小さく分散させることで、一度の大きな不幸を防ぐ――幸福と不幸の量を計測・調整するSF風テキストADV『よりよいのためのアルゴリズム- All (Too) Good things -』ブースレポート【東京ゲームダンジョン10】

しわしわ

2025/11/22

2025/11/25

2025年11月9日に、東京・浜松町にて開催の「東京ゲームダンジョン10」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。

なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。

東京ゲームダンジョン 10 ► 2025年11月9日(日)、東京・浜松町で都内最大級のインディゲーム展示会を開催!
「東京ゲームダンジョン」は個人や小規模チームが制作するデジタル・ゲーム(インディゲーム)の展示会です。手頃な出展料と充実した設備で、気軽に作品を出展・試遊できるイベントを目指しています。主催者も個人でゲームを作っているインディ開発者です。みんなで国内のインディゲームを盛り上げましょう!

突然だが、あなたはとびきりに良いことが起きたとき、あるいは些細でも“ラッキー”な出来事が立て続けに起きたときに、「そろそろ悪いことも起きるのでは」「運を使い果たした」などと感じたことはないだろうか? 逆に、不運なことが続いて気が滅入ってしまうとき、「きっとそのうち良いこともある」と自分を励ました経験はないだろうか。

良いことだけ、悪いことだけが起きる人生というのはないだろう。では、もし「世界に存在する幸福と不幸が必ず1:1になる」ことが決まっていたとしたら、どうなるのか? 誰かの幸福の分、自分に不幸が回ってくるのだろうか。自分がツイているとき、世界のどこかでは、誰かがそのぶんの貧乏くじを引いているのだろうか。

本稿で紹介する『よりよいのためのアルゴリズム- All (Too) Good things -』は、そんな「幸福と不幸の総量が等しい」ことが判明した世界を舞台に、人類を最大限幸福にするためプレイヤーが不幸度を操作するという、SF風テキストADVだ。YOWPY gamesが2名で開発を手がけている。会場で試遊させていただいて感じた本作の魅力と、取材を通じて見えてきた制作のこだわりをお伝えしよう。

Steam:All (Too) Good Things
あなたの​仕事は​人類を​幸福に​する​ことです。​ あなたの​担当区画で​暮らす​人々を​観察し、​みんなが​幸福に​なる​ための​最善の​選択を​しましょう。​

最大多数の最大幸福を目指し、人々をちょっとずつ不幸に

本作においてプレイヤーは、「幸福と不幸の量を計測・調整することで、人類単位での大きな不幸を回避する」ことを目的とした謎の“機関”に所属している。担当地区となる多運町では、不幸が発生すると、それを上回る幸福の増量が観測されるらしい。プレイヤーは“機関”の仕事として、多運町内で適切に「不幸値」を割り振り、できるだけ多くの人間が最大限幸福であれる世界を目指す。

▲非常に分かりやすい例え

パソコンの画面からマップにアクセスして町の一角を覗き、人々のやりとりを眺めたあと、会話の流れに応じて「不幸」を発生させられそうな選択肢を選んでいく。試遊ではこの流れを2回体験できた。

具体的な選択内容の一例としては、チュートリアルでの「今晩お遣いを頼まれているが、行きたくないので雨が降ってほしい女子高生」と「洗濯物を取り込み忘れている交番のおまわりさん」がいるときに、プレイヤーは雨を降らせるか否か、というものである。

この場合、雨を降らせたほうがより広く悪影響が出そうだと想像はつくものの、現にこの女子高生のように、雨が降ることを幸運と感じる人もいる。会話の流れや人物の背景も含めて、なにを選ぶことでここに不幸が発生するのか、つい考え込んでしまう絶妙な内容が続いた。会話を最後まで見届けると現在の不幸値が表示されるものの、ここに不幸と幸福のどちらが多く存在したのか、心情のうえでは測りかねる場面も。哲学的なテーマが巧みに、かつ繊細に扱われていると感じた。

今回の試遊で印象的だったのは、人々の心理描写が非常に丁寧であったことだ。会話パートでは登場人物の抱える悩みや、それを聞いて応える相手の様子などを覗き見ることができるのだが、共感・理解しやすい等身大の漠然とした不安にはじまり、それに対してかける言葉の程良さまで、どれもがフラットできめ細かく描写されていると感じた。大げさな言葉や振る舞いがなく、どこまでも自然体で交わされる会話のテンポが、非常に心地よいのだ。

だからこそ彼らを応援したくなってしまうものの、プレイヤーの役目はあくまで「最大多数の幸福のため不幸を割り振ること」である。こういった選択内容が先々でどのように影響するのか、また多運町ではなぜ幸福が増え続けているのかなど、製品版が非常に楽しみになる試遊だった。

▲特に印象深かったのは、従業員でもないのに無断で労働していた彼

実体験や手作り感が形づくる親しみやすさ

今回、プログラムを担当するAkari氏、グラフィック・サウンドを担当するKoike氏がともに取材に応じてくださった。

本作の「幸福と不幸の総量は等しい」というテーマは、Akari氏自身「すごく幸せなときほど、あとで良くないことが起きないか不安になる」と感じやすく、よく考えていたことなのだそう。実際、根拠のない“揺り戻し”を恐れるような感覚に覚えがある人は多いのではないだろうか。そして、同じく“幸福”をテーマとする舞台をたまたま観劇したことをきっかけに、「幸福と不幸を調整できたら面白いのでは」というアイデアに至ったとのこと。

シナリオはAkari氏が中心となりつつ、2人で相談しながら制作しているという。両氏ともSFが好きで、群像劇短編集のようなシナリオ構成にはこだわりがあると聞かせてくれた。

▲試遊版ではお目にかかれなかったふたり。製品版でやりとりを聞くのが楽しみだ。

また、ストアページでも確認できる「多運町マップ」は、なんと両氏が合宿にて実際に模型を制作し、それを撮影・加工したものを使用しているという。“手作り感”を意識して制作されているとのことだ。ほかにないざらりとした質感と味わいは、こういった手作業とこだわりの賜物だろう。

▲ゲーム内で確認できる多運町マップ

幸福、不幸と聞くと特別な言葉のようにも感じるが、本作のテーマはとても普遍的で、それを囲む登場人物たちにも自然と親しみを持つことができる。Akari氏が長年付き合ってきた感覚や思考を丁寧に扱っていることや、Koike氏の温もりある画作りが、我々と本作をぐっと近づけてくれる秘訣なのだろう。しかしパソコン画面の外、主人公のデスク周辺は角ばって無機質な印象があり、その対比がさらに本作の世界観と魅力を引き立てていた。

本作はいったいどのようなエンディングに辿り着くのだろう。世界観やテーマと併せて、気になった方はぜひウィッシュリストに追加してみてほしい。『よりよいのためのアルゴリズム- All (Too) Good things -』は、Steam, Itch.ioにて2026年夏ごろの公開を目標に制作中とのことだ。


基本情報 よりよいのためのアルゴリズム- All (Too) Good things -
開発 YOWPY
販売 YOWPY
配信日 2026年
言語 日本語有り
価格 未定(Steam

ライター:しわしわ 編集:LayerQ

この記事で紹介されているゲーム

All (Too) Good Things

アドベンチャー

インディー

カジュアル

日本語対応