火とは人々の暮らしや安心の象徴である。薪が燃えていくパチパチという音に癒やしを感じた覚えがある人も多いのではないだろうか。そんな火を題材とする『Back to Hearth』は、厄災に見舞われたウクライナの村を修復して回る、コジーな一人称探索ゲームだ。プレイヤーはローポリで描かれる秋めいた村を元通りに片付け、暖炉に火を灯すことで、少しずつ住人を呼び戻していく。開発はPodoba Interactiveがおこない、パブリッシングをMarevo Collectiveが務め、日本語翻訳はようげ氏が担当している。2025年9月26日にPC(Steam)にて発売された。
本稿では、レビューキーを提供いただきプレイした筆者が、本作のプレイフィールや独自の魅力をお伝えしていこう。

のんびりと村を修復していこう
まず、プレイヤーの目に映るのは、荒れ果てた家屋とその庭だ。主人公の目的はそれらを修復して村に人々を呼び戻すことである。探索してハンマーやロープなどの修理ツールを見つけ、壊れた部分をゆっくり直していこう。すべてを修復すると家の中の暖炉に薪をくべて火を灯すことができ、住人が帰ってくるムービーが流れる。
本作はチャプター形式となっていて、1チャプターにつき1軒を修復し、家族が戻ってきたのを見届けると次の家へ……と繰り返していく流れだ。一軒ごとのマップやボリュームは大きくなく、気楽に起動してのんびり取り組める。ただし、チャプター途中でのセーブができない点には注意しよう。

壊れた階段を直したり、割れた破片をほうきで片付けたり、ロープを結び直したり……「修復・片付け」にはさまざまな内容がある。本作の大きな特徴は、その修復作業を簡易的にあらわすミニゲームだろう。作業内容のイメージに合わせたシンボルが画面に浮かぶので、プレイヤーはそれをドラッグでなぞることで作業を完了させていく。きれいになぞるのは意外にむずかしいが、判定は緩く失敗とみなされることはそうそうないので安心だ。

総じて、ゆるい姿勢でのんびり向き合えるシステムとなっている印象。寝る前のちょっとした隙間時間などにおすすめな、静かで穏やかな体験が特徴だ。
穏やかな癒やしと落ち着きの体験
全編を通して、癒やしを感じる要素が随所に見受けられる本作。中でも特筆したいのは、上記ミニゲーム中に流れてくる作業音だ。木材を打ち付ける音、ロープが擦れる音やキュッと引き結ばれる音……マウスをクリックしているあいだ作業内容に合わせたSEが流れるのだが、これが非常に耳に心地よいものとなっている。BGMはなく環境音だけが聴こえてくることと相まって、どこまでもナチュラルな空気感が終始漂っていた。目の前に佇む廃墟とあわせて、“自然”に対してどこか不安を煽られるような場面もある。フラットで素朴な作風が、「かつてのささやかな暮らしを取り戻す」というテーマによく寄り添っていた。
また、本作にはちょっとした置き物や飾りなどにインタラクトすることで、関連する思い出を主人公が語ってくれるギミックもある。

どんな家族がどうやって暮らしていたか少しずつ知りながら、彼らがまたここで暮らせるようにのんびりと家や庭を片付けていき、最後には暖炉に火を灯す。帰ってきた家族が、その火を囲みながら、これからのことを話し合うのを見守る……ときに切ない、ノスタルジックでちいさな希望が見えてくるようなストーリーもまた、心地よい落ち着きを感じさせてくれた。
火が灯ると安心できるだけでなく、誰もいない家にも生活感が生まれる。火は人の気配や暮らしの象徴であるとしみじみ感じられた。落ち着いてゆったり静かに向き合える本作は、まさに焚き火そのもののようなゲームなのだ。

ひとつ挙げるとするならば、作業に必要なツール類が背景やほかオブジェクトとグラフィック的に差別化されていないため、小さなものは見落としやすいという点はある。クリアを目指してサクサクプレイするよりも、のんびりと秋の静けさに浸りながら、ゆったりした構えで探索していくのがおすすめと言えるかもしれない。
『Back to Hearth』は9月26日よりPC(Steam)にて販売中で、英語・日本語・ウクライナ語などをはじめ10言語に対応。静かな秋の夜にぴったりな、しんみりと浸れる一作だ。気になった方はぜひ手に取ってみてほしい。

| 基本情報 | Back to Hearth |
|---|---|
| 開発 | Podoba Interactive |
| 販売 | Marevo Collective |
| 配信日 | 2025年9月26日 |
| 言語 | 日本語有り |
| 価格 | 529円(Steam) |
ライター:しわしわ 編集:LayerQ
