Indie Gemは、リリースを控える期待の作品群から、明日を煌めく原石のようなタイトルを発掘し、体験版を元に紹介していくコーナー!
『ユメザメの仮説』は、主人公と恋人のデートを過去に戻ってやり直し、別れてしまう運命をプレイヤーの力で変えていく、マルチエンディング形式の恋愛アドベンチャーゲーム。謎が潜む離島を舞台に、10日間の高校生活をタイムループするアドベンチャーゲーム『春待ちトロイダル』を手掛けた、ゲーム制作サークル"さめさめサメーション"こと、さめさめくん氏の新作だ。
本稿では、2025年6月10日よりPC(Steam)にて公開されている体験版の内容についてご紹介しよう。


過去へ戻って振られてしまう未来を変えよう
本作の主人公は、大学3年生の後半に差し掛かった男子学生"■■"。彼には、付き合い始めたばかりの彼女"美織"がおり、幸せな大学生活を過ごしていた。だが、就活が始まると互いに疎遠となってしまい、デートで行った水族館での些細な喧嘩をきっかけにして、2人は結局別れることになってしまう。
そんな悲しい運命を変えるため、きっかけとなった水族館でのデートを過去に戻ってやり直し、思い出を書き換えて、美織との恋愛をより良い方向へ変えていくことが本作の目的だ。
ゲームは、デートをやり直す横スクロールアドベンチャーパートと、主人公と美織たちの日常を描く選択方式アドベンチャーのパートに分かれる。

デートをやり直すパートでは、2人で水族館を歩いて回れる。デート中は水槽や展示物を見て回ったり、ガチャガチャを回したり、自販機で飲み物を買ったりと自由に行動できる。このときの美織との他愛ない会話からも、幸せそうな恋人同士という空気感を感じることができ、やはり失恋の運命は書き換えたくなってくる。
このパートでカギを握るのが、2人の思い出となる写真を撮ること。体験版では、水族館の中で5枚の写真を撮ることができるが、その中から1枚を選んで残すことになる。どの写真を残してもゲームオーバーにはならないが、より深刻な結末を迎えることもあったり、喧嘩後の対応が少し変わったりと、その後の恋愛模様が幾重にも分岐していく。
被写体は自由で、一緒に写っているものによって、美織の感想も変わってくるという芸の細かさもポイント。水槽を泳ぐさまざまな魚はもちろん、展示された絵画や剥製にいたるまで、美織が感想を言ってくれる対象は多岐にわたる。ついついこういったコメントをコンプリートまで回収したくなるゲーマーとしての心をくすぐる要素だ。

リアリティある大学生活の描写
水族館のデートをやり直した後は、その後の日常を描く選択方式アドベンチャーのパートへと移る。ときおり、選択肢が発生するものの、本パートは基本的にテキストを読み進めることが中心となる。

この会話パートで、特に注目したいのが大学生活の描写。いずれもリアリティが非常に高く、授業の教室移動先を聞いてみたり、長期休み前後でソワソワしたりといったように、日常がありありと蘇るような描写は、大学生活を経験してきたプレイヤーとの距離をグッと近づける。
一方で、本作の物語は美織に振られてしまうところから始まるので、内容によっては心を抉ってくる。たとえば、物語冒頭の就活が始まり互いが疎遠になっていくという過程は、未読スルーといった思わずやってしまいそうな行動から、それぞれの心理描写まで、とても丁寧に描かれている。読みながら思わず、大学時代の友人と、自然に連絡を取り合わなくなってしまった記憶を思い出してしまった。

また、本作に散りばめられた謎の数々も、物語にアクセントを加えている。たとえば、主人公と美織が会話ですれ違うシーンは本作の中でも印象的な場面だが、その中で主人公の記憶が無いという場面がいくつか見られた。単なる記憶違いではなく、モノローグから察するところ、どうやら本当に記憶が欠落しているようだ。
消えてしまった主人公の記憶や、そもそも、何故過去へ戻ることができるようになったのかなど、ついつい考察してしまうような要素の数々も、物語への没入感を高めてくれる。
『ユメザメの仮説』は、2025年の発売を目指して鋭意開発中。現在、Steamにて体験版が配信されているので、2人がハッピーエンドに至る仮説を検証してみてはいかがだろうか。
基本情報 | ユメザメの仮説 |
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開発 | さめさめサメーション |
販売 | さめさめサメーション |
配信日 | 2025年予定 |
言語 | 日本語有り |
定価 | 未定(Steam) |