2025年5月24日、東京・新宿にてノベル限定インディーゲーム展示会イベント「DREAMSCAPE#3」が開催された。本稿では、当日展示された61タイトルの中から、筆者が注目する魅力的なタイトル『ショートケーキの埋葬』をご紹介しよう。




深夜の林に埋葬を
『ショートケーキの埋葬』は、声優・ささきのぞみ氏がキャラクターデザインを担当したクライムサスペンスビジュアルノベルゲームだ。開発はNANTEDOWが手掛ける。
本作は、主人公・荒川季節が死体を埋めるために深夜の林の中を走るシーンから始まり、予測不能な展開で物語が進行していく。今回は、本作の冒頭部分を試遊させていただいた。

21歳の社会人である荒川季節は、母親と二人暮らし。毎日遅くまでスーパーでアルバイトをしている。そんな季節が誰かの死体を林に埋めようとする場面から、彼がどんな環境でどんな人々に囲まれ、殺伐とした日々をどのように生きていくのかが、選択肢がない1本筋のストーリーで描かれる。
筆者が試遊した中で最も印象的だったのは、オープニング映像に至るまでの演出である。物語は、林の中を誰かが猛スピードで駆け抜けるシーンから始まる。その視点は走っている本人のもので、やがてその人物が本作の主人公・荒川季節であることが明かされる。
季節は、ビニールシートに包んだ死体を埋めるために林にやってきていた。だが、穴を掘っていると、そこには他の死体がいくつも埋められていることに気づく。なぜここに先客がいるのかと混乱していると、季節は何者かに後頭部を殴られてしまう。
そこからオープニング映像が始まり、スタッフクレジットが流れる。この演出に、筆者は強く心を奪われた。

表情で語るキャラクターたち
キャラクターデザインを手掛けたのは、声優・ささきのぞみ氏。『ソウルキャリバーV』のメインキャラクター・ピュラなどのゲームやアニメのキャラクターはもちろん、TVナレーションや脚本執筆なども手掛けている。彼女が描くキャラクターの特徴は、その豊かな表情である。
たとえば、季節が働くスーパーの店長・森山は、主人公の弱みにつけ込んで、賞味期限切れの惣菜を詰め直させる「闇バイト」を強要している。少し首をかしげたような姿勢、顔の細かいしわ、不自然なまでにぴっちり横ワケの髪型など、ビジュアルだけで「ただ者ではない」とわかるように描かれている。

冒頭のシーンに戻るが、何者かに殴られて意識を失っていた季節が目を覚ますと、彼は火葬場のロビーにいた。そこに現れたのは、清水莉央という女性。彼女は、その火葬場で働いているらしく、季節が埋めようとしていた死体を火葬しようと提案してくる。
普通なら警察に通報されてもおかしくない状況だが、彼女はなぜか火葬を勧めてくる。その理由は、製品版できっと明らかにされるのだろう。


「普段ゲームをプレイしない方にもプレイしてほしい」開発者インタビュー
物語の続きも非常に気になるところだが、本作を手掛けたNANTEDOWの齋藤瑠久氏に話を伺った。普段は映像製作会社で働く齋藤氏は、本作がゲーム開発1作目となる。
齋藤氏は、『STEINS;GATE』などのゲームが好きで、よくプレイしていたそう。本作を開発するにあたっては、舞台演出の手法を意識的に取り入れているとのこと。たしかに、冒頭からオープニング映像に至る導入部分は、舞台演出を思わせる構成となっている。普段あまりゲームをプレイしない方や、観劇が趣味の方にもプレイしてほしいという。
本作『ショートケーキの埋葬』は、2025年7月頃の発売を目指して鋭意開発中。プレイ時間は約5時間で、540円前後を予定している。本格派クライムサスペンスを味わいたい方は、ぜひウィッシュリストに登録を。現在公開中のデモ版でも、印象的な冒頭演出をそのまま体験できる。気になった方は、ぜひチェックしてみてほしい。
基本情報 | ショートケーキの埋葬 |
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開発 | NANTEDOW |
販売 | NANTEDOW |
配信日 | 2025年7月予定 |
言語 | 日本語有り |
定価 | 540円(予定)(Steam) |