本稿は事前にレビューキーをご提供いただき、執筆しています。
『THYSIASTERY(ジシアステリー)』は、レトロ調のビジュアルで描かれるターン制ローグライク3DダンジョンRPGだ。フィンランドのゲーム産業プログラム「Espoo Game LAB」や「Finnish Game Incubator」を経て結成された開発スタジオ"DIRGA Games"が手掛ける。
気がつけば、あなたは自らと同じ《烙印》を刻まれた人々とともに、広大で謎に満ちた《ラビリンス》の中にいた。助け合い、知識を分け合い、時に頼り合いながら、出口を探して奥へと進む。地下に沈んだ森や水没した都市、忘れられた遺構――歩みを重ねるほどに、この世界の真相が少しずつ姿を見せていく。


《烙印》に導かれ、飢えた迷宮を往く
舞台となる《ラビリンス》は、古代の神秘が眠る広大な空間だ。プレイヤーは体に刻まれた《烙印》を共通点として、見知らぬ人々とともに深部を目指す。
道中で出会う人物たちは、単なる同行者ではない。共に助け合い、過酷な環境を生き抜くための戦術を広げていく存在となる。眼前に広がる光景は、かつての繁栄の残滓か、あるいは死へと誘う罠か――。その深奥に秘められた真実を解き明かすには、常に死のリスクを管理し、歩みを止めない着実な探索が求められる。

容赦なき死と、戦略性を深める育成システム
本作の探索は一人称視点のグリッド移動。迷宮を徘徊する敵モンスターとはシンボルエンカウント方式なので、パーティが一歩進むごとに敵シンボルも動く仕様だ。そのため、積極的に戦いを仕掛けるか、迂回して危険を避けるかという判断にも迫られる。そして、いざ戦闘へと突入すれば、ターン制でのシビアな駆け引きが繰り広げられるわけだ。
主軸となるのは、ローグライク要素。挑戦のたびに迷宮の構造や出会う仲間がランダムに入れ替わる。そして、その道程は過酷だ。戦いのなかで致命傷を受けて死亡すればキャラクターがロストする「パーマデス」方式が採用されており、ともすればメンバーが欠けた状態で探索を続けなければならない場面も出てくる。わずかな判断ミスが、取り返しのつかない損失へと直結するのだ。

その探索を支えるのが、膨大な数のスキルコレクションだ。各キャラクターはクラスに応じたスキルの習得や成長、発見はもちろん、他のパーティメンバーへのクラスの枠を超えた伝授が可能となっている。これにより、効率的なパーティビルドを追求し、最適な戦術を構築する楽しみを味わえる。
また、メインシナリオのクリア後には「難易度モディファイアー」が開放される。これは「ノーマル」「ハード」といった固定の難易度プリセットではなく、敵の強化やリソース制限など、複数の足枷を組み合わせて独自の攻略体験を構築するやり込み要素だ。詳細は伏せるが、リスクに応じた恩恵も用意されているため、さらなる高みを目指すプレイヤーへの挑戦状と言える。
ビジュアル面では、色数を絞ったクラシックな名作たちにインスパイアされた表現を採用している。この特徴的なデザインは、未知の建築物や遺構を調査する際の、無機質で静かな緊張感を一層際立たせているかのようだ。
試行錯誤が生存のカギとなる迷宮探索
ここからは、筆者が実際に迷宮を探索して得られたプレイフィールをお伝えしていこう。
迷宮探索は、最初の1人となるキャラクター作成から始まる。彼/彼女はなにも主人公というわけではなく、迷宮に囚われた冒険者の1人に過ぎないが、上昇しやすいステータスの選定やクラスの選択に加え、初期装備や追加スキルの調整が可能というアドバンテージがあるため、これを最大限に活用していきたいところだ。
そして、いざ冒険を始めたら、一刻も早く仲間を見つけ出さなければならない。本作の戦闘はオーソドックスなターン制のため、パーティの人数はそのまま戦況の有利さに直結する。実は2人目はすぐに見つかる仕様になっているのだが、フルメンバーの4人を揃えるまでの道のりが遠い。数的不利をどう凌ぎ、いかに戦力を整えるか。その過酷な立ち上がりが、探索の緊張感を高めている印象だ。

先述のとおり、本作はシンボルエンカウント制なので徘徊するモンスターの姿を目視できる。戦いを仕掛けるかどうかは任意だが、避けてばかりでは成長はできず、逆に発見されれば追い詰められることもある。
原則として敵は1体ずつなので、パーティが揃えば有利に立ち回れるが、運悪く挟み撃ちされれば一気に窮地に陥ることも。いつ出会うかわからないランダムエンカウントよりも、実はこちらのほうがシビアなのかもしれない。限られたHPとスキルを扱うためのTPを管理し、次なる下層へ踏み込むタイミングを見極める。こうした判断の積み重ねが、そのまま生存率へ反映される仕組みだ。

一定の階層毎には門番とも言うべきボス級の強敵が待ち構えており、文字通りに死力を尽くさなければならない。願わくば誰1人として欠けることなく勝利をつかみたいが、雑魚モンスターとは一線を画した強さは一筋縄ではいかない。全体攻撃、連続攻撃、そのどれもが致死的なダメージを与えてくるので、一瞬でも気を抜けばパーティメンバーを失うか、悪くすれば全滅して最初からだ。
温存していたスキルやアイテムを駆使して、ボロボロになりながらも次の階層へと歩みを進める。拠点や街など存在せず、わずかに休息できるのは頼りない焚き火の灯ったキャンプだけ。
――これぞ、引き返すことのできない3DダンジョンRPGの醍醐味だ。

試行錯誤を促すランダム性と伝授システム
迷宮の構造や遭遇する仲間は、挑むたびに変化する。手取り足取りの解説はないため、勝手がわからずに幾度か全滅を繰り返すことになるかもしれないが、その失敗を通じてプレイヤー自身に知識が蓄積されていく。次はどうすれば上手く進めるかという試行錯誤へ、自然と繋がっていくデザインだ。
探索にさらなる深みを与えているのが、キャラクター間でのスキル伝授システムだ。これは単なる死後の救済措置ではなく、パーティ全員で生き抜くための「知識の共有」として機能している。各キャラクターのスキルを他者に分け与え、最適化していくプロセスは、非常に戦略的だ。全滅しないよう如何にパーティとして強化していけるか、そのシステマチックな協力関係が探索の推進力となる。

探索中にはランダムイベントも発生し、その時々の選択によってプレイヤーの決断を試してくる。何らかの見返りと引き換えに恩恵を得るか、リスクを避けて堅実に進むか。こうした選択の自由も本作の魅力だ。獲得したスキルや遭遇したモンスターはコレクションとして蓄積されるため、過酷な探索の過程を記録として振り返る楽しみも用意されている。
色数を絞った迷宮ビジュアルは硬派な印象で、地下森林の暗がりや、水没都市の冷たい質感はいかにもな雰囲気を醸し出していて、迷宮という閉鎖空間の不気味さを構築することに成功している。この迷宮では、栄光と死が常に隣り合わせなのだ。

硬派な探索の果てにあなたは何を見るのか
本作は、伝統的な3DダンジョンRPGに、ローグライク特有の不確定要素を組み合わせた構造そのものに大きな魅力がある。
慎重に地図を埋めていく原点的な手応えはそのままに、常に死の影が付きまとう緊張感が、プレイヤーを迷宮の深淵へと引き込んでいく。最初から万全のパーティ編成ができるわけではなく、積み重ねていくプロセスはあるが、ストイックな探索をプレイヤー自身の知識が補っていく構造が見事に機能しており、試行錯誤の甲斐をより確かなものにしている。

ストーリー描写は必要最小限だが、硬派なシステム構築やリソース管理の楽しさ、突然訪れるゲームブックのような選択肢は、往年のファンから比較的最近の3DダンジョンRPGに馴染みがあるプレイヤーまで、幅広く楽しめるのではないだろうか。迷宮の深部で待つのは、救いか、あるいはさらなる謎か。このシビアな環境を制し、出口を見つけ出せるかどうかは、すべてあなたに懸かっている。
『THYSIASTERY(ジシアステリー)』は、PC(Steam)にて2026年3月10日より配信中だ。
| 基本情報 | THYSIASTERY(ジシアステリー) |
|---|---|
| 開発 | DIRGA Games |
| 販売 | DIRGA Games |
| 配信日 | 2026年3月10日 |
| 言語 | 日本語有り |
| 価格 | 1,399円(Steam) |
ライター:朝比奈 編集:LayerQ
