『Seasonala Cemetery』は、とある墓地を舞台にした穏やかで心に響く体験をプレイヤーに提供するナラティブなウォーキングシミュレーターだ。
カナダ在住の2D/3Dアーティストとして『Celeste』などさまざまな作品に携わる個人ゲーム開発者のGabby DaRienzo氏を中心とした、複数のクリエイター(Kait Tremblay氏、Jen Costa氏、Nina Wong氏、halina heron氏、Mobeen Fikree氏、Jacquelin de Leon氏)が共同で手掛ける。
季節や時間帯、天候によって変化する墓地の静謐で美しい風景を探索しながら、そこでの出会いや行動を通じて描かれる人生や死をテーマにしたストーリーを見つめていこう。


穏やかな時間が流れる墓地を訪れよう
本作の舞台となるのは、静かな時間が流れる西ヨーロッパ風の墓地。やや起伏のある土地に不規則に墓石が並び、人の手によって最低限の管理はされているようだが、半ば自然と共生しているかのような光景を映し出している。
作中の時代背景は現代のようだが、入口のプレートからはここが1825年に設けられた「Seasonala Cemetery(シーズナラ共同墓地)」と呼ばれる場所であることがわかる。これは筆者が訳した便宜上の名称だが、同じ墓地を表す言葉として"graveyard"ではなく"cemetery"と書く場合は、特定の教会や宗教によらない共同墓地的な意味となるのでこう呼んで差し支えないだろう。

ゲームシステムとしてはウォーキングシミュレーターであり、プレイヤー自身の目線(一人称視点)で共同墓地の敷地内を徒歩で探索していく。敷地面積はさほど広くはなく、入口から突き当りまで数分程度で行き着ける程度の広さだ。
そこに立ち並ぶ墓石には1つ1つ碑文が刻まれていて、故人の氏名・生年月日・没年月日と共に、その生涯を表すような短いテキストやエピソードが読むことができる。平凡な一生を歩んだのだろうものもあれば、とある一家を襲った悲劇や、苦難を経ても最後には笑って旅立った生き様を示すような言葉もある。
詳細なバックストーリーが明かされるようなことはないので、プレイヤーは自分なりに想像して解釈していくことになるが、それぞれが小さな物語を持っていて、それが本作の雰囲気を形作っているかのようだ。


また、時折り墓地を訪れる人々との出会いもある。とはいっても、基本的にプレイヤーから積極的に会話するようなことはせず、インタラクトしても間接的な言葉が紡がれるだけだったりするのだが、どういう目的を持って墓地を訪れたのかは垣間見える。
ジョキングのコースの一部にしている女性や、友人同士で訪れた子どもたち、野生のアライグマは凶暴だが愛らしいと話す墓地の管理人。彼らの存在が何か驚くようなストーリー展開を提供してくれるわけではないのだが、訪れる人々がいることでここが地域のコミュニティの一部であることを表しているのだろう。

現実の季節と時間によって変化する光景
本稿の冒頭で季節や時間帯が変化していくと書いたが、本作にはプレイヤーのシステムの実際の日付と時間を利用して、ゲーム内の環境が動的に変化していくユニークなメカニクスが実装されている。夏には青々とした緑があふれ、冬には静かで雪に覆われた風景と出会えるのだそうだ。
今回、筆者は2025年6月初頭の日中帯にプレイしているので作中の季節は初夏だった。この先またいつかゲームを起動してみれば、季節の移ろいとその時に墓地を訪れている人々との新たな出会いを体験することができるのだろう。個人的には、しんしんと雪が降る真夜中の冬の光景をぜひ実際に見てみたい。

『Seasonala Cemetery』は、PC(Steam, itch.io)にて2025年6月8日より無料で配信中。同日の日本時間深夜にYouTubeで放送されたインディーショーケース『Wholesome Direct』に合わせて公開された形だ。
日本語はサポートされていないものの、墓石に刻まれたテキストやエピソード、墓地を訪れる人々との会話は短いものなので、英語に明るくなくとも翻訳ツール等を使うことで十分に雰囲気を楽しむことができるだろう。
▲Wholesome Direct - Indie Game Showcase 6.7.2025 - YouTube
基本情報 | Seasonala Cemetery |
---|---|
開発 | Gabby DaRienzo Kait Tremblay Jen Costa Nina Wong halina heron Mobeen Fikree Jacquelin de Leon |
販売 | Gabby DaRienzo |
配信日 | 2025年6月8日 |
言語 | 日本語無し |
定価 | 無料(Steam) |
無料(itch.io) |