2026年1月18日に、東京都・秋葉原 UDX Galleryにて開催された「DREAMSCAPE#4」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。
なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。


殺人鬼と対話するのは、声を持たないラジオパーソナリティ
『私の朝食はシリアル』は、ラジオ番組のパーソナリティとしてシリアルキラーとタイピングを利用して会話をしていくノベルゲームだ。日本のインディー開発スタジオ"Furoshiki Lab.(フロシキラボ)"が手掛ける。
本作は提示された2つの選択肢から一方を選び、その内容をキーボードで打ち込むことで会話が進んでいく。最近はAI対話型のゲームも増えてきているが、あえて決められた言葉を「タイピング」するという工程を挟むことで、物語への没入感を高める狙いがあるようだ。
もちろん、選んだ選択肢によってその後の展開が変化していくという、ノベルゲームとしての醍醐味もしっかりと備わっている。

キーボード越しに触れる、対話相手の鼓動
ブースで展示されていた体験版に触れてまず印象的だったのは、タイピングという行為と設定の巧みな合致だ。本作の主人公は過去の事件によって失声症を患っており、文字を介してしか意思を伝える術を持たない。ラジオ番組という性質上、視聴者に声を届ける必要があるため、プレイヤーが打ち込んだ文字は機械音声で読み上げられ、放送として成立していく仕組みとなっている。
この日対面したのは、本来対峙することになるシリアルキラーではなく、ある自動車事故を引き起こした受刑者だった(※)。そのため会話の内容自体はマイルドで、決して手強い相手というわけではなかったが、相手の心情を静かに探り出していくような言葉選びが印象に残る。
※今回のイベントでは、残酷描写や暴力表現の度合いによって展示内容がグリーン/イエロー/レッドの3区分に分けられていた。本作は本来「レッド」に相当する刺激の強い内容を含むが、来場者に広く楽しんでもらうための配慮から、イエロー区分に収まるように対話相手を調整したのだそうだ。

また、本作は単にインタビューをこなすだけのゲームではない。主人公にはある「復讐」という目的が隠されており、傍にいるディレクターに悟られないよう、嘘をつき続けながら対話を進める局面もあるとのことだ。現時点では未実装だったが、打った文字がその場で機械音声によって喋り上げられる演出が加われば、プレイヤーと主人公の境界はさらに曖昧なものになりそうだ。
製品版では、こうした二重の緊張感とともに、フロシキラボらしい研ぎ澄まされた言葉選びによって相手の精神をじわじわと紐解いていく体験が味わえるに違いない。タイピングの一打一打が、単なる入力作業の枠を超えて、取り返しのつかない重みを持った「対話」へと変わっていく感覚を、より鮮烈に体験できるのを今から楽しみにしている。
開発者インタビュー:田平氏が語る「タイピング」の真意
今回ブースでフロシキラボ代表の田平孝太郎氏にお話を伺えたが、本作は映画『ミュート・ウィットネス』にインスピレーションを受けたとのことだ。この映画は、撮影現場で恐ろしい事件を目撃してしまった失声症の女性が、声を出せないまま殺人鬼から逃げ惑う恐怖を描いたサスペンスホラーだ。
本作ではその「声を出せない状況」の設定を活かし、あえてタイピングという工程を挟むことで物語への没入感を高める狙いがある。

興味深いことに、本作においてタイピングの速さは重要ではない。評価の基準はあくまでも、いかに「相手の話をしっかり聞けたか」という点に置かれている。適切な言葉を選び、相手から新たな情報を引き出すことで物語が分岐し、シリアルキラーのさらなる情報を入手できる仕組みだ。反射神経ではなく、相手の懐に潜り込むような観察力と対話のセンスが、プレイヤーには求められる。
また、本作は単なる一本道のタイピングゲームではない。ストーリーを楽しみたいプレイヤーに向けて、タイピングの時間制限を「なし」に設定できる配慮もなされている。一方で、制限時間を設けてプレイする場合には何らかの報酬も用意するつもりだと、田平氏は語ってくれた。
製品版に向けてさらなるアップデートを予定
本作は2026年3月のリリースを予定している。数ヶ月という短期開発であることも驚きだが、次回出展予定の「東京ゲームダンジョン11」では、さらなるアップデートが予定されているとのことだ。
今回の体験版でのUIは、テキストが表示されるウィンドウのみで構成された非常にシンプルなものだったが、今後はビジュアル面での演出も追加されていく予定だという。
さらに注目したいのは、サウンド面でのこだわりだ。田平氏自身が好みだというブレイクコアなどのジャンルから、物語の後半に向けてより激しい楽曲を導入する予定だと語ってくれた。前述した機械音声による読み上げなど、プレイヤーがより深く物語に没入できるような演出の強化が進められている。
言葉とタイピングを通じて、静かに、しかし着実にプレイヤーを物語へと引き込んでいく本作。フロシキラボが放つこの一作が、どのような物語を綴っていくことになるのか、その完成を待ちたい。
| 基本情報 | 私の朝食はシリアル |
|---|---|
| 開発 | フロシキラボ |
| 販売 | フロシキラボ |
| 配信日 | 2026年3月予定 |
| 言語 | 日本語有り |
| 価格 | 未定 |
ライター:朝比奈 編集:LayerQ
