2025年9月25日~28日に、千葉県・幕張メッセにて開催の「東京ゲームショウ2025(以下、TGS2025)」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。
なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。


ショートショート×レトロゲームの新しい体験
近年、短編小説よりもさらに短く、印象的なエンディングが特徴的な小説の形式ショートショートが注目されている。『ショートショートフィクションズ』は、3話のショートショートが1つの物語につながるレトロゲーム形式のオムニバスアドベンチャーゲームだ。開発は、room6と密輸水産が手掛ける。


本作の主人公は、佐々木という女性。彼女が有給休暇をもらって浜辺で休んでいると、不思議なゲーム機・ニューウェーブ(通称ニューウィー)を見つける。キービジュアルにも描かれているレトロなゲーム機で、ゲームカセットを入れるとゲームボーイのようなレトロゲームをプレイできるという代物だ。
しかし、ニューウィーはただのゲーム機ではない。その正体は不思議な力を持っている「ゲームを食べる悪魔」だった。佐々木はそんなニューウィーの力によって浜辺に閉じ込められてしまう。脱出するには、収録された3つのレトロゲームをクリアする必要があるようだ。

プレイヤーは佐々木の視点でゲームを進める。浜辺パートではポイントクリック方式で画面内をクリックして調査でき、ニューウィーのゲームカセットを探したり、空に浮かぶ月にインタラクトしたりできる。
一方、ニューウィーの画面内で展開されるレトロゲームパートは、選択肢型ノベルゲームや見下ろし式アドベンチャーなど作品ごとに異なる形式で楽しめる。3つのレトロゲームはそれぞれショートショート形式の短編になっており、すべてをクリアすることで佐々木とニューウィーをめぐる物語が完結する仕組みだ。

今回は、3話のショートショートの中から『DON’T SAY YES』をプレイさせていただいた。物語は、ルナ歴22XX年、宇宙船が月に墜落した場面からはじまる。宇宙船の中にいた瀕死のパイロットは、月にいた悪魔と出会う。悪魔はパイロットの生きた精神と身体を欲しがり、「身体をくれたら願いをかなえてやる。Yesと言え」と取引を持ちかけてきた。
筆者はここで「No」と返事してみた。一度Noと言っても、悪魔は諦めない。甘い言葉や時には脅しに近い文句、論理的な説得……あの手この手でパイロットを揺さぶってくる。その執拗なやり取りの中で、徐々に悪魔の抱える事情が明らかになっていく。そして最後には、ショートショートならではの意外な真相が待っていた。プレイ時間はわずか5分ほどだが、強く印象に残る読後感が味わえた。
また、『DON’T SAY YES』は、短編ながらもマルチエンディング仕様となっており、選択次第で異なる結末を楽しめる。なお、スキップ機能も実装されており、周回プレイも快適に楽しめそうだ。

読書好きにもゲーマーにも楽しんでもらいたい
試遊版をプレイした後、本作を手掛けた個人サークル密輸水産の紅狐(あかぎつね)氏にお話をうかがった。本作は、プログラマーである天多みこ氏のサポートを受けながら紅狐氏がメインで制作している。以前から趣味でゲームを制作していた紅狐氏。GB Studioで制作した『DON’T SAY YES』と『TO:NORTH』を公開したところ、SNSでバズり、オムニバス形式で1つの作品として制作するに至ったそうだ。
ゲーム制作以外にも、小説の執筆も趣味で、レイ・ブラッドベリや星新一など短編で知られる作家の作品が大好きでよく読まれているとのこと。読書では体験できないインタラクティブ性と、ゲームとは少し違う没入感を生み出しているので、読書好きにもゲーマーにもぜひ触れてほしいと語る。もちろん、意外な展開やエンディングが特徴的なショートショートならではの展開にも注目してほしいとのことだ。
『ショートショートフィクションズ』は、2026年内の発売に向けて鋭意制作中で、プレイ時間は2時間程度を想定しているとのこと。日本語以外にも英語、中国語(簡体字、繁体字)に対応予定だ。ショートショートやレトロゲームの雰囲気が好きな方は、今すぐウィッシュリストに登録しておこう。なお、『DON’T SAY YES』と『TO:NORTH』はすでに公開されているので、製品版を待ちきれない方は、まずこちらをプレイしてみるのもおすすめだ。
基本情報 | ショートショートフィクションズ |
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開発 | room6, 密輸水産 |
販売 | room6 |
配信日 | 2026年 |
言語 | 日本語有り |
価格 | 未定(Steam) |
ライター:ばんじーよこすか
編集:LayerQ