2026年2月8日に、東京都・浜松町の東京都立産業貿易センター浜松町館にて開催された「東京ゲームダンジョン11」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。
なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。


回路を繋ぎ、失われた記憶を呼び覚ます物語
『Save My Scrap -セイブ・マイ・スクラップ-』は、アンドロイドの修理士として壊れかけの機体を修理しながら、そこに秘められた記憶を繋ぎ直していくパズルアドベンチャーゲームだ。日本の個人ゲーム開発者、安納ウニオ氏が手掛ける。
20XX年、アンドロイドが自我を持ち、人間の隣に当たり前に存在する世界。アンドロイドの修理士である主人公が、旧型アンドロイド・ハリマの修理を通じて、彼女や依頼人との交流、そして2人の秘められた過去に触れていく。今回の体験版では、物語の導入となる約10分間のエピソードをプレイすることができた。


修復の過程で紐解かれる、忘れられた日々への手がかり
本作においてプレイヤーの役割となるのは、アンドロイド専門の修理士。物語は、クライアントである医師・ミオマルと、彼が所有する旧型アンドロイド・ハリマから修理の依頼を受けるところから始まる。20年という長い年月を稼働し続け、限界が近づいているハリマの機能を修復すること――それが、あなたに託された仕事だ。
作業内容は、回路を繋ぎ、摩耗したパーツを交換して、失われていた機能を蘇らせていくというもの。当初、それは単なる機械的な修理作業に過ぎないはずだった。しかし、ハリマやミオマルとの対話を重ね、2人との絆が深まるにつれて、プレイヤーは1つの事実に気づき始める。自分が繋ぎ直しているのは単なる配線ではなく、彼らが「忘れようとしていた記憶」そのものであるということに。
修理という工程が、図らずも彼らの過去を紐解くきっかけとなっていく。すべての修理が終わるとき、修理士であるあなたは、隠されていた衝撃の真実と、彼らの切ない願いに対峙することになる。

露わになる内部機構。メカニカルな美しさと手触り
今回の体験版では、主人公が依頼人のもとへと向かう道中で、偶然にも修理対象のハリマと出会うシーンから物語が始まる。一人称は「オレ」だが、そのビジュアルから女性型のアンドロイドのようだ。会話の最中に手首が外れ落ちてしまうといった描写からは、機体が抱える深刻な不調が肌で感じられる。
そのまま依頼人であるミオマルの自宅へと向かい、2人と対話を重ねるなかで、彼らの関係性が浮き彫りになっていく。温和なミオマルと、どこか冷めたような物言いが目立つハリマ。しかしそこには、主人と家事アンドロイドという枠を超えた、確かな信頼関係があるようだ。

本作はノベルゲームの形態をとっていて、選択肢を交えた会話パートを主軸に、インタラクティブなパズル要素を備えた修理パートが差し込まれるサイクルとなっている。
修理パートでは、ハリマをメンテナンスモードへと移行させ、その内部状態を診断していく。寝台に横たわり、外装の下からコードや重厚なメカニカルパーツが露出した彼女の姿には、いわゆる「メカバレ」に通ずるフェティシズムが宿っている。
この世界においてアンドロイドという存在は公然の事実だが、その内側をあからさまにのぞき込むという行為には、やはり独特の感覚が伴う。さっきまで言葉を交わしていた自我を持つ存在が、純然たる「モノ」としての側面を剥き出しにしていく――。その背徳感と機能美が入り混じったビジュアルは、単なるパズルゲームの枠に収まらない没入感を生んでいた。

今回の試遊で行ったのは、損傷した左目の修理。配線の位置を考えながらパーツが適合するように組み込んでいくパズルだ。それ自体はさほど難しいものではなかったが、無事に作業を終えた際、ふと目に留まったのは彼女の髪の傷み。彼女の了承を得た箇所のみに手を加えるという事前の約束が頭をよぎるものの、筆者はあえて「手入れをする」という選択をした。
こうした本来の依頼にはない細かなお節介が、後の2人の反応にどのような変化をもたらすのか――非常に先が気になる幕引きだ。
Unityへの刷新。完全版として磨き上げられた内容と操作性
本作は、ノベルゲーム投稿サイト「ノベルゲームコレクション」で公開されているフリーゲーム『Fix My Junk.』をベースとした、商用完全版(ディレクターズカット版)だ。
パブリッシャーであるAMATA Gamesの代表・高橋広典氏にお話を伺ったところ、もともとティラノビルダーで開発されていたフリー版をUnityへと移行することで、ブラウザ版などで見られた挙動の不安定さを解消し、動作の安定化を図っているという。

この開発環境の刷新に伴い、操作面ではマウスに加えて新たにコントローラーでのプレイにも対応した。オブジェクトに回転などの演出を加えることで視覚的な質感を向上させるなど、より洗練されたデザインが実現している。
さらに内容面でも、フリー版から会話内容が追加されたほか、新たなエンディングも1種類増設。あるエンディングをクリアすれば、イベントスチルや秘蔵のキャラクター設定を楽しめる「ギャラリーモード」が開放される。単なる移植に留まらない、完全版にふさわしい大幅なアップデートが施されているのも見逃せないポイントだ。
翻訳者が涙した、情緒あふれる物語の結末へ
また、本作の最大の魅力は、開発関係者が一様に高く評価する「ストーリーの質」にある。海外展開に向けたローカライズの際、翻訳担当者が作業中に涙を流すほど物語に心打たれたというエピソードがあるそうだ。それほどの熱量を持って語られる本作が、海外のプレイヤーにどう受け容れられるか――その反響の大きさに、今から期待が高まる。
『Save My Scrap -セイブ・マイ・スクラップ-』は、PC(Steam)・コンソール(Nintendo Switch, PlayStation 5, Xbox Series X/S)にて2026年内のリリースを目標として鋭意開発中だ。
本稿の執筆時点でSteamでは体験版は公開されていないが、フリー版の『Fix My Junk.』は引き続きプレイすることが可能なので、完全版を待つ間にプレイしてみるのもいいだろう。退廃的で美しい世界観のなかで、あなたが繋ぐのは単なる回路か、あるいは失われた記憶か。その完成を心待ちにしたい。

| 基本情報 | Save My Scrap -セイブ・マイ・スクラップ- |
|---|---|
| 開発 | 安納ウニオ |
| 販売 | AMATA Games |
| 配信日 | 2026年予定 |
| 言語 | 日本語有り |
| 価格 | 未定(Steam) |
ライター:朝比奈 編集:LayerQ














