80年代レトロフューチャーが漂う月面基地で"異常事態"を探る探索型SFホラーアドベンチャー『ROUTINE』プレイレポート

朝比奈 / Asahina

2025/12/13

ROUTINE』は、イギリスのインディー開発スタジオ"Lunar Software"から2012年に公に発表されてから、13年もの歳月を経てついにリリースされたタイトルだ。

舞台となるのは月面に造られた静かな基地。手探りで歩みを進める中で、どこかで確実に"何か"がうごめく気配がじわりと漂い始める。その対比が生む緊張は、一人称視点ならではの没入感と相まって、プレイヤーを強烈に引き込んでいく。

あなたは観客ではなく、この異常事態に迷い込んだ当事者として、月面基地の奥へと足を踏み入れることになる。

Steam:ROUTINE
『ROUTINE』は、80年代の未来観に基づく月面基地の廃墟を舞台にした、一人称視点のSFホラーゲームだ。未知の脅威をかいくぐりながら、基地内を探索、調査せよ。

目覚めたのは見知らぬ月面基地──孤独な調査の始まり

宇宙服を着たまま薄暗い個室で目を覚ましたあなたは、自分が何者で、なぜここにいるのかといった根本的な情報すら与えられていないことに気づく。

部屋には簡素な備品が置き去りにされ、頼りなさげな薄暗い照明が室内をぼんやりと照らしている。誰かが直前まで使っていたのか、それとも長く放置されていたのか判断できず、状況を変えるには周囲の端末を自分で調べるしかないと、徐々に理解させられる。

扉は施錠されており、端末を調べてアクセスIDを発行しなければ外へ出られない。画面に明確な指示はなく、わずかな変化を手がかりに操作をひとつずつ確かめながら、ロックを解除する必要がある――この段階で、"自分の手で状況を読み取り、道を開いていくしかない"という本作の姿勢が明確に示されているかのようだ。

通路へ踏み出すと、そこには人気のない静けさと散乱した物品が同居し、必要最低限の照明だけが薄く灯っている。機械的なアナウンスが途切れ途切れに響くほかは気配らしいものもなく、どこか取り残されたような空気が漂う。

点在する端末や残された文書を読み解いていくうちに、ここが「ユニオン・プラザ」と呼ばれる月面基地であり、かつてはムーントラベラー(月旅行者)向けのバケーション施設として機能していたことがわかってくる。しかし、その面影は薄れ、現在の施設には人の気配がまったく感じられない。

この施設を訪れた旅行者たちと同様に、あなた自身も7日間の隔離期間を受けていた形跡がある。しかし、その隔離がいつ終わったのか、あるいは終わっていないのかは不明だ。施設全体はロックダウンされ、通常の運営は停止しているように見えるものの、その理由を告げる情報はどこにもない。

さらに探索を進めると、端末の前に放置されたカセットテープ式の録音装置から「A.S.N.(自動セキュリティネットワーク)をシャットダウンしなければならない」という切迫した音声が再生される。

どうやら施設全体が何らかの事態によってロックダウン状態に陥り、通常の手段では解除できないらしい。ロックダウンを解く鍵は、A.S.N.を停止するために必要なアクセスIDとアクセスコードを持つ人物の存在だが、その人物が生きているという保証は――もちろん、どこにもない。

こうした断片的な情報を拾い集めながら、観察と推測を積み重ねて世界の輪郭をつかんでいく構造は、SFホラー作品で長く用いられてきた手法であり、本作もそれを丁寧に取り入れている。

散らばった手掛かりが少しずつ意味を帯び、状況が徐々に明らかになっていく過程には、探索を進める強い動機に繋がっていく。こうした構造に惹かれるプレイヤーであれば、序盤から深く没入できるはずだ。筆者もそのひとりだ。

レトロフューチャーとアナログ操作が生む没入感

本作のゲームデザインは、一人称視点の没入感を最大限に高めるため、いわゆる"ゲーム的な便利さ"を意図的に排している。Unreal Engineがリアルに描き出す月面基地の内部は、照明の陰りや機械音の反響まで質感豊かに表現され、歩くだけで緊張が帯びる空間になっている。

特徴的なのが、80年代のレトロフューチャー感だ。CRTモニターのちらつき、無骨な金属パネル、配線むき出しの機器、カセットテープ式の録音装置。未来とローテクが混在する"過ぎ去った未来像"が、ユニオン・プラザ全体に独特の雰囲気を与えている。

身体動作へのこだわりも強く、リーンは左右だけでなく上下にも対応。しゃがみ姿勢と組み合わせれば、物陰から暗がりをそっと確認しながら進む緊張が持続する。

そんな探索の要となるのが「C.A.T.(コスモノート支援ツール)」だ。側面のボタンを自ら押してP.D.A.(パーソナルデータアシスタント)モジュールを起動し、端末へリモートアクセスする。バッテリー残量は画面に表示されず、本体を傾けて側面のメーターを目視で確認しなければならない。こうしたアナログな仕様が、便利さを犠牲にする代わりに"その場にいる"感覚を強めている。

解除すべき扉や装置は状況によって異なり、エラーコードを読み取って原因を探り、適切な操作を導き出すことで開く場合もあれば、閉ざされたシャッターから伸びるケーブルを追い、配電盤をC.A.T.のショットで強引にショートさせて突破することもある。アクセスコードが必要になる場面もあり、どの方法が正解なのかは状況ごとに自分で判断しなければならない。探索は常に試行錯誤の連続だ。

タスク更新はあるものの、次に何をすべきかを丁寧に示してはくれない。端末ログや紙片のメモ、断片的なアナウンスなど、あちこちに散らばる手掛かりを自分で拾い集め、方角と目的を推測しながら進んでいく。こうしたデザインはときに負担にもなり得るが、その分だけ緊張した空気を保ち、没入感を大きく高めている。

施設内のエリア移動はトラム(移動車両)が担い、細い通路と広めのロビーが複雑につながる構造は、ただ歩くだけでも探索意欲を刺激してくれる。

静寂の中で輪郭を現す"異常事態"

ユニオン・プラザの内部を進むにつれて、静けさの裏側にある"異常さ"が少しずつ姿を見せ始める。散乱した物品、途切れ途切れのアナウンス、そして誰の姿もない空間。いずれも直接的な危険を示すものではないが、積み重なるほどに不穏さを濃くしていく。

やがて居住区では、人型ロボット"タイプ05"が直接的な脅威として立ちふさがる。乱れた室内に無言で佇むその姿は、言いようのない存在感を帯び、視界に捉えられればためらいなくプレイヤーを排除しようと迫ってくる。

見つかれば物陰に身を潜め、その行動ルーティンを読み取りながら慎重に距離を取るしかない。動作は機械的ながら予測しづらく、息を潜めてやり過ごす時間は強い緊張を伴う。

音響設計も恐怖を後押しする。BGMはほとんど存在せず、聞こえるのは主人公の息遣いや衣擦れ、足音、そして施設の低い駆動音だけ。静かな通路で扉が勢いよく開閉する音が響くだけで、不意のジャンプスケアのように心臓が跳ねる。さらに、読み物を確認している最中でも時間は停止せず、気配を感じたらすぐに視線を上げなければならない。

序盤を終える頃には、ユニオン・プラザが深刻な危機に見舞われている場所であることを肌で理解するはずだ。誰も助けてくれず、何も説明されず、ただ自分だけがこの異常事態と向き合わなければならない。この"孤独な探索"こそ、本作の核となる魅力だと筆者は感じている。

"手探りの探索"が形づくる、静けさの中のSFホラー体験

本作は、プレイヤーを突然月面基地の異常事態へと放り込み、そこから先を自分自身の観察と判断で切り開いていく作品だ。丁寧な誘導や便利なUIはほとんどなく、散らばる手掛かりを読み取り、推測し、仮説を立てながら前進していくことになる。この不親切さはときに負担にもなり得るが、そのぶん緊張した空気が保たれ、強い没入感へとつながっていく。

Unreal Engineによる緻密な空間描写、80年代レトロフューチャーの質感、アナログ機器の操作が生むリアリティ。そして、静寂の奥からじわりと姿を現す異常。派手な恐怖演出に頼らず、観察と思索の積み重ねによって恐怖が形づくられていく点に、本作ならではの魅力がある。

さらに、日本語ローカライズは架け橋ゲームズがサポートし、翻訳は英日ゲーム翻訳者のライス由香氏が担当している。端末ログや音声記録といった重要な手掛かりも違和感なく読み取れ、情報の解釈がそのまま進行に直結するタイトルだけに、この翻訳品質は没入感を保つ上で大きな支えとなっている。

手探りの探索を好み、静かな環境で少しずつ真相へと迫るタイプのSFホラーに惹かれるプレイヤーであれば、本作は強く刺さるはずだ。人気のない月面基地に潜む異常を、ぜひ自らの目で確かめてほしい。

ROUTINE』は、PC(Steam)・コンソール(Xbox Series X/S)・Xbox Game Passにて2025年12月5日より配信中だ。


基本情報 ROUTINE
開発 Lunar Software
販売 Raw Fury
配信日 2025年12月5日
言語 日本語有り
価格 2,800円(Steam
2,900円(Xbox Series X/S

© 2025 Lunar Software. Developed by Lunar Software. Published by Raw Fury. All rights reserved.

ライター:朝比奈 編集:LayerQ

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