2025年8月3日に、東京・浜松町にて開催された「東京ゲームダンジョン9」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。
なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。


草原から遺跡へ、昼から夜へ――変化し続ける無限の冒険
『Ad Aquilonem - セトと風の遺跡 -』は、耳としっぽを持つ獣人・セトを操って冒険を繰り広げる、シンプル操作のランアクションゲームだ。日本のゲーム開発スタジオ"エム・ビー・エーインターナショナル"が手掛ける。
誰に命じられるでもなく、自らの意志で旅を続ける冒険者。プレイヤーは、黒い毛並みを持つオオカミのような獣人の主人公・セトとなり、風に導かれるように走り続ける彼の冒険へと寄り添っていくこととなる。


今回会場で試遊できた内容は、すでにリリース済みの本作をそのまま体験できるものだった。
本作のゲームシステムは、横スクロールのステージをキャラクターが"走る(ラン)"ことを主軸とした「ランゲーム」と呼ばれるもの。キャラクターは基本的に進行方向へ自動で走り続け、止まったり戻ったりすることはできない。
プレイヤーは攻撃やジャンプといった限られたアクションを駆使し、モンスターを倒したり障害物を避けたりしながら冒険を進めていく。操作自体はシンプルで直感的だが、敵の動きや障害物の配置に合わせて、適切なタイミングで入力する判断力と反射神経が求められるため、シンプルながら奥深いプレイ感を味わえるところが特徴だ。

もちろん、シンプルだからといって単調なわけではない。ゲーム中にはしっかりと変化を感じられる仕掛けが用意されている。
攻撃手段は片手剣を振るうのみだが、冒険の途中で出現する「バフ(強化)アイテム」を取れば一定時間さまざまな効果が発動する。剣に炎の力を宿して遠くまで攻撃できるようになるものから、風をまとってコインを手元に引き寄せられるものまで多彩だ。
さらに、冒険の舞台も草原地帯、荒涼とした岩肌の大地、そして謎めいた遺跡内部など次々と表情を変えていく。進行にあわせて昼から夜へと時間が移ろうのも見どころで、景観の変化を楽しめる。一方で、夜が近づくにつれてモンスターの数や強さが増し、歯ごたえのある戦いが待ち受けている。

本作はいわゆる「エンドレスラン」タイプで、明確なゴールは存在しない。プレイヤーはスコア(コイン)を稼ぎながら、できる限り走り続けていくことが目的になる。
追うべきストーリーがないのはやや物足りないかもしれない。だが、そのぶん短いスキマ時間でも手軽に遊べるうえ、やり込めばしっかりとした歯ごたえを感じられる――そんな気軽さと挑戦性の両立こそが本作の魅力という印象だった。
セトを撫でて癒やせる「なでなでモード」も魅力
もうひとつ、本作ならではの魅力を付け加えておきたい。それが、主人公・セトの存在だ。
一口に「獣人」といってもさまざまな段階があるが、彼の場合は獣としての特徴が色濃い。犬型を思わせる鋭い顔つき、金色に輝くつり目、先端が尖った触れがたい雰囲気のオオカミ耳、そして黒い毛並みに覆われた全身――その姿は力強くも孤高を感じさせる。

キービジュアルからはクールな印象を受けるが、実際には意外な一面もある。冒険に出発する前には「なでなでモード」を選択でき、アナログスティックでカーソルを合わせれば自由に撫でることが可能なのだ。撫でる部位によって反応や表情が変わり、思わず笑みがこぼれるような可愛らしさがある。
さらに、撫で続けることでゲージが上昇し、満タンになると「バフアイテム」を持った状態で冒険を開始できる。ハイスコアを狙ううえで有利になる小さなおまけ要素だが、やはり最大の魅力は"撫でられること"自体。ケモナー垂涎のアピールポイントと言えるだろう。
短期間で生まれた新作ランゲーム。その裏側と"獣人"へのこだわり
今回、東京ゲームダンジョンの出展ブースでは、エム・ビー・エーインターナショナル代表の杉橋氏にインタビューさせていただく機会を得られた。
本作はもともと、別のプロジェクトで制作途中のまま完成に至らなかったゲームのアセットやキャラクターをベースとしており、現在のバージョンはプログラマー2名がわずか3ヶ月という短期間で開発したものだという。

先述のとおり、ゲームの基本設計は「エンドレスラン」で、ステージは自動生成され、スコアをできる限り稼いでいく終わりのないプレイを楽しめる。さらに、プレイヤーのスキルレベルに応じて難易度が細かく調整されている点も特徴だ。
実際、最初の1周目はチュートリアル的な位置づけで、モンスターはかなり弱めに設定されている。これはキャラクターの魅力に惹かれつつも、アクションが得意ではないプレイヤーのために用意された配慮だという。
しかし、2周目に入ると背景が夕方から夜へと移るにつれて難易度が上昇。敵はよりアグレッシブになり、落とし穴の幅も広がって二段ジャンプを駆使しなければ越えられなくなるなど、さらなる挑戦が待ち受けている。

最大のアピールポイントは、やはり主人公セトの「なでなでモード」だ。開発段階から「絶対に外せない要素」として盛り込まれており、ケモナーのファン層がこれだけでも満足できるような仕上がりを目指したとのこと。
ランゲームとしての王道の楽しさに加え、「獣人のビジュアルに惹かれる人には必ず響くはず」という自信をのぞかせていたのが印象的だった。一方で、その魅力をどう多くの人に伝えていくかという難しさもあるそうで、今後は東京ゲームショウをはじめとした各種イベントで積極的に露出を図っていきたいとのことだった。

『Ad Aquilonem - セトと風の遺跡 -』は、コンソール(Nintendo Switch)にて2025年7月28日より配信中。
なお、Steamなど他のプラットフォームでの展開については、先述のとおりまだ知名度向上を図る段階にあるため検討中とのことだ。
基本情報 | Ad Aquilonem - セトと風の遺跡 - |
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開発 | エム・ビー・エーインターナショナル |
販売 | エム・ビー・エーインターナショナル |
配信日 | 2025年7月28日 |
言語 | 日本語有り |
価格 | 2,980円(Nintendo Switch) |
ライター:朝比奈
編集:LayerQ