2025年9月25日~28日に、千葉県・幕張メッセにて開催の「東京ゲームショウ2025(以下、TGS2025)」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。
なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。


記録と再生で謎を解く、新感覚のアクションパズル
『MotionRec』は、プレイヤーの動きを「記録」して「再生」するという仕組みを軸にしたレコードパズルアクションゲームだ。日本のインディーゲーム開発スタジオ"HANDSUM(株式会社ハンドサム)"が手掛ける。
物語の舞台は、機械に支配された荒廃した世界。プレイヤーはこの世界の謎を解き明かすべく、「MotionRec(モーションレック)」と呼ばれる能力を使いこなしながら探索を進めていく。この能力で記録できるのは、歩く・ジャンプするといった"動きの軌跡"。ステージ上のギミックを利用することで、より複雑な動きを記録することも可能だ。


記録した動きを別の場所で再生することで、本来は届かない高所に上がったり、足場のない空間を渡ったりと、通常のアクションでは成し得ない突破口を開くことができる。再生の回数には制限があり、地面に着地すると回復する仕様で、戦略的な判断も求められる。
「動きそのものをパズルの鍵にする」という独自の発想と、機械文明が崩壊した静寂の世界観が融合した本作。自身の"行動の記録"を駆使して、この閉ざされた機械の世界の真実を掘り起こしていこう。
試遊レポート:動きを記録し、発想で越えるプレイ体験
今回のTGS2025では限られた時間内でのプレイとなったが、その短い試遊の中で「記録」と「再生」の面白さをしっかり味わうことができた。ステージの風景は同じエリアが続く構成だったが、ゲームの仕組みと手触りは十分に感じ取れた。
画面は白黒を基調としたモノクロ構成で、考えることに集中できる落ち着いたデザインという印象。背景は地下の洞窟のようでもあり、自然に飲み込まれた工場跡のようにも見える。人工物と自然が混ざり合った退廃的な雰囲気が印象的で、個人的にもこうした空気感はとても好みだ。

プレイヤーが操作するキャラクターは、ロボットの頭部に足が付いただけのミニマルな姿。操作は歩くとジャンプのふたつだけとシンプルだが、「記録」と「再生」というメカニクスが独特の奥行きをもたらしている。
プレイヤーは自分の動きを記録し、その軌跡をあとから再生して足場にしたり、障害を越えたりできる。例えば、水平方向に一定距離を進む動きを記録しておき、落とし穴の手前で再生すれば、その軌跡が橋のようになって向こう岸へ渡ることができるというわけだ。
このとき、画面に走る赤と緑のコントラストが自然と「赤=記録」「緑=再生」を連想させ、視覚的にも仕組みを理解しやすい演出になっていた。

実際に触れてみると、ただ動きを記録するだけでは進めず、「どう動けば突破できるか」を探る過程そのものが楽しい。固定観念にとらわれず、思いついた動きを試すことで思わぬ道が開ける――そんな"ひらめき"の感覚が心地いい。
また、ゲーム内には言葉やテキストといった要素が登場せず、世界はノンバーバルな表現で描かれている。余計な情報を削ぎ落とした構成だからこそ、アクションの手触りや世界の静けさがより鮮明に伝わってくる。無駄を削ぎ落とした構成が、考えることそのものを楽しませてくれる作品という印象だ。

試行錯誤するパズルが好きな方や、静かな世界で自分の手と発想を頼りに前へ進むゲームを求めている方には、きっと響く作品となっているだろう。
『MotionRec』は、PC(Steam)にて2025年10月27日にリリース予定。なお、現在Steamでは体験版が配信されているので、本稿で興味を持った方はぜひプレイしてみよう。
開発チームインタビュー:言葉に頼らず、“気づき”で進ませるゲームデザイン
今回、会場ブースではHANDSUM(株式会社ハンドサム)のデザイナー・加藤匠馬氏にインタビューする機会を得られた。
なお、TGS2025では本作をパブリッシングするPLAYISMブースと、開発スタジオ単体で出展するSELECTED INDIE 80ブースの2か所で展開されていたが、取材は後者で行っている。

――試遊では洞窟のような場所を進みましたが、全体的にはどういったステージ構成になっているのでしょうか。
加藤氏:
リニアに広がっていく構成です。試遊版では洞窟と廃墟を中心にしていますが、最終的には複数のエリアがあり、少しずつ雰囲気が変化していきます。
グラフィックは1ビット風(※)のままですが、各エリアで背景やBGMが切り替わる形になっています。操作自体は最後まで変わらず、パワーアップやスキルの追加といった要素はありません。その代わり、新しいギミックが段階的に登場していく構成です。
※1ビット風=2色のみの制限された配色で構成されたグラフィック表現。

──難易度の方向性はどのように考えていますか。
加藤氏:
極端に難しくはしていません。プレイヤーが自分で理解しながら進めていく、その流れを大事にしています。小学生くらいの年齢の方から、言語の異なる海外の方でも楽しめるよう、言葉に頼らない設計を意識しました。
ただし、各エリアに音符のような収集アイテムを配置しています。取らなくてもクリアはできますが、すべて集めようとすると、想定とは違う記録や再生の使い方を考える必要が出てきます。チャレンジしたい方向けの要素ですね。
──説明が少ない中でも、すぐに遊び方を理解できるのが印象的でした。
加藤氏:
ありがとうございます。最初の操作説明以降は、言葉でのガイドを極力なくしています。テストプレイの映像などを見ながら、詰まりそうな箇所はすべて丁寧に調整してきました。BitSummitなどでの来場者の反応も参考にして、細かい修正を重ねています。

──考える体験が軸にありますが、ストーリーは存在しているのでしょうか。
加藤氏:
会話のような要素は入れていませんが、世界観の設定はあり、最後にはエンディングも用意しています。言葉で語るというより、世界の変化を通して雰囲気を感じてもらうようにしています。
──全体のプレイボリュームはどの程度を想定していますか。
加藤氏:
今のところ、寄り道をせずに進めば3〜5時間ほどでクリア可能です。考えながらプレイしたり、収集要素を狙ったりすると7〜8時間、すべてをやり込もうとすれば10時間近くかかることもあります。
先ほどステージ構成について触れましたが、マップ画面のようなワールドマップはなく、リニアに繋がった構成です。ステージ単位でポーズメニューからやり直しができるようになっているので、何度でも挑戦できるつくりになっています。
| 基本情報 | MotionRec |
|---|---|
| 開発 | HANDSUM |
| 販売 | PLAYISM |
| 配信日 | 2025年10月27日 |
| 言語 | 日本語有り |
| 価格 | 未定(Steam) |
ライター:朝比奈 編集:LayerQ
