2025年9月25日~28日に、千葉県・幕張メッセにて開催の「東京ゲームショウ2025(以下、TGS2025)」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。
なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。


座敷わらしとして部屋の怪異を見破ろう
『幽限会社わらし不動産』は、新米座敷わらしが実在する部屋の中にある怪異を見つける一人称視点のアドベンチャーゲームだ。開発は、Studio非が手掛ける。
物語の主人公は、新米の座敷わらし。住む部屋を求めてわらし不動産を訪れたが、部屋を借りるためには、「座敷わらし力」が必要だと告げられる。プレイヤーはこの新米座敷わらしとなり、「座敷わらし力」を高めながら住む部屋を探すことになる。


今回の試遊版は、新米座敷わらしが、「わらし不動産」を訪れる場面で始まった。対応したのは、大きめの顔が迫力満点のベテラン座敷BBA。彼女によると、座敷わらしとしての力が強くないと、部屋に取り憑くことができないのだという。そこで、主人公は奥にある部屋で訓練を受けることになった。
「座敷わらし力」を鍛える訓練とは、部屋の中に潜む物化(モノバケ)という怪異を見つけるというもの。物化とは、家主にちょっとした不幸をもたらす陰気な怪異で、普段は日用品などに上手く擬態をして身を隠している。
物化を見つける流れはこうだ。まず、部屋の中にある家具や電化製品などから家主の生活を想像する。次に、家主が所有しているものとしては違和感があるもの、つまり物化とおぼしきものをカメラで撮影する。すると、物化の正体を暴くことができる。


実際に部屋を観察してみて、まず怪しいと思ったのが5~6本の歯ブラシだ。部屋の広さから察するに、ここに住んでいるのは、1人、多くても2人だろう。5人以上住んでいるとは考えにくい。試しに、歯ブラシをカメラで撮影してみると、ビンゴ! その歯ブラシが物化だった。
その後、いくつか物化を撮影し、訓練会場から座敷BBAがいた受付まで戻ろうとすると、途中に何やら不穏な部屋を見つけたので入ってみた。そこは、正体を暴いた物化を封印しておく捕獲済物化一時勾留所だった。檻の中は暗くてよく見えないが、檻に張られた紙にはハブラシカと書かれている。さきほど捕らえた歯ブラシの物化のようだ。コレクター心をくすぐる演出だ!


実在する部屋のデータが生む独特のリアリティ
試遊後、本作を手掛けたStudio非のディレクター石原航氏と高橋祐亮氏にお話を伺った。おふたりは同じ大学出身のメディアアーティスト。3歳からゲームに親しんできた石原氏と、ゲーム禁止の家で育ち映画や小説に親しんできた高橋氏という、対照的なバックグラウンドを持つ。本作では、石原氏がプログラミングやインタラクションを、高橋氏がビジュアルアートやモデリングを担当し、ストーリーは共同で制作している。日常に潜んでいる恐怖をテーマに、これまで『P.I.』と『親切()な駅』を発表してきた。
本作の大きな特徴は、東京都内に実在する部屋のスキャンデータが使用されている点だ。これは、MVMNTが手掛けるTOKYO [UN]REAL ESTATE(東京[不]不動産)というプロジェクトの3Dデータ。このプロジェクトは、東京の普通の住宅を3Dで記録し、現在の東京の生活史としてまとめるというもの。都内の協力者宅を実際に訪問してスキャンしたり、家主から送られたスキャンデータを使用したりして制作されている。
興味深いのは、3Dスキャン技術の不完全さを逆手に取っている点だ。部屋の映像が一部ぼんやり見えるのは、現在のスキャン技術ではまだ完全には再現しきれないため。しかし、作中では「座敷わらしの力が低いため」という設定で、この曖昧さが物化探しの緊張感を生んでいる。技術の進化を考えると、今だからこそ制作できるゲームだと語ってくれた。
『幽限会社わらし不動産』は、2025年12月末に発売予定。プレイ時間は1~3時間で、7つ以上の部屋に隠れる物化を見つけることになるとのこと。一見ごく普通に見える部屋に潜む物化を発見した時のゾッとする恐怖と達成感を体験したい方は、今すぐウィッシュリストに登録しよう。
| 基本情報 | 幽限会社わらし不動産 |
|---|---|
| 開発 | Studio非 |
| 販売 | Studio非 |
| 配信日 | 2025年12月 |
| 言語 | 日本語有り |
| 価格 | 未定(Steam) |
ライター:ばんじーよこすか 編集:LayerQ


