テディベアとして盲目の少女を手助けしよう。二人称視点で描かれる物語が新鮮な感覚を与えてくれる3DホラーパズルADV『Out of Sight』体験版レポート

Indie Gemは、リリースを控える期待の作品群から、明日を煌めく原石のようなタイトルを発掘し、体験版を元に紹介していくコーナー！

『Out of Sight』は、盲目の少女ソフィーがテディベアの目を通して世界を見ながら謎めいた屋敷からの脱出を目指す、ユニークな二人称視点で描かれる3Dホラーパズルアドベンチャーゲームだ。スウェーデンを拠点とするゲーム開発スタジオ"The Gang"が手掛ける。

ふと目覚めると、謎めいた屋敷に囚われていた少女ソフィー。盲目ゆえにどうしようもないと思われたが、ふとテディベア（クマのぬいぐるみ）の目を通して周囲の様子を見ることができると気づく。勇気を振り絞り、ソフィーはテディベアと共に屋敷からの脱出を目指すのだった。

Steam：Out of Sight

『Out of Sight』は一人称と二人称視点、そして魅力的な声優の演技をブレンドした、没入感満載のホラーゲーム。背筋が凍るような感情的な旅へとプレイヤーを引き込んでいく。

STEAM

本作のゲームシステムは、行く手を阻むさまざまな障害に対処しながら、最終的に屋敷からの脱出を目指すパズルアドベンチャーだ。基本的にはそのままでは進めないシチュエーションにおいて、パズル要素のあるオブジェクトを操作したり、アスレチックを突破したり、追跡者から身を隠したりしながら先へと進んでいくことになる。

子どもの体格だからこそ入り込める隙間をくぐり抜け、彼女を囚えた元凶と思しき屋敷の住人たちに気づかれないよう音にも注意を払うようなシーンなど、ホラーらしい雰囲気も十分。

こうした謎解きのスタイルには、ドキュメントなどからヒントを得て推理していくタイプと、物理的にオブジェクトを操作して乗り越えていくようなタイプがある。本作は後者で、近しい雰囲気を持ったタイトルとして『Among the Sleep』を思い浮かべる方もいらっしゃるだろう。

本作をユニークなものとしているのが、二人称視点（second-person perspectives）だ。本来は、小説やゲームブックなどの物語において「あなた」や「きみ」といった二人称代名詞を用いて、読者をダイレクトに主人公や主要な登場人物として扱う叙述の視点で用いられることが多い。

ゲームにおける視点とは、大きく分けて「視覚的な視点（カメラの位置や見え方）」と「物語的な視点（プレイヤーへの語りかけや関与のさせ方）」という2つの意味を持っているため、実装が難しくゲームに用いられることは珍しい。しかし、今作ではキャラクターとしての自我のないテディベアがプレイヤー＝あなたであり、彼女はあなたに「テディ」と話しかけてくるのだ。

そういうわけで、プレイヤーの立ち位置はあくまで視覚としての役割であり、自ら動くことはできず、操作キャラクターはソフィーとなる。ソフィーが移動する際には胸に抱きかかえられる形となり、彼女が何かを移動させたり、操作したりするようなシーンでは一旦椅子の上などに置かれる形でソフィーを見つめていく。

あなたは体を動かすことはできないが、置かれた位置から一人称視点でカメラアングルを動かすことが可能。その見える範囲内でソフィーを操作するのだが、動かせるカメラアングルには限界があるので、その制約も踏まえてどうすればいいかを考えるのが面白い作品だ。

開発チームのLukas氏によって今年2月にRedditに投稿された内容によれば、本作は学生時代の授業の一環として6週間で制作されたプロトタイプ版がベースとなっており、そのコンセプトと完成度の高さに注目したThe Gangからのオファーを受ける形で本格的に制作が始まった経緯があるとのことだ。

『Out of Sight』は、PC（Steam, Epic Game Store）・コンソール（PlayStation 5, Xbox Series X/S, Nintendo Switch）にて2025年5月22日より配信予定。製品版では日本語がサポートされる予定だが、現在Steamにて配信中の体験版には日本語が収録されていない点には注意してほしい。

また、VR対応の『Out of Sight VR』も同日よりPC（Steam）にて配信予定。後日、Meta QuestとPlayStation VR2向けにも配信が予定されている。