現実ではああも捗らないのに、ゲームでの“片付け”とはどうしてこんなに楽しく心地よいのだろう? 『夢物語の街』は、のんびりとした雰囲気が魅力の片付け&インテリア系シミュレーションゲームだ。開発・パブリッシングともに元气弹工作室(GD Studio)が務めている。
「片付け」を題材とした『Unpacking』ライクな本作だが、独自の探索要素と世界観が好評を博し、本稿執筆時点で“圧倒的に好評”ステータスを獲得している。序盤を実際にプレイしてみた感触と交え、どのような魅力を持った作品なのか紹介していこう。


依頼をこなして自分の部屋もかわいく
『夢物語の街』では、プレイヤーは新人の「何でも家政婦さん」として、街の住民から届くさまざまな依頼をこなしていくことになる。引っ越しや開店準備の手伝い、使われなくなった屋敷の掃除、果ては猫探しなど、その内容は多岐にわたる。用意された家具や雑貨を並べていくのが基本的な流れだが、ゴミを捨てる・汚れを拭き取るなどの作業が中心となる依頼もあり、内容によって緩やかながらプレイフィールに変化がもたらされるかたちだ。


本作の特徴のひとつとして、アイテムの配置に指定や制限がほとんどないことが挙げられる。一部「クライアントの指示どおりに配置する依頼」なども存在するが、基本的には「各部屋内に置いてほしいアイテムの数」さえ満たせば、物自体はどこに置いても問題ない仕様。パズルとしての難易度は低く、そのためプレイヤー個々人がこだわりを持った部屋づくりに励むことができる。
そうして依頼をこなしたり、会社から支払われる報酬で買い物をしたりすることで、家具や雑貨などの各種アイテムがアンロックされていく。それらを用いてプレイヤー自身の部屋を自由にコーディネートできるのだ。多数あるアイテムはどれもかわいらしく描き込まれており、テレビや照明などにはオン・オフの切り替えで生活を感じられるギミックも。いわゆる「無個性」な主人公なので、その性格や暮らしぶりを想像しながら部屋を作りあげていく、といったロールプレイ的な楽しみ方もできるだろう。

整理整頓や掃除、インテリアなど、コツコツ取り組めて没頭してしまう要素がぎゅっと詰まっている本作は、まるでかわいいおもちゃ箱のような印象だ。
この街は、すこしおかしい
『夢物語の街』の大きな特徴は、舞台となる「ウィスパリングタウン」を自由に探索できることだろう。マップの広さは想像以上で驚かされた。猫を撫でたり、住民と会話したり、獅子の像が居眠りしていたり、なぜか公衆電話が鳴ったり……発見やインタラクティブ要素にあふれ、遊びごころをくすぐられる仕上がりとなっている。ストーリーを進めるうえでも、探索には大きな意味があるように感じた。

特定の時間と場所で発生するイベントも存在するが、本作は時間の進みが非常に早いため、回収のために長時間待機するような場面もなく快適だ。ちなみに、依頼をこなす上で時間的な制約はまったくなく、プレイを焦る必要はない。依頼途中で別の依頼を進めることもできるので、のんびりとくつろいでプレイしよう。
しかし、リラックスしているプレイヤーにジワジワと忍び寄るような「不穏さ」が、この街にはつねに息づいている。クライアントの新居に、街の大きな博物館に、もしかしたらあなたが所属する会社にも。探索や依頼のあいまに、思わずぞっとしてしまうような演出が見られることがある。


得体のしれないなにかが奥底に横たわっている気配を感じたとしても、「家政婦さん」の仕事は謎を追うことではなく、街の住民たちの助けとなることだ。依頼のたび必ずしも何かが明らかになるわけではないので、もう一件、もう一件と依頼を請けてストーリーを進めたくなったり、おのずと街の隅々までを探索したくなったり――インテリア要素だけでなく、ストーリー面でもボリュームの大きさを予感させられる。
そんなミステリーとしての面白さも持ち合わせつつ、もちろん片付け&インテリアゲームとしてのやりごたえ・心地よさもきっちり備えた本作。夢中で部屋と向き合って、不意に訪れる不可解な現象にピリッと背筋が伸びる……そんな緩急ある体験が非常に魅力的だ。気になった方はぜひこの街を訪れて、あなた自身の目で街の不思議を見つけてみてほしい。そのとき、街もあなたを見ている。

『夢物語の街』は2025年8月27日よりPC(Steam)にて発売中。言語は英語、日本語、中国語(簡体字・繁体字)に対応している。
| 基本情報 | 夢物語の街 | 
|---|---|
| 開発 | 元气弹工作室(GD Studio) | 
| 販売 | 元气弹工作室(GD Studio) | 
| 配信日 | 2025年8月27日 | 
| 言語 | 日本語有り | 
| 価格 | 1,700円(Steam) | 
ライター:しわしわ 編集:nawa












