのハンドガンや、拾った金属パイプなどの武器を手に立ち向かうが、標準以上の難易度では銃弾や回復アイテムは潤沢ではないため無駄遣いは禁物。また、一度倒したクリーチャーが再出現するケースもあり、限りあるリソースを管理しながら進まなければならない。
そんな厳しいところもサバイバルホラーとしての面白さだと感じる部分なのだが、本作はあくまで探索がメイン。意外にも戦闘が起こる頻度はそう多くはなく、一定のシーンで集中的に発生する形となっているようだった。
このようなメリハリが、落ち着くべきところはじっくりと細部まで見て回りたいというプレイヤーにとっては嬉しいものではないだろうか。
今回のリメイクによってあらためて描かれるのは、アメリカ南部の土地に建つ古めかしい屋敷。どこか奇妙な人物たち。非科学的な存在や出来事――という、いかにも「南部ゴシック」らしい要素に加えて、オリジナルから引き継がれる「クトゥルフ神話」をテーマに据えた世界観だ。
アメリカの小説家"ハワード・フィリップス・ラヴクラフト"が生み出した、根源的恐怖を描く「クトゥルフ神話」は今日でもファンを魅了してやまず、本作においてもその雰囲気を遺憾なく発揮している。今新たに描かれた『Alone in the Dark』の世界を、体験してみてはいかがだろうか。
本編のプレイ前にプロローグを体験しよう
『Alone in the Dark』本編に先駆けて、2023年5月26日に『Alone in the Dark Prologue』が、各プラットフォーム(Steam, PlayStation 5, Xbox Series X/S)にて無料でリリースされている。
これは本編の前日譚であると同時に、同作品の世界観やメカニズム、コンセプトといったものをいち早く体験してもらうことを目的に制作された「プレイアブルティザー」に位置づけられる。その名のとおりプレイ可能な予告編で、断片的なデモ版ではなくスタンドアローン(単独)の短編作品として完成されたものだ。
プロローグにおいてプレイヤーが操作するのは、本編にも登場するキャラクターの1人でグレイス・サンダースという少女。舞台は本編同様に「デルセト屋敷」となり、そこで彼女はジェレミーからエミリー宛の手紙を託され、管理人室へと向かう中で屋敷に潜む闇の一端に触れることとなる。
プロローグをプレイせずとも本編をはじめることも可能だが、この物語を形作る一片であることは確か。クリアまで10分程度と短いものなので、まずは本作を体験してから本編へと挑むことをおすすめしておこう。
基本情報 | Alone in the Dark |
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開発 | Pieces Interactive |
販売 | THQ Nordic |
配信日 | 2024年3月20日 / 日本語有り |
定価 | 7,590円(Steam) |
7,590円(PlayStation 5) | |
7,600円(Xbox Series X/S) |