アトゥエル川の記憶と声の旅。自然と共鳴する詩的ドキュメンタリー『Atuel(アトゥエル)』プレイレポート

朝比奈 / Asahina

2025/07/08

Atuel(アトゥエル)』は、アルゼンチンのクージョ砂漠地帯の地質と生態系をモチーフとした、アトゥエル川流域の美しく幻想的な風景の中を旅するシュルレアリスム・ドキュメンタリーゲームだ。アルゼンチンのゲーム開発者、芸術家、プログラマーによる協同組合"Matajuegos"が手掛ける。

アンデス山脈の雪解け水を水源とする河川「アトゥエル川(Río Atuel)」を舞台に、自然と人間との関係性に焦点を当て、シュールなビジュアルと実在のインタビューを融合させるユニークな表現を試みた作品を紹介しよう。

Steam:Atuel
『アトゥエル』は超現実的要素を加味したドキュメンタリー・ゲームです。プレイヤーであるあなたは、アルゼンチンのクージョ砂漠地帯の地質と生態系をモチーフにして作られた、美しく幻想的な風景の中を旅していくこととなります。 Atuel の自然環境の一部であるさまざまな動物や要素に変身しながら進んでいきます。

川の記憶をたどる旅に出よう

本作は、アトゥエル川流域の実際の地形にインスパイアされた抽象的・幻想的なビジュアルの中を、川を流れる水、雲、鳥、魚、キツネといった動物や自然そのものへと姿かたちを変えながら、流れをたどるように歩みを進めていく。

操作そのものは非常に簡単で、進行方向に向かってキーボードやコントローラーで移動させる程度の動きはさせるものの、基本的にはリニアに進んでいくだけのウォーキングシミュレーター形式だ。アンビエントなBGMが流れる雄大な自然の風景の中を、ゆったりとリラックスしながら進んでいくが、いわゆる雰囲気ゲームと呼ばれるものとは違った趣きがある。

ユニークなのは、歴史家・生物学者・地質学者・地元住民など、さまざまな視点からの実在のインタビュー音声がゲーム内に織り込まれていること。プレイヤーは彼ら語り手の声から、アトゥエル川の過去・現在・未来を体験していくこととなる。

それは、自然そのものに対する精霊信仰(アニミズム)的な向き合い方であったり、地質学的な観点からの河川の成り立ちだったり、歴史的に地域社会に対してどのような恩恵を与えてきたのかといったことだったりする。気候変動やダム建設など、人間という存在の営みが環境に与える影響もまた語られるが、あくまで歴史的事実やカルチャーが淡々と語られていくスタイルだ。

まるで、博物館でオーディオガイドを聴いているような気分にもなってくるが、アカデミックなディスカバリーツアー的なものかと言うと、もう少し距離感が近い。また、プレイヤーに対して何らかの思想を押し付けるような意図も感じられない。

自然とははるか昔からそこにあり、アトゥエル川もまたその1つに過ぎない。約30分間の旅路を終えたときに、そこから何を感じ取るかはプレイヤーに任されているのだろう。本作はそんな作品だ。

Atuel(アトゥエル)』は、PC(Steam, itch.io)・Android端末(Google Play)にて無料で配信中。itch.io版は2022年から配信されているが、今回新たに2025年6月30日よりSteamとGoogle Playでも配信が開始された形となる。

なお、ゲーム内に流れるインタビュー音声の字幕テキストを含む日本語翻訳は、英日ゲーム翻訳者の伊東龍氏が担当。ゲーム全体のボリュームとしては短いながらも、語り手たちの言葉の節々を感じ取れるような印象だ。

ドキュメンタリー形式というユニークなアプローチで描かれる本作に興味をもっていただいた方は、ぜひ30分間の旅を体験してみてはいかがだろうか。


基本情報 Atuel
開発 Matajuegos
販売 Matajuegos
配信日 2022年9月14日(itch.io)
2025年6月30日(Steam, Google Play)
言語 日本語有り
定価 無料(itch.io
無料(Steam
無料(Google Play

この記事で紹介されているゲーム

Atuel

カジュアル

無料プレイ

インディー

アドベンチャー

日本語対応