本稿は事前にレビューキーをご提供いただき、執筆しています。
『Neva』は、主人公Albaと子オオカミNevaの旅路と成長の日々を描いた、まるでアート作品のようなビジュアルが特徴的なアドベンチャーゲームだ。スペイン・バルセロナのゲーム開発スタジオ"Nomada Studio"が手掛ける。
そのアーティスティックな表現をベースに、ゲームの作品性が高く評価された『GRIS』を手掛けた開発チームの6年ぶりの新作として、発表当初から注目されている本作。今回先行プレイの機会を頂いたので、本稿ではその内容と魅力についてご紹介しよう。



若き女性と子オオカミの絆と成長の旅
本作は、1人の女性と1匹のオオカミが徐々に滅びゆく世界を共に旅する物語。Albaは寡黙で思慮深く、戦う力を持っている女性だが、世界を蝕む闇によって大きな喪失感を味わったトラウマを抱えている。一方、物語序盤の子オオカミNevaは、まだまだ幼くAlbaの助けを必要としていて、好奇心旺盛で落ち着きがない。
だが、旅を続けるうちにAlbaの心は癒され、Nevaもまた心身ともに成長することで強く勇敢となり、守り守られるその関係性に変化が生じていく過程が丁寧に描かれていく。

ゲームシステムとしては、2D横スクロールでリニアに進んでいくアドベンチャー作品で、念のためにお伝えしておくとメトロイドヴァニアではない。プレイアブルキャラクターはAlbaのみで、そのアクションは剣を振るう・ジャンプ・ジャンプからの切り下ろし、回避といった程度で極めてシンプル。
Nevaは操作できず独自のアルゴリズムでAlbaについてくるが、気になったものがあるとその場で立ち止まったり、来た道を戻ってしまったり、裂け目を飛び越せずに躊躇してしまったりすることも。そんなときはAlbaがその名を呼べば、再び後を追いかけてきてくれるのが何ともかわいらしい。

しばらくはリードのついていない子犬のような印象だが、旅を続ける中でやがて大きく成長していき、旅の道中や戦いの場面においてもAlbaの頼れる相棒とも言うべき存在となっていく。
夏に始まり、秋、冬と時間が流れていく中で、その成長をそばで感じられる感覚はなんだか親目線のようだなと思えてきて、まさにエモーショナルな気持ちを呼び起こしてくるのだ。

より磨きをかけてきた表現手法
前作『GRIS』では、言語やテキストを用いることなく、色彩あふれるグラフィック、キャラクターの仕草や表情、豊かな音楽・サウンドによってその「世界観」と「ストーリー」を表現する手法が取られていたが、本作においてもそれは引き継がれている。
画面の中を移り行くシーンの1つ1つが、秀逸なアート作品であるかのように見せている点は変わらずユニーク。主人公の精神世界を描いた前作とは異なり、今作ではファンタジーではあるが、現実感のある自然の風景が季節の移ろいと共に描かれ、四季の美しさが加わったことでよりアーティスティックになっている。


言語やテキストによってストーリーが描かれるわけではないので、プレイヤーの想像によって、それを補う必要がある点は好みが分かれるところだとは思う。だが、今作は抽象的な表現が抑えられているため、『GRIS』より少し想像しやすいと感じられるのではないだろうか。
また、戦いという要素が追加されたことでゲームプレイに直接的な緩急が加わり、イベントシーンでの演出的な盛り上がりを除けば、常に穏やかな雰囲気だった前作とは明確に異なるプレイフィールを味わえた。

作中世界の脅威となる闇は、侵食したものを黒く染め上げてその生命を奪うか、または、取り憑いた生き物を操ってAlbaとNevaを襲ってくる。Albaは優れた剣士だが、先述のとおりアクション自体はシンプル。序盤はそれでも何とかなるが、敵の脅威は徐々に増してくる。
しかし、成長したNevaは神秘的な力が増し、積極的に敵に攻撃を仕掛けてくれるようになるので、旅の最中で出会う困難な戦いの助けとなってくれるだろう。


正直なところ筆者は、前作と似た作品となるのではないかと思っていたものの、実際にプレイしてみれば、着実にその表現手法に磨きをかけてきたことが感じられた本作。この世界の秘密と、AlbaとNevaの旅路がどのような変化と結末を迎えるのか、ぜひ手に取ってプレイしてみてほしい。
『Neva』は、PC(Steam)とコンソール(Nintendo Switch, PlayStation 4/5, Xbox Series X/S)にて2024年10月16日にリリース済だ。
日本語翻訳はここに注目
本作の日本語翻訳は、架け橋ゲームズがローカライズサポートし、同社のローカライゼーションマネージャーを務める桑原頼子氏が担当されている。
言語やテキストが登場しない本作だが、ストーリー進行や行動によってアンロックされる「実績/トロフィー」から読み取れる工夫が施されているとのことなので、普段は気に留めていない方も、今作では注目してみてはいかがだろうか。

解説動画の公開やポスターリレーも開催
本作のローンチを目前に控えた2024年10月11日、YouTubeにて開発チームより『Neva』の制作の模様にスポットライトを当てた解説動画「Neva | The Artistry Behind」が公開された。
前作『GRIS』からの道のり。制作のきっかけ。そして、ゲームのアートと音楽の制作方法を振り返る内容となっている。全編英語ではあるものの、その内容は大変興味深いものなので興味のある方はぜひご覧いただきたい。
▲Neva | The Artistry Behind - YouTube
また、以前に弊誌でもニュース記事としてお届けしているが、2024年9月10日から、11名のアーティストによってリレー形式でポスターをお披露目するイベントがNomada Studioの公式Xにて開催された。
日本でもご存知の方が大勢いらっしゃるであろう、ロシア出身で日本在住のイラストレーターイリヤ・クブシノブ氏が参加されているなど、注目の内容となっているので遡って探してみてはいかがだろうか。
基本情報 | Neva |
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開発 | Nomada Studio |
販売 | Devolver Digital |
配信日 | 2024年10月16日 / 日本語有り |
定価 | 2,300円(Steam) |
2,300円(Nintendo Switch) | |
2,310円(PlayStation 4/5) | |
2,350円(Xbox Series X/S) |