2025年8月3日に、東京・浜松町にて開催された「東京ゲームダンジョン9」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。
なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。


打鍵は呪文。タイピングが戦場を変える
『Typomagical(※)』は、キーボードで呪文を唱えると属性や魔法が組み合わさり、プレイヤーだけのオリジナル魔法が発動する、新感覚の呪文詠唱タイピングローグライクだ。日本のゲーム開発スタジオ"Sigcom"が手掛ける。
舞台となるのは、ヘンテコなモンスターと数々の謎が待ち受ける「時空の塔」。戦いの最中に新たな魔法や呪物を閃き、それらを組み合わせていくことで戦い方は劇的に変化していく。思いもよらぬ組み合わせが生まれ、独自の戦略が形になっていく過程は本作ならではの醍醐味だ。
※「東京ゲームダンジョン9」出展時のタイトルは『Bit Mage』だったが、後に『Typomagical(タイポマジカル)』に改題されている。


本作はいわゆる"ヴァンサバライク"に連なる作品。インスパイア元となった『Vampire Survivors』は、シンプルな移動操作だけで自動的に攻撃が繰り出される仕組みを持つローグライクアクション。プレイヤーは敵を倒して得た経験値でレベルアップし、武器やパワーアップを選択していく。やがて画面を埋め尽くすほどの敵に立ち向かいながら、強化を重ねて戦況を押し返すという、緊張感と爽快感の両立が魅力だ。
『Typomagical』はそのエッセンスを受け継ぎつつ、攻撃手段として「タイピングによる呪文詠唱」という仕組みを取り入れることで、ジャンルの中でも際立つオリジナリティを発揮している。正確さと素早さを両立させた緊張感は、他ではなかなか味わえない。

キーボードを打つという特性上、自動攻撃というメカニクスは存在しないが、プレイヤー自身のタイピング力が物を言うのは大きな特徴だ。例えば、基本呪文である「ball(ボール)」と打つと、素早く魔法の弾を放つことができるが、その威力は低くけん制程度にしかならない。
そこで、別の魔法「fire(ファイア)」と組み合わせれば、敵を炎上させつつスリップダメージを与える「fireball(ファイアボール)」を放つことができる。

このように名詞+名詞=複合名詞の組み合わせによってさまざまな魔法を駆使していくのだが、呪文が長くなればなるほどタイピングに時間がかかり、スキが生まれることになる。
さらに呪文詠唱中――すなわちタイピング中はその場に足を止めなければならないため、迫り来る敵を前にいかに打ち終えるかという立ち回りも重要だ。

今回の試遊では開発段階のビルドを一部体験できただけだったが、簡単な単語のはずなのに意外と焦らされ、うまくタイピングできない緊張感があった。呪文のバリエーションが増えれば増えるほど強力な魔法を放てるようになるが、そのぶんリスクも大きくなっていくのだろう。
タイピングで呪文を唱える、というテーマだけではない奥深さも兼ね備えた本作の完成形がこれから楽しみだ。
開発インタビュー:斬新なシステム誕生の背景
今回の東京ゲームダンジョンでは、シグナル・コンポーズ株式会社の代表である大和比呂志氏からお話を伺う機会を得られた。
開発は今年に入ってから本格的に始まったが、実は一度原型を捨てて作り直し、わずか1ヶ月で現在の体験版に仕上げたという。驚くべきスピード感で完成度を高めてきた背景には、「東京ゲームショウ出展を見据えて、試遊してもらえる形をまず作りたかった」という強い意欲があったそうだ。

ゲームの根幹となる「タイピングで呪文を使用する」というアイデアは、「魔法使いなら呪文をちゃんと唱えるべき」という直感から生まれた。音声入力では難しいが、ゲームならではの操作としてタイピングが最適だと考えたという。
従来のタイピングゲームとの違いについては、「決められた単語を速く打つのではなく、どの呪文を選ぶかという選択の部分に戦略性がある」とのこと。短い呪文は即応性に優れるが威力は低く、長い呪文は強力な代わりに詠唱のリスクが大きい――この設計によって、単なる入力ゲームではなく、魔法を唱えている感覚が強く味わえる作品になっているのだ。
『Typomagical』は、PC(Steam)でのリリースに向けて鋭意開発中だ。
基本情報 | Typomagical |
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開発 | Sigcom |
販売 | シグナル・コンポーズ株式会社 |
配信日 | 未定 |
言語 | 日本語有り(※) |
価格 | 未定(Steam) |
※Steamストアページの対応言語リストには日本語が含まれていないが、作中では呪文の効果などが日本語で表記されていたことを確認している。
ライター:朝比奈
編集:LayerQ