2026年5月22日~24日に、京都府・京都市勧業館 みやこめっせにて開催された「BitSummit PUNCH(以下、BitSummit)」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。
なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。


独自の魅力で広く注目を集める、期待の里山探索アドベンチャー
『里山のおと 春さんぽ』は、春の里山を舞台に自然や生き物を学んで遊べるポイント&クリックの里山探索アドベンチャーゲームだ。日本のゲーム開発スタジオ"里山のおと"こと、だいきち氏とみち氏の2人が手掛ける。
同スタジオが展開する『里山のおと』シリーズに連なるもので、Steam配信タイトルとしては前作『里山のおと 夏草こみち』に続く2作目となる。筆者は2025年に開催された「東京ゲームダンジョン7」でも本作を取材しており、その後の進捗を確かめるべく、今回あらためて試遊させてもらった。
本作は経済産業省の令和6年度クリエイター人材創出事業「創風」に採択され、今回のBitSummitではオフィシャルセレクションに選出。惜しくも受賞は逃したものの、アワードの「朱色賞<大賞>」と「ビジュアルデザイン最優秀賞」の2部門にノミネートされた。直前にはジー・モードによるパブリッシングも発表されており、今まさに注目を集めるタイトルの1つだ。


美しい里山を歩き、動物たちとヒントを紡ぐ探索のサイクル
物語は、友だちのキツネくんから「桜の木の下で待ち合わせて、いっしょにお弁当を食べよう!」という手紙を受け取ったタヌキくんが、約束の場所でお花見をするために山へ出かける準備をするところから始まる。
舞台は、日本のどこかにある春の里山。人の暮らしのすぐそばにあり、適度に人の手が入りながらも、豊かな自然や生き物と共生してきた地域だ。都市部から離れた原風景としての農村地帯。言葉で詳しく説明するのは難しくとも――多くの人がそんなイメージを抱く場所だろう。

ゲームシステムはオーソドックスな「ポイント&クリック」スタイル。マウスカーソルで画面内の気になる箇所を調べ、動物たちと会話を交わしたり、木や草花を集めたり、そうした里山の生き物に関する情報を入手したりしながら、ビジュアルとテキストからなる物語を読み進めていく。
どうやら人家に居候しているらしいタヌキくんは、山へ出かける前にお弁当を用意することに。食材となる山菜の調理法や豆知識が披露されるこのシーンは、先述の「東京ゲームダンジョン7」で構想を伺っていた部分。実際に実装されたゲーム画面を目にすることで、確かな開発の進捗を実感できた。
お弁当のほかに、里山の情報が記録される「里山ノート」と、荷物を入れる背負子(しょいこ)を身につけ、いよいよ里山へと出発する。

ここからが、本作のメインパート。美しく描かれた里山の一枚絵にはいくつかのクリック可能なポイントが存在する。動物をクリックすれば会話が始まり、植物をクリックすれば採取して背負子にしまい込む。そして道をクリックすれば、次の場面へと移り変わる仕組みだ。
里山は迷路というほど複雑ではないが、手探りのままでは目的地にはたどり着けない。そこで重要になるのが、道すがら出会う動物たちとの会話。彼らの頼みごとを聞き入れることで、正しく先へ進むためのヒントを得られる。

例えば、動物が探している木や草花を渡すシチュエーション。プレイヤーも最初は植物の見分けがつかない。しかし、出発前に風に飛ばされてしまった「里山ノート」のページを探索中に拾い集めることで、植物の特徴が判明し、それを頼りに正解を見つけ出すことができる。
こうしたサイクルによって、プレイヤー自身が里山への理解を深めていけるのが本作の魅力だ。
誰もが物語を最後まで楽しめる親切な設計
ブースでは、プログラミングを担当するだいきち氏と、イラスト・音楽・ストーリーを担うみち氏の2人にお話を伺うことができた。これまでの開発からブラッシュアップを重ねる中で、作品の方向性に大きな変化があったという。
当初は、ループを繰り返して知識を蓄えながら進み、ともすればゲームオーバーも発生してしまうゲームシステムも検討していたという。しかし試行錯誤の末「誰もが優しく遊べるアドベンチャーゲーム」へと舵を切った。道中で植物を特定する面白さは残しつつも、手詰まりになって進行不能に陥る心配はない。

じっくり時間をかけ、たとえ総当たりであっても必ずクリアまでたどり着ける仕様となり、ゲームが得意ではないプレイヤーであっても、美しい里山の物語を誰もが最後まで楽しめる、そんな温かい設計だ。
さらに、前回の取材時には未実装だった「里山ノート」の存在が、本作の魅力をより引き立てている。画面内でインタラクトした情報を知識としていつでも読み返せるこの機能は、ちょっとした植物入門の役割も果たしている。大人も子供も、たとえ田舎育ちであっても意外と知らない里山の環境について、ゲームを通して楽しく学べる仕組みだ。
手描きならではの温かみある表現と、章ごとに移り変わる里山の姿
画面を彩る絵本のようなイラストは、CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)を用いてデジタルで描いており、UIやノートの枠線はすべてフリーハンドの線で表現しているとのこと。直線ツールなどは便利な機能だが、手描きならではの歪みを残すことで、作品独自の温かみある雰囲気を生み出す狙いがあるのだそうだ。
また、章が進むごとにロケーションが変化していく点にも注目したい。物語の舞台は一貫して山の中だが、章を追うごとに山の入り口から徐々に標高の高い奥地へと進むうちに、周囲の風景や地形だけでなく、そこに息づく植生も次第に変化していく。

使い回しをせずシーンごとに異なる絵を1枚ずつ描き下ろしており、山の入り口だからこそ生えている植物、奥深くへ行かないと見られない植物。これらが章ごとの表現として細やかに描き分けられているのも特徴だ。
本作のビジュアルはどこか懐かしさを覚える風合いが印象的だが、いわゆる伝統的な「雅(みやび)」な和のイメージとはまた違う、日本の素朴な里山の姿を伝えていきたいという開発陣の想いが表現されているようだ。BitSummitは海外からの来場者も多く訪れるイベントだが、その想いはきっと伝わったのではないだろうか。
2027年春のリリースに向けて、Steam以外への展開にも広がる期待
現在の開発状況は、まずは第一章を作り込んでいる最中。遊びやすさを向上させるための細かな調整に注力している段階とのこと。全体の基盤となる第一章が固まれば、あとはボリュームを広げていくフェーズへと移る。
また、ジー・モードによるパブリッシングがBitSummit直前に発表されたばかりだが、コンソール展開にも定評のある同社がパートナーとなったことで、Nintendo SwitchなどSteam以外へのプラットフォーム展開にも期待できそうだ。
『里山のおと 春さんぽ』は、PC(Steam)にて2027年春に配信予定だ。

| 基本情報 | 里山のおと 春さんぽ |
|---|---|
| 開発 | 里山のおと |
| 販売 | ジー・モード |
| 配信日 | 2027年第一四半期 |
| 言語 | 日本語有り |
| 価格 | 未定(Steam) |
ライター:朝比奈 編集:レイリー


