荒野をドライブする旅路は“洋画らしさ”満点。妻を亡くした男が存在するはずのないUFOを探し求めるアドベンチャー『I Saw a Flying Saucer』プレイレポート【TGS2025】

レイリー

2025/10/29

2025年9月25日~28日に、千葉県・幕張メッセにて開催された「東京ゲームショウ2025(以下、TGS2025)」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。

なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。

TOKYO GAME SHOW 2025 - 東京ゲームショウ2025
延べ600万人以上が来場した日本最大級のゲームの祭典!幕張メッセにて9/25-28にて開催!今年のテーマは「遊びきれない、無限の遊び場」。

存在するはずのないUFOを探し求める旅へ

荒野の真ん中に敷かれた誰一人走っていない道。そこを一台の車が走り抜けていく。車内ラジオから流れるのは、どこか懐かしい音楽と、ノイズ交じりの意味深な放送。そんな最高の“洋画らしさ”を体験できた作品が、『I Saw a Flying Saucer』だ。

『I Saw a Flying Saucer』は、妻を亡くした男が存在するはずのないUFOを探し求めて旅をしていくインタラクティブ・フィクション型のアドベンチャーゲーム。インディーゲームレーベルMidnight Peppermintによって開発が手がけられている。

本作は主人公となる男の視点から、70年台のアメリカ風の土地を舞台に、さながら洋画のような雰囲気で物語が語られていく。旅の道中は車を運転していき、目的地に着いたらポイント&クリック形式で探索していく。会話中の選択肢はあるが物語上大きな分岐はなく、一本の物語を楽しんでいく形となるようだ。

今回遊ぶことができた体験版では物語の一部分をプレイすることができたので、その内容についてご紹介しよう。

Steam:I Saw a Flying Saucer
妻を亡くした男が、存在するはずのない UFO を探し求めるインタラクティブ・フィクション。

ゲームは車内から始まり、ラジオやグローブボックスなどをクリックして調べることができる。ボックス内には亡くなった妻のものと思しき手記があり、最初は微笑ましい恋愛記録だったものが、日数が経つにつれ様子がおかしくなっていくさまが描かれている。

ラジオも何やら意味深な情報を伝えており、不穏さがどことなく漂うが、それとは裏腹に車外の荒野は静寂に包まれている……という本作の雰囲気もなんだかゾクゾクとしてしまう。

もちろん車の運転もできるが、まずはエンジンキーをドラッグ操作で回さないとエンジンがかからない本格的な仕様となっている。エンジンをかけたらアクセル、ブレーキをクリックすることで速度を調整し、ハンドルをドラッグ操作して車を運転していく。エンジン音のレトロなサウンドが心地よく、ドライブしているだけでも世界観へ浸ってしまう。

車の挙動はやや癖が強いが、どんな運転をしても事故を起こしてしまうということはないので、あくまで車を運転する雰囲気を純粋に楽しむことができる。時間制限なども特にないので、ゆったり運転してもいいだろう。

一定距離車を運転すると目的地に辿り着くことができ、今回の体験版ではガソリンスタンドへ立ち寄るシーンが描かれていた。ガソリンスタンドでは、ポイント&クリック形式で主人公を誘導して気になる場所を調べることができた。クリックした地点へややゆっくりと主人公が動いていく様子は、往年のアドベンチャーを思い出させるつくりとなっており、このあたりもノスタルジーを感じる。

また、本作で特徴的なのはやはりドット絵の質感だろう。近年は色数に制限を設けず色彩豊かなドット絵の作品が主流だが、本作は非常にクラシックな色味をしている。それも日本の旧作ゲームのドット絵──というよりは、80年代に登場したAtari 2600に代表される海外レトロタイトルのアートワークに近しい印象を受けた。

これが本作の世界観と非常にマッチしており、荒野をあてもなくドライブしていくという情景に対してさまざまな想像の余地を与えてくれる。ラジオから流れてくるノイズ交じりの架空音声や、車のエンジン音といったサウンド面もレトロ感にあふれており、当時の質感を再現するというこだわりを感じられる。

▲本作が醸し出す"洋画らしさ"あふれるセリフ回しも魅力的

一方で、これも往年の作品らしさではあるが、操作のチュートリアルなどは現時点でなく、導線は最小限となっていた。プレイヤー自身が手探りで試行錯誤することが主体となっていた分、普段入りがちな説明パートといった余計な情報を抜きにして、ゲームプレイへ浸れるという魅力にも繋がっている。

総じて、サウンド面からアートワークに至るまで細部まで一貫してこだわり抜かれており、洋画のような世界観の構築に一役買っている。そうして作られた世界で、プレイヤー自身の操作でじっくり物語を動かしていくという「インタラクティブ・フィクション」のジャンルに違わない期待感を持たせてくれる作品となっていた。

制作環境は1bit?

本作のグラフィックとプログラミング面を担当するdeadlyyucca氏にお話を伺うことができたので、最後にそちらもご紹介しよう。

経済産業省が主導するゲーム分野のスタートアップ創出事業「創風」の採択タイトルとして出展されていた本作だが、元々創風へ応募するためのタイトルとして開発が始まったそう。deadlyyucca氏は趣味でゲーム制作を10年以上行っており、そこで培った経験値をもとに本作の開発を進めているようだ。

レトロPC風のグラフィックもこだわって作成しており、制作中はなんと背景色と黒の2色のみという1bitスタイルでドット絵を描いているとのこと。実際の色やノイズ風の演出はシェーダーで付加しているそうだ。

試遊台では特別に、シェーダーをかける前のグラフィックを見せてもらったが、1bitで描かれたドット絵はまた違った味を醸し出していた。願わくば、こちらのグラフィックでもプレイしてみたい……! というワガママな気持ちさえ沸いてしまったくらいに、どちらのドット絵も魅力的に映った。

また、本作のドット絵は前述のとおり、海外の作品を意識してのアートワークとなっており、日本のドット絵文化との違いは意識しつつ作成を進めているそう。今後もアートワークは積極的に見せていきたいとのことだったので、こちらも注目して見ていきたい。

また、時代設定や世界観についても、本作のモチーフとなっている洋画がある……とのことだったが、こちらはタイトルを出してしまうとネタバレになってしまうので、現時点では公開NG。非常に気になるところだが、もしかしたらあれなのかも? と想像するのも面白そうだ。

『I Saw a Flying Saucer』は、PC(Steam)で2026年のリリースを目指して鋭意開発中。現時点で想像もつかないシナリオの行く末や、どこを切り取っても絵になるアートワークの数々をウィッシュリスト内より心待ちにしたい。

基本情報 I Saw a Flying Saucer
開発 Midnight Peppermint
販売 Midnight Peppermint
配信日 2026年予定
言語 日本語有り
価格 未定(Steam

ライター:レイリー 編集:LayerQ

この記事で紹介されているゲーム

I Saw a Flying Saucer

インディー

日本語対応