知れば知るほどにすれ違い、愛おしくなる。SF世界で描かれる失った記憶を探し求める一人称視点の3Dアドベンチャー『プラトニカ・スペース』プレイレビュー

レイリーレイリー·
アドベンチャー紹介

本稿は事前にレビューキーをご提供いただき、執筆しています。

プラトニカ・スペース』は、無数の部屋を探索しながら記憶を取り戻していく一人称視点の3Dアドベンチャーゲーム。終末世界を旅する少女たちを描いたテキストアドベンチャー『ナツノカナタ』などを手がけたKazuhide Oka氏(以下、Oka氏)が開発を行い、KAMITSUBAKI STUDIOyokazeがパブリッシングを務める。

プレイヤーは、見知らぬ部屋で目を覚ました青年「リアム」の視点で物語を体験していく。名前以外の記憶を失ってしまったリアムは、何度ドアを開けても部屋が続く奇妙な場所を探索することになる。同じように過去の記憶を失ってしまった4人の男女とともに、それぞれの記憶を不思議な空間の中で探し求めていく。

以前は体験版についてご紹介したが、本稿では2026年8月14日よりSteamで配信開始となった本作の魅力についてあらためてご紹介しよう。

プラトニカ・スペース
扉を開けると、そこは誰かの記憶の中── 『プラトニカ・スペース』は、記憶を取り戻すために無数の部屋を探索するSFアドベンチャーです。
この記憶は誰のものなのか。記憶の旅路を紡ぐ一人称視点の3Dアドベンチャー『プラトニカ・スペース』体験版プレイレポート【ゲムダン11】
「東京ゲームダンジョン11」出展タイトルから、筆者が注目した魅力的なタイトルをご紹介。『プラトニカ・スペース』は、無数の部屋を探索しながら記憶を取り戻していく一人称視点の3Dアドベンチャーゲームだ。

シナリオ進行を邪魔せず、ほど良くチャレンジしたくなるゲーム性

本作では不可思議な雰囲気に包まれた部屋を探索してアイテムを見つけ、それらを使って誰のものかわからない過去の情景「記憶の断片」を再生していく。

「記憶の断片」にはエピソードごとに対応したアイテムが決まっており、どのアイテムが記憶と関連するのか推理しながら探索することになる。こういった基本的なゲームサイクルは前回ご紹介した体験版と変わっていない。

▲ときには、キーワードを埋めないと再生できない「記憶の断片」も存在する

一方で、記憶の断片を再生できる場所がよりわかりやすく示されるようになっていたり、記憶の断片の再生にどのアイテムで失敗したかなどが表示されるようになっていたりと、遊びやすさは大きく向上。

次にやるべきことなどもガイドしてくれるので、シナリオを進めていてつまずくといったことは起きにくいだろう。

▲シナリオの進行に必要な条件なども教えてくれる親切設計

アイテムを拾ったり、別の部屋への扉を開けたりするとき「意識」と呼ばれるパラメータを消費する点も同じで、この「意識」がなくなってしまうと1日の探索は終了。所持していたアイテムなどはすべてなくなるが、それ以外のペナルティはなく特にゲームオーバーになるなどの概念はない。

製品版では1日ごとに「記憶の断片」を3つ再生するというミッションが設けられており、これを「意識」がなくなる前に達成すると次の日にも所持アイテムを引き継げる。後ほど紹介する「因子」と呼ばれる新要素での強化も引き継げるので、できることなら達成したくなるという塩梅が上手くゲーマー心理をくすぐってくれる。

▲対応するアイテムを使うとミニゲームが遊べることも

そして、製品版で新しく登場したシステムが「因子」。こちらは「記憶の断片」を正しく再生できると、ランダムに抽選された3つの中から1つを取得できる強化要素だ。因子の効果は各部屋のドアを開けるときに発動し、「意識」を回復させたり、所持できるアイテム上限を増やしたり、特定アイテムを出現させたりと探索の助けになるものが揃っている。

また、不要な因子は1日の終わりに「因子ストレージ」へ入れて所持因子から外すことができる。因子は所持しているものすべてから、ドアごとにランダムで抽選され効果が発動するしくみとなっている。そのため、使いたい因子だけ多めに持ち込むことで発動確率を上げる、といった攻略もできるのは面白い点だ。

このように、ややランダム性の強いゲームシステムとはなっているが、運が悪すぎてゲームが進行できない……! というケースはほぼない。というのも、ストーリー進行で必須な「記憶の断片」の場合は、対応する部屋が出やすくなったり、近くに対応するアイテムが置かれやすくなったりといった調整を行っているとOka氏に語っていただいた。

実際にプレイしていても、シナリオ進行で詰まる場面は全くなくストレスフリーなつくりとなっていた。本作の夢うつつな世界観へ思う存分没入できるだろう。

▲探索中にキャラクターたちと出会うと、誰の記憶か特定するパートが発生することも。外しても特にペナルティはない

記憶を知れば知るほど、印象が二転三転していく

本作には主人公となる青年「リアム」を含めて、総勢5名のキャラクターたちが登場する。宇宙服姿でどこかミステリアスな雰囲気を漂わせる少女「エララ」、作業服姿で両耳が義耳の少女「ゾーイ」、左目に機械の義眼を付ける大人の女性「カトリーヌ」、杖を持ちやや厭世的な雰囲気を持つ壮年の男性「ウォルター」と、彼らは出自も見た目も一見バラバラに見える。

ゲーム内で再生される「記憶の断片」はこの5人のうちの誰か……ということまではわかるものの、最初のうちはわからないものがほとんどだろう。とはいえ、「記憶の断片」の回収方法はあくまで対応するアイテムを置くこと。誰の記憶かを正確に把握できなくてもシナリオは進んでいくので、そこまで深刻に考える必要はない。

▲SFらしい現実離れした世界観が垣間見える場面も序盤から散見される

そして、「記憶の断片」は集めるほどに一連の流れが見えてくるので、誰の記憶かもなんとなくわかるようになってくる。たとえば、各エピソードには記憶の持ち主以外の登場人物も存在するが、同じ人物の記憶であれば、そこに登場する友人や恋人なども同じ名前のはず。また、エピソード内の世界観や、登場人物の語り口からもなんとなく素性は見えてくる。

そうして、記憶を知れば知るほど、キャラクターたちの印象が二転三転していくのが本作の面白いところ。リアム以外の登場人物たちもそれぞれが記憶を集めたり、取り戻したりしているので、シナリオ内での立ち振る舞いも変容していく。

「記憶の断片」との出会い方によっては、早々に衝撃的な事実を知ってしまったり、逆に特定の人物にまつわる記憶と出会えずバックボーンが見えてこなかったり……とプレイヤーによってシナリオの見え方も異なるだろう。

だが、記憶とは明るいものばかりではない。ときには、その人物が見たくなかった・思い出したくないような記憶というのも存在している。また、本作の「記憶の断片」は本人以外も見ることができてしまう。ある記憶を見たときに抱く感情は当然人によって異なるだろうが、それは本作の登場人物たちも例外ではない。

最初は全員が、この不可思議な空間から抜け出そうと協力していた。しかし、記憶を取り戻すごとに、それぞれの自我はどんどんと強くなり、少しずつすれ違っていくさまが本作では描かれていく。

人によっては見たくもない過去を見せられたり、知られたくない過去を知られたり……知れば知るほどにすれ違っていくというのも非常にもどかしい気持ちになる。なぜなら、プレイヤーの私はキャラクターのバックボーンを知れば知るほど、彼らのことが愛おしくてたまらなくなっているからだ。自然と彼らに幸せになってほしいと願ってしまうような、そんな没入感が本作にはあった。

では、すれ違い対立するくらいなら最初から出会わないほうが良かったのだろうか。いっそ共感できる人とだけずっと一緒にいればいいのだろうか。そんな問いかけを本作のシナリオからは感じることができた。この答えはあなた自身の手で紡いでほしい。きっと、この回答も人によって異なるものとなるだろうから。

シネマティック、かつシンプルに

2026年8月9日に東京・浜松町にて開催された「東京ゲームダンジョン13」にて、本作の開発を手がけたOka氏にお話を伺うことができた。最後にそちらもご紹介しよう。

本作は6月に開催されたSteam Nextフェスで体験版を配信していたが、そのときのフィードバックを受けて製品版は大きく最終調整を行ったとのこと。調整はシナリオ面・ゲームデザイン部分など多岐にわたったが、いずれもゲームのテンポ感を改善するという目的で行ったそうだ。

たとえば、シナリオ面では衝撃的な事件が起こるタイミングがやや後ろだったが、これだと掴みが弱かったとのことでシナリオの出す順番を調整したとのこと。また、シナリオも当初は一定の日数経過で進行するという時限開放式だったが、プレイヤーのペースで読めるようにこのあたりは取り払うといった調整を行ったそうだ。

探索面はどこまで詰めるか悩んでいたそうなのだが、最終的にはストーリードリブンな作品としての完成度を優先し、ストーリーを進めるうえで障害とならないようにすることを心がけていたとのこと。初期のバージョンと比べると、よりシンプルに流れを洗練していったようだ。

最後に本作の見どころについて伺うと、やはりシナリオだと答えてくれた。今回の物語はSFジャンルの王道な展開を意識して構成されているとのことで、どちらかというと映画的なつくりを目指して作っていったそう。過去作は情景描写などを細やかに行う小説的なシナリオが多かったこともあり、大胆な方向転換とも言えるだろう。

ゲーム内にボイスなどはないのだが、本作を遊んでいてもシネマティックなつくりはしっかりと感じられる。登場人物たちの細やかな心象描写の数々、記憶とアイテムを通してゲームと同じように過去の情景へとダイブする感覚などが、読んでいるときの没入感を高めてくれる。

また、余談ではあるが、本作のミニマムな設計にはOka氏の手ごたえもあるそう。プレイ時間が3~5時間程度にまとまったパッケージを個人的な制作目標としても掲げていたそうで、それを無事に達成できたという安堵感もあるとのことだった。

プラトニカ・スペース』は2026年8月14日よりSteamにて配信中で、現在17%OFFとなるリリース記念セールも実施中。また、2026年8月27日よりNintendo Switchで配信されることも決定した。

前述のとおり、3~5時間程度のプレイ時間とコンパクトにまとまっているので、忙しい現代でも遊びやすいパッケージとなっている。ちょっとした洋画を見る気分で本作を手に取ってみるのはいかがだろうか。


基本情報 プラトニカ・スペース
開発 Kazuhide Oka
販売 KAMITSUBAKI STUDIO, yokaze
配信日 2026年8月14日 / Steam
2026年8月27日 / Nintendo Switch
言語 日本語有り
価格 1,200円(Steam
1,200円(Nintendo Switch

ライター:レイリー 編集:LayerQ

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