逃れようのないバッドエンドが渦巻くビジュアルノベル『箍の外れたビスクドール』プレイレポート

朝比奈 / Asahina

2024/12/24

本稿は事前にレビューキーをご提供いただき、執筆しています。

箍の外れたビスクドール』は、謎の症状により町の住人たちが凶暴化するという事態に巻き込まれた、高校生たちの姿を描くスプラッターホラー・ビジュアルノベルゲームだ。日本の個人ゲーム開発者の恐怖院怨念氏こと、個人ゲーム開発スタジオ"おんねんちゃんねる"が手掛ける。

ある日、主人公の水野竜太が住む和泉町に謎の奇病が降りかかる。それまで普通だった人間が突如として豹変し、誰彼構わず襲いかかってしまうのだ。日常が一変し、次々と人が殺されていく中、主人公はなんとかこの状況から脱しようと奮闘していくのだが――というストーリーが展開されていく。

Steam:箍の外れたビスクドール
『さあ、無限の絶望をあじわえ!』町の人々が原因不明の症状でとつぜん凶暴になる。高校生たちに襲いかかるバッドエンドを楽しむ物語。

容赦のないバッドエンドがプレイヤーを待つ

本作のゲームシステムは、シーンを描いた静止画や動画を背景に、キャラクターの立ち絵や音楽、ゲームならではの画面効果などを組み合わせて、テキストベースで物語を読み進めるビジュアルノベル、または、ノベルゲームと呼ばれるもの。

ビジュアルノベルの中にもいくつかの分類があるが、本作はシーンによって選択肢は存在するものの「その選択の如何を問わず、結末に向かって物語が収束していくタイプ」となっている。

物語は基本的に主人公の主観で語られる一人称視点(モノローグ)で進んでいく。主人公はプレイヤーの投影役ということかボイスはないが、それ以外の登場人物のセリフはフルボイス、または、一部ボイス有りというリッチさ。

ボイスキャスト/関係者は、恐怖院怨念氏のこちらのXポストにて公開中。

そんな本作だが、スプラッターホラーと銘打っているとおり、過激な表現がプレイヤーを待つ。メインキャラクターデザインに『ひぐらしのなく頃に』のコミカライズを手掛けた鈴羅木かりん氏を迎え、ともすれば、アオハルなノベルゲームかと思うほどに魅力的なビジュアルのキャラクターの面々が、直前までの雰囲気から豹変。主人公に、そして、周囲の人々たちに襲いかかるのだ。

ビジュアルとテキストの両面からそれが表現されているが、どちらかと言えばテキストの方が容赦のない描写となっている。年齢制限のある作品ではないものの、一応耐性のある方向けの作品であることはここでお断りしておこう。

▲ビジュアルの方は直接的な描写は避けられているが、テキストはそんなことはない

プレイヤーとしてはそんな状況から逃れたいと願うものだが、本作はバッドエンドに一直線で逃れようがない。それもそのはず、本作は「無惨で後味の悪いバッドエンドを楽しむ」というコンセプトで制作されているからだ。

「どうすればバッドエンドを回避できるのか」を試行錯誤するのではなく、グッドエンドが存在しない世界観で「どういう展開をたどってバッドエンドへ向かっていくのか」という筋書きを楽しんでいく、ユニークな切り口の作品というのが筆者の印象だ。

なお、ストーリーの要所では「TIPS」という形で、物語を補完するミニエピソードが追加される。物語の真相に迫る上では、一緒に読み進めていくとより深く本作を楽しめるだろう。

後述するが、今回リリースされたのは物語全体の導入としてのプロローグにあたる。比較的早く結末を見ることができるショートストーリーとなっているので、ぜひご自身でも物語に触れてみてはいかがだろうか。

今後は段階的にDLCでエピソード追加予定

Steamストアページ上にも明記されているとおり、本作はストーリー上のプロローグにあたり、今後は段階的に追加エピソードがDLC配信されていくことが予定されている。

まず、今回2024年12月12日にリリースされたプロローグを皮切りに、以降は一定のスパンで全6エピソードを配信予定。いずれも400円の有料DLCとなる。

あまり見ない配信形態だが、過去には『Life is Strange 2』などがこの形態を取っていた。一気にプレイしたい気持ちもあるが、ドラマ的に次の展開を期待して待つ、というのも乙なものではないだろうか。

DLCの内容としては、それぞれのエピソードを牽引するメインキャラクターがおり、徐々に事件の真相が明かされていく形。今後の展開としては、同じ時間を何度も繰り返すいわゆる「ループもの」となるが、現時点ではどうあっても逃れようのないバットエンドを、いずれは回避する未来に繋がるかもしれないそうだ。

ちなみに先述の「TIPS」を見ることでたどり着ける、おまけシナリオ的なものには次回予告的な内容も収録されているので、併せてご覧になると良いだろう。

なお、本稿の執筆にあたり、開発者の恐怖院怨念氏にDLC配信のスパンを訪ねたところ、あくまで予定だが"約1年程度"のスパンでのリリースを想定しているそうだ。本来は半年ぐらいを目指したいが、開発経験がまだ浅く、関係者の豊富さも考慮するとその程度になるだろうとのこと。

具体的な時期が決まれば、XやSteamニュース等で告知されると思われるため、期待を込める意味でも本プロローグをプレイしてみてはいかがだろうか。


基本情報 箍の外れたビスクドール
開発 おんねんちゃんねる
販売 おんねんちゃんねる
配信日 2024年12月12日 / 日本語有り
定価 300円(Steam
※以降のエピソードDLCは各400円で配信予定

この記事で紹介されているゲーム

Life is Strange 2

アドベンチャー

日本語対応

箍の外れたビスクドール

アドベンチャー

日本語対応
¥300