本稿は事前にレビューキーをご提供いただき、執筆しています。
『Highwater』は、終末に瀕した地球からの脱出を目指そうとする、主人公ニコスとその仲間たちの姿を描いたアドベンチャーゲームだ。セルビアの首都ベオグラードを拠点とする、インディーゲーム開発スタジオ"Demagog Studio"が手掛ける。
同スタジオの前作『Golf Club Nostalgia(旧題:Golf Club Wasteland)』と『The Cub』とは共通する世界観で、舞台となるのは終末的な未来の地球。直接的なストーリーの繋がりはないが、一連の作品群の中では最も過去の時代が描かれている。
水没した世界からの脱出を目指してボートを進めよう
先述のとおり、本作の舞台は未来の地球。未曾有の環境災害によって陸地の大部分が水没してしまっているが、まだかろうじて人類は生き延びている。しかし、無政府状態で治安は悪化し、富裕層は地球を放棄して火星への脱出を図ろうとしている。
そんな世界に見切りをつけた主人公の青年ニコスは、仲間たちと共に火星行きの宇宙船へと忍び込む計画に向かって動き出していく――というのが本作のストーリーとなっている。
本作のゲームシステムは、ボートに乗って水上フィールドを進みながら、ストーリーに沿った目的を達成していくというもの。ストアページの雰囲気からは水上探索ができるオープンワールドをイメージするかもしれないが、実際にはリニアなもので、多少寄り道をして収集物やアイテムを拾える程度となっている。
道中ではさまざまな場所に立ち寄って生存者と出会うことがあり、共に行動する仲間となるキャラクターもいれば、主人公たちに敵対して戦いに発展することもある。主人公たちは戦いへの躊躇がないのだが、それはまさに終末世界といったところか。
あらゆるものを利用して勝利しよう
敵との戦闘は、ターン制のタクティカルバトル方式。マス目状に区分けされた小規模な戦闘フィールド内で、キャラクター固有の武器やスキルを駆使して戦う。
単純な力押しでは勝つことが難しいので、敵の行動を妨げるスキルを使ったり、例えば「投げると爆発するドラム缶」などの戦闘フィールド内のオブジェクトを利用したり、遮蔽物に身を隠したりと戦略的な立ち回りが要求される。
前々作『Golf Club Nostalgia』はゴルフゲーム。前作『The Cub』は横スクロールアクションだったので、今作ではまたジャンルがガラッと異なる。共通する世界観は気になるが、このタクティカルバトルを攻略していけるか心配に思うプレイヤーもいらっしゃるかと思う。
難易度設定はないものの、『XCOM』シリーズのような本格的なものと比べれば難易度はマイルドな印象。もちろん、それなりに歯ごたえはあるので誰でも簡単に勝てるとは言わないが、もし負けてしまってもその戦闘の最初からリトライとなるだけなので、多少はハードルが下がった気分で挑めるのではないだろうか。
ラジオによって語られる世界観
ストーリーベースの作品において物語の背景や、その世界の動きの描写や演出は重要。それが上手くいっているかどうかでストーリーの深みも違ってくるからだ。
そこで登場するのがラジオ。以前の作品でも演出として用いられた、たまに流れるラジオ番組によってこの世界の情勢といったものが語られていく。ラジオのMCは皮肉とジョークを効かせているが、今起きていることをプレイヤーに向けて自然に説明してくれている。
本作は主人公ニコスの視点で進んでいくので、ともすればプレイヤーが知り得る情報が主人公たちが見えている範囲のみだけとなってしまいかねない。こうした現実とはかけ離れた世界観を、上手く表してくれる良い仕組みだと感じるものだ。
終末的な世界観を扱った作品には、不思議と惹かれてしまう一定層の根強いファンがいる。物語が進むにつれて徐々に明らかとなっていく世界の姿と、その結末を目撃したい方は、この水没世界に飛び込んでみてはいかがだろうか。
基本情報 | Highwater |
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開発 | Demagog Studio |
販売 | Rogue Games |
配信日 | 2024年3月14日 / 日本語有り |
定価 | 2,300円(Steam) |
1,980円(Epic Games) | |
2,950円(Nintendo Switch) | |
3,080円(PlayStation 5) | |
2,350円(Xbox Series X/S) |