2026年5月22日~24日に、京都府・京都市勧業館 みやこめっせにて開催された「BitSummit PUNCH(以下、BitSummit)」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。
なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。
※本稿では、グロテスクな描写を含むゲームを紹介しています。


失った記憶を母親との対話で取り戻そう
『Am I Nima』は、記憶を失った少女ニマが、母親との対話を重ねて記憶をたどっていくサイコロジカルホラーゲームだ。開発は、HO! Gamesが手掛ける。
プレイヤーは、ニマの脳内に浮かぶ単語を組み合わせて新しい単語を解放し、それを使って母親と対話していく。集めた単語は、母親が課す「記憶のテスト」に挑むための手がかりにもなり、対話を重ねるごとに過去の記憶が少しずつ明らかになっていく。


試遊版は、抽象的かつサイケデリックなアニメーション映像からはじまり、ニマと「見知らぬ者」との対話につながった。ニマは地下にある一室にいるようで、椅子に縛り付けられ、頭はロープで固定されていた。「ニマ…ニマなの?」と問いかけられ、返事をしなければならないのだが…。
本作のゲームシステムを一言で表すと、言葉のマージゲームだ。画面右側には、ニマの脳内にある単語が並び、これらを組み合わせることで新しい単語が解放される。試しに「ニマ」と「見知らぬ者」をドラッグして重ねてみると、「母親」という単語が解放された。解放した単語は画面左端の記憶欄に蓄積され、脳の絵の下にあるニマの顔に単語をドラッグすることで母からの質問に答えるための選択肢を作ることができる。

筆者は「母親」をニマの顔にドラッグし、「お母さん?」と言ってみた。すると、ニマは自分がニマ・リーであり、目の前の人物が母親アナベルであることを思い出す。母親は「ああ、あなたを失ってしまったかと…」と言いながらニマをハグしようとするが、寸前で思いとどまり、食事を持ってくると言って階段を上がっていってしまった。なぜ、ハグしてくれないのだろうか。
その直後、「転んで頭が割れちまえばいいのに」という言葉が流れ、筆者は思わず目を疑った。母親が反応していないことから、少なくともその場でニマが発した声ではないようだ。これがニマの内心なのか、それとも別の何かなのかは試遊した範囲ではわからなかった。だが、この母娘の間に何かがあったことを予感させる。


そうしていると、母親がお粥を持って戻ってきた。手の拘束こそ外されたものの、腰と頭はまだ椅子に固定されたままだ。「この女…近くで観るといっそう醜いな」と、また不穏な声が聞こえる中、母親は事故のせいでニマの記憶に障害が残っていないか確かめたい、食事をしながら話してほしいと言ってきた。
ここで再び単語を組み合わせて対話する場面が始まる。「お粥」と「空腹」を組み合わせて「気持ち悪い」を作り、それを使って「おえっ!」と言うと、ニマはお粥を吐き戻してしまった。2つの言葉を組み合わせるだけで、ここまで具体的な行動まで引き出せてしまうことに、筆者は奇妙な感覚を覚えた。
母親によれば、ニマは泳いでいる最中に頭を打ち、母親に助けられたのだという。この話から「痛み」と「泳ぎ」が解放され、それらを組み合わせると「血」と「岩」が浮かび上がった。同時に、ニマの記憶の中に石のような顔をした母親と、その手に握られた小さなナイフの絵がよみがえった。その後、母親は明日「本当の記憶のテスト」を行い、合格すれば地下室を出て普段の生活に戻れると告げた。

翌朝、目覚めたニマは自室のベッドの上にいた。ここからは部屋の探索パートとなり、室内のオブジェクトを調べることで新しい単語を集めていく。
一通り単語を集めてから母親を呼んでみると、かんぬきの外れる音がして、ドアがわずかに開いたが、チェーンロックは掛けられたままだ。この部屋には、かんぬきとチェーンロックがあるのか。もはや監獄のようではないか。


ふたりが地下室へと移動すると、「記憶のテスト」が始まった。母親がニマの前に取り出したのは、サメのぬいぐるみ。覚えのない懐かしさ、悲しみ、愛の感情がこみ上げると、「嘆き」から「父親」という単語が解放された。そして、このぬいぐるみが亡き父からのプレゼントだったことを思い出すと、ニマは「父親に会いたい、家族みんな一緒にいた頃がいちばん幸せだった」とつぶやき、泣き出してしまった。
その後、いくつかのテストを終えたニマは、まだ記憶がはっきりしないまま「あなたがしたことを絶対つきとめてやる」と母親に宣戦布告し、半ば強引に自室へ戻ってベッドに横になった。
夜も静まった頃、ニマがふと目を覚ますと、目の前に母親がいた。アイスピックを消毒シートで拭いている。目が覚めていたニマに気づくと、母親は「麻酔が足りなかった」とつぶやいた。声を上げようとした瞬間、ニマは自分の口が塞がれていることに気づく。
母親は、「処置が悪かった」とつぶやきながらアイスピックを振りかざすと、ニマの目に向けて…。衝撃的な展開に全身が固まる。そうして試遊版は終わった。

本作は、サイケデリックなグラフィックや「言葉を組み合わせる」というゲームシステムにまず目を引かれる。しかし、試遊を終えて強く感じたのは、本当の魅力はシナリオそのものにあるということだ。
地下室という閉ざされた空間で、母と娘が言葉を選びながら対話を重ねていく。このゲームシステムはふたりの関係そのものを表しているとも言える。会話に使える単語は限られており、ニマは自分の手持ちの言葉でしか母に向き合えない。
さらに、プレイヤーが選べるのはあくまで対話に使う「単語」であり、どんな口調や態度でそれを発するかまでは選べない。記憶を失った娘が、母親という存在を少しずつ言葉で取り戻していく過程そのものをゲームとして体験できるようになっている。
印象的だったのは、会話の途中で聞こえてくる謎の声だ。もしこれがニマの心の声だとすると、表向きは母を気遣うような言葉を発する一方で、心の中では「転んで頭が割れちまえばいいのに」「この女…近くで観るといっそう醜いな」といった、まったく裏腹な感情が共存していることになる。それが本当にニマ自身の声なのか、あるいは別の何かなのかはわからないまま進んでいく不安定さも、本作の大きな魅力だ。
さらに、淡々とした対話劇が続くだけではなく、記憶のテストが差し込まれることで、ゲーム全体に緩急が生まれている。何を信じればいいのかわからない不安定な状態に置かれながらも、気づけば世界に引き込まれ、あっという間に試遊時間が終わっていた。

怖がりだからこそ描けた、新しい文脈のホラー
試遊後に、HO! GamesのディレクターJeremy Ho氏にお話を伺った。HO! Gamesは、ディレクターのJeremy氏とプログラマーのAlvin氏のふたりの兄弟が立ち上げたチームで、本作には合計7名が参加している。
Jeremy氏とAlvin氏は、子どもの頃から一緒にゲームを遊んできて、いつかゲームスタジオを始めたいと話していたという。念願叶って制作を始めて目指したのは、「他のホラーゲームとは違う、ストーリー重視のホラーゲーム」だった。サイコロジカルかつアーティスティックで独特の雰囲気があり、プレイヤーが引き込まれるようなゲームを制作したかったと語ってくれた。
登場人物を母娘のふたりにしぼったのも、人間関係をシンプルにすることで、よりその関係性を深く掘り下げて描けるという判断からだという。確かに、本作では私たち人間にとって普遍的なテーマである母と子という関係を軸に濃密な心理劇を体験できるようになっている。

Jeremy氏自身は、子どもの頃から怖がりでホラーゲームもホラー映画もあまり多くは触れてこなかったという。だが、怖いという感情をそれだけ強く、鮮明に体験できるということは、ホラーゲームを作る上で、長い目で見るとプラスになると語ってくれた。だからこそ、既存のホラーの文脈に縛られない体験が生まれているのかもしれない。
また、ゲームタイトルにもいくつもの意味が仕込まれている。「Am I Nima」は逆から読んでも「Am I Nima」となる回文になっており、さらに英語の「anomaly(異常)」にも音が似ている。自分が何者なのかがわからないニマの心の揺らぎをタイトルそのものが体現していると言えそうだ。
『Am I Nima』は、BitSummit PUNCHの大賞にあたる「VERMILION GATE AWARD / 朱色賞」にもノミネートされた注目作だ。発売日は2026年10月9日を予定している。気になる方は、今すぐウィッシュリストに登録しておこう。なお、リリース時の対応言語は英語のみで、日本語ローカライズ版は発売後に追加される予定とのことだ。現在Steamでは体験版が公開されている。
| 基本情報 | Am I Nima |
|---|---|
| 開発 | HO! Games |
| 販売 | HO! Games, Outersloth |
| 配信日 | 2026年10月9日 |
| 言語 | 日本語対応予定(リリース時は英語のみ) |
| 価格 | 未定(Steam) |
ライター:ばんじーよこすか 編集:LayerQ

