片手をコントローラーそのものに! 箱型筐体へ生身の腕を差し込んで挑む一人称STG『ANRI』ブースレポート【BitSummit PUNCH】

朝比奈 / Asahina

2026年6月3日

2026年5月22日~24日に、京都府・京都市勧業館 みやこめっせにて開催された「BitSummit PUNCH(以下、BitSummit)」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。

なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。

BitSummit | 毎年京都で開催している日本最大級のインディーゲームの祭典 です / Japan’s Industry-Leading Independent Game Development Festival in Kyoto
毎年京都で開催している日本最大級のインディーゲームの祭典 です / Japan’s Industry-Leading Independent Game Development Festival in Kyoto

独自の箱型筐体と、生身の腕で挑むシューティング

ANRI』は、専用の箱型筐体に差し込んだ片手をコントローラーとしてプレイする、一人称視点のシューティングゲームだ。日本のゲーム開発スタジオ"チームゲハナシ"のシロ氏が手掛ける。

本作が出展されていたのは、会場3Fに設けられた「特殊デバイス/Unique Controller」ゾーンの一画。インディーゲームといえば、Steamをはじめとするプラットフォーム経由でのプレイが基本だが、実在する筐体上で動作する本作はイベント来場者だけが楽しめる特別な体験だ。

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実在する筐体と、何の機能を持たない白いデバイス

ブースのテーブル上に置かれているのは、プレイヤーに覆いかぶさるような高さ1mほどの黒い箱型筐体。手前には椅子が置かれ、内部の正面にはモニタが備え付けられている。

開発者のシロ氏から長方形の白いデバイスを手渡され、それを手のひらに乗せて筐体へと手を差し込むことでプレイが開始される。頭上からの光にトラッキングされた自らの手の動きによってコントロールしていく仕組みだ。手を開き続けることで弾丸のチャージと敵のバリア破壊ができ、敵のいる方向に向けて手を握ることでショットを放つ。

この体験において、特徴的な要素となっているのが手に持つデバイス。消しゴムほどの大きさの長方形をした小さな白いデバイスは、一見すると何らかのセンサーが内蔵されているように思えるが、シロ氏いわく「3Dプリンターで作られた、実は何の機能も持たないただの樹脂の塊」なのだという。

3Dプリンターで印刷されたデバイスは本来なら非常に軽い。だが、内部に黒い粘土が詰め込まれており、適度な重さが感じられるようになっている。「重い方が説得力がある」という開発者の意図によるものだ。ちなみに表面が黒ずんで見えるのは汚れではなく、中の黒い粘土が透けているためだという。

▲左が実際に手に持つ粘土が入った方で、右が3Dプリンタで印刷したままの状態。

ではなぜ何の機能も持たないものを握らせるかというと、そこには3つの狙いが存在する。1つ目は、プレイヤーの手の向きを上向きに固定すること。これがないと手が自由な方向を向いてしまい、トラッキングに支障が出る。

2つ目は、移動スピードの制御。デバイスの適度な重みによって手を動かす速度が自然とコントロールされ、極端なスピードでの挙動を防いでくれる。そして3つ目は、純粋に「握りしめるものがある」という感覚自体がもたらす効果。手に伝わる物理的な実在感が、そのまま自然な没入感へと直結していくのだ。

深掘りされた世界観と、並行する開発ライン

実は本作、詳細なバックストーリーや世界観も深く作り込まれている。文明が滅んだ後の世界を舞台に、本来なら戦争を終わらせるはずだったデバイス『ANRI』を用い、機械兵の頭脳を止めに行くという物語だ。シロ氏は「ワニワニパニックのワニのバックボーンを聞かされるようなもの」とユーモアを交えて笑うが、こうした深い世界観の存在が、直感的な操作スタイルに確かな説得力を与えている。

本作は今年から作り始めた作品で、現在の開発期間は約半年だという。シロ氏は昨年、同様に物理的な筐体を用いた『ぐるぐるパンパン』というタイトルを制作していたが、今年は本作を1年かけてじっくりと制作する予定とのこと。同時に、最初に手掛けた『紙装甲主人公と不死身のカエル』の年内リリースも目指しており、2つのプロジェクトを並行して進めている状況だ。

イベントだからこそ活きる、体験の設計と展望

今回のBitSummitで体験できたのは、5分程度でクリアできる内容。チュートリアル終了から80秒が経過すると中ボスが登場し、それを倒すことでクリアとなる構成だ。本作は今後もイベントのみでの出展となり、徐々にアップデートが重ねられていくため、現時点では「体験版」という扱い。

シロ氏は当初、本作をVR作品として制作することも検討していたという。しかし、VRではなくこの筐体型を選択した背景には、ギャラリーの存在――後ろから覗き込むことで、他のプレイヤーも何をするゲームなのかがひと目で理解できるという利点があった。「1分、2分と待っている間も、後ろで見ている人を退屈させないものにしたかった」というシロ氏の言葉は、イベントの熱気を間近で見てきた開発者ならではの視点と言える。

今後の展開として、次なるイベントで披露されるであろう「完成版」の設計もすでに見据えられている。完成版では全体の体験時間を7~8分ほどに想定。チュートリアル後の時間を凝縮し、中ボス戦の後に雑魚敵を倒す要素を挟んで、ラスボスへ至る構成を目指して開発が続けられているとのことだ。

物理的なデバイスを自らの手で動かす、イベントならではの特別な体験が詰まった『ANRI』。本作は継続的に展示され続ける類の作品ではないため、イベントで見かけた折にはぜひ皆さんもプレイしてみてほしい。さらなる進化を遂げた完成版を再びプレイする日が待ち遠しい。


基本情報 ANRI
開発 シロ
販売 シロ
配信日 イベント出展のみ
言語 日本語有り
価格 無料

ライター:朝比奈 編集:レイリー

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