朝、目覚めたら父親がいない。謎と仕掛けが散りばめられたアーティスティックなノベルゲーム『ダレとカレも』ブースレポート【TIGS2025】

ばんじーよこすか

2025/03/11

2025年3月8日~9日にかけて、東京・吉祥寺にて開催された「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025(TIGS2025)」の出展作品より、筆者が注目する魅力的なタイトルをご紹介しよう。

それは、2D謎解きアドベンチャーゲーム『In His Time』を手掛けたクリエイターyona氏による新作『ダレとカレも』だ。

Steam:ダレとカレも
いつもと変わらないはずの朝、少女が起きると父親がいなくなっていた。代わりにいたのは見知らぬ男。戸惑う少女、かみ合わない会話、男が差し出す謎の薬。彼は一体何者なのか。父親はどこへいってしまったのか──。

それはいつもどおりの朝のはずだった…

ダレとカレも』は、違和感ばかりの朝に戸惑う1人の少女となって、いなくなった父親の行方を探すビジュアルノベルゲームだ。開発は、TearyHand Studioが手掛ける。

物語は、ある1人の少女が朝目覚めた場面から始まる。少女は、ベッドから起き上がって支度を始めるのだが、いつもはリビングにいるはずの父親の姿が見当たらない。父の代わりにいたのは、見知らぬ男性だった。

果たして父親はどこに行ったのか、この男性は何者なのか、それらの謎を解き明かすのが本ゲームの目的である。

▲いつもどおりの朝を迎えたようだが…

今回は、本作の製品版の冒頭部分である試遊版をプレイさせていただいた。先ほど、本作のストーリーを説明したが、本作は少女が目覚める前に、まったく別のシーンからゲームが始まる。

インターネット上でよく見かける「私はロボットではありません」や利用規約、「〇〇のタイルをすべて選択してください」という人間とボットを区別する認証システムやメールアドレスの入力画面、アンケートなどが続けて表示される。

しばらくすると、それらの画面表示に異変が起きる。例えば、メールアドレスの入力画面では文字をタイプしようとしても文字を打てなくなってしまう。筆者が戸惑っているうちに、少女が目覚めるシーンにつながった。

▲よく見かける画面だが…
▲これはいったい…!?
▲物語が始まったようだ…

本作の操作自体は、基本的に画面に表示される白い丸をクリックしていくという非常にシンプルなもの。そのシンプルさゆえに、各シーンをまるでコマ送りされたマンガのように1コマずつ触れながら、少女の身に起きている不思議なことを少しずつ感じられるようになっている。

例えば、朝に目覚めた少女が時計を見ると、文字盤にあるのは3本の長針のみ。画面に6時・7時・8時の選択肢が表示されるが、正解が…わからない!

▲時間がわからない時計

他にも、少女に歯磨きをさせるシーンがある。歯ブラシを持つ、歯ブラシに歯磨き粉を付ける、歯ブラシをくわえる、といった1つ1つの工程が白い丸をクリックすればできるので、順番を間違えないように白い丸をクリックしなければいけない。

このようなさまざまな仕掛けを解き明かしながら少女の生活を体験していくのだが、いずれも説明文はない。そのため、これは少女が何をするシーンなのか、白い丸1つをクリックすることで何が起こるのかを確認しながら、正しい白い丸をクリックしていく必要がある。この3つのステップをクリアしたときの「そうだったんだ!」というアハ体験が非常に心地よかった。

▲白い丸をクリックしたらなにが起こるのか確認しながら少女の朝支度を手伝おう
▲お父さんがいない!?

開発者インタビュー

最後までプレイした後、本作の開発者であるyona氏に話を伺った。本作は、yona氏にとって前作『In His Time』に続く第2作目で、音楽以外のすべてをyona氏が手掛けている。yona氏は、以前インディーゲームのパブリッシング業務に携わっていた。その中で、「いつか自分でもゲームを開発したい」と思うようになり、講談社ゲームクリエイターズラボへ応募したことが、ゲーム開発を始めるきっかけになったとのこと。

yona氏が初めてゲームをプレイしたのは小学校1年生のとき。父親が買ってくれた『スーパーマリオブラザーズ』が初めてプレイしたゲームタイトルで、ポケモンシリーズなども楽しんでいたという。一方で、yona氏が手掛ける作品は、そうしたゲームとは一線を画し、独創的な世界観が非常に印象的だ。その点について尋ねると、「プレイしてきたゲームからインスピレーションを得て制作するのではなく、自身の体験や感じたことを表現したい」と考えているからだそうだ。まず、描きたいストーリーがあり、それをどのような「遊び」体験として形にするかを考えていくのだという。

実際にyona氏の前作と本作をプレイして感じたのは、唯一無二のクリエイションであるということだ。まるで小説や映画、舞台、アート作品を鑑賞したときのように、ゲームの世界と自分の認識が混ざり合い、新たな気づきをもたらしてくれる——そんな感覚を味わった。

また、yona氏のゲームには、ゲームとしてのおもしろさはさることながら、日常のふとした瞬間にプレイ時の余韻がよみがえる特別な体験の種がたくさん散りばめられている。冒頭の「私はロボットではありません」という、ネットショッピングなどでよく目にする認証画像。今後、筆者が同じ画面を見かけたとき、本作を思い出して「この画面が動き出したらどうしよう」と妄想することになりそうだ。

そんな本作『ダレとカレも』は、2025年内に発売予定。プレイ時間は約1時間を想定しているとのことで、いろいろなジャンルのゲームをプレイしてきた方にこそおすすめしたいタイトルだ。気になった方は、今すぐウィッシュリストに登録しておこう。

Steam:ダレとカレも
いつもと変わらないはずの朝、少女が起きると父親がいなくなっていた。代わりにいたのは見知らぬ男。戸惑う少女、かみ合わない会話、男が差し出す謎の薬。彼は一体何者なのか。父親はどこへいってしまったのか──。
基本情報 ダレとカレも
開発 TearyHand Studio
販売 Kodansha
配信日 2025年予定 / 日本語有り
定価 未定(Steam

この記事で紹介されているゲーム

In His Time

アドベンチャー

インディー

カジュアル

日本語対応
¥580

ダレとカレも

カジュアル

インディー

シミュレーション

日本語対応