原作を忠実に再現した新たな舞台で描かれるムーミンの世界『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』プレイレポート


朝比奈 / Asahina

本稿は事前にレビューキーをご提供いただき、執筆しています。

スナフキン:ムーミン谷のメロディ』は、ムーミンシリーズの主要キャラクターの1人であるスナフキンを主人公に、音楽を使ってムーミン谷の平和と調和を取り戻すアドベンチャーゲームだ。ノルウェーのオスロを拠点とする、インディーゲーム開発スタジオ"Hyper Games"が手掛ける。

フィンランドの作家トーベ・ヤンソン氏が描いた、世界的に愛されている著名な作品『ムーミン』シリーズ。小説、漫画、絵本、アニメ作品など多くの媒体で展開されてきたが、本作ではそうした原作をもとにゲームオリジナルのストーリーが展開されていく。

Snufkin: Melody of Moominvalley

スナフキンを主人公に描かれる新たな物語

シリーズの代名詞でもあるムーミントロールたちは、冬になると冬眠してしまう。本作は、そんな時期を離れて旅に出ていたスナフキンが、春の訪れとともにムーミン谷に戻ってくるところから物語は始まる。

そう、今作はムーミンではなく、タイトルのとおりスナフキンこそがプレイヤーの操作する主人公なのだ。原作にも彼を主軸とするエピソードはあったが、ゲーム作品として実際に彼を操作できるこの日が来たことは、なんとも感慨深い。

ひと冬を外で過ごし、馴染みの友人たちとの再会を心待ちに戻ってきたスナフキンだったが、谷の様子がどこかおかしい。そこかしこに無粋な立て札があり、自然を抑えつけて整備された「公園」が広がっていた。

新しい谷を作るのだという"公園番"と、彼に従う"警察官"の姿を目撃したスナフキンは、ムーミン谷をあるべき姿へと戻すべく奮闘していくこととなる。

普段クールで理性的な印象のあるスナフキンだが、シリーズファンの方はご存知のように、実のところ反骨精神にあふれる一面を持っている。自由を愛する彼にとって、彼自身やなにかに対して制限や縛りを生む規則などといったものには強く反発するのだ。それは信念と言い換えてもいい。

日本向けのムーミンシリーズ公式Webサイトにて、そうした特徴的なエピソードが紹介されているので、併せてご覧いただくとより彼の人となりを理解できると思う。そうした意味でも、原作の世界を忠実に再現している物語なのだ。

ムーミン谷の異変を解決していこう

本作のゲームシステムは、スナフキンが公園をはじめとして、ムーミン谷で起こっているさまざまな異変を、住民たちやそこかしこに棲む生き物たちと関わり合いながら解決していくものとなっている。

オープンワールドというほどにどこまでも探索できるわけではないが、行動範囲は意外と広く、原作で見たような風景や、ムーミントロールたちはもちろんのこと、スニフリトルミイといった馴染みのあるキャラクターたちと出会えるのも嬉しいところ。

▲馴染みのある風景や、主要なキャラクターと出会えるとより気分が盛り上がる

また、スナフキン愛用のハーモニカなどの楽器を奏でることで住民や生き物たちの反応を引き出すことができる。例えば、水に棲む生き物に川の向こうに運んでもらったり、後についてきてもらって高台に登る足場になってもらったりという簡単な音楽パズル要素も用意されている。

いずれにしても、ゲームとしての歯ごたえよりも世界観の表現が重視されていると感じるので、普段あまりゲームに触れることのない方でも物語に集中して楽しめるのではないだろうか。

自然のあるべき姿を取り戻そう

今作の中心的な出来事である公園に立ち向かうパートでは、園内を警備する警察官の目をかいくぐって立て札を引っこ抜いたり、石像を倒したり、ときには誰かの助けを借りて警察官を追い出したりしていく。

警察官は巡回していたり、一箇所に留まって周囲を見回していたりするが、動きも遅めで視線も見えるようになっているので比較的簡単に出し抜ける。もし見つかってしまっても、ペナルティもなく少し前に戻されるだけなので安心してほしい。

ときには植木に身を隠し、ときには音楽で誘導した鳥に注意を引いてもらいながら、どんどん進めていこう。最終的に園内での目標を達成すると短いカットシーンが流れ、公園はきれいさっぱりなくなる。

そうして、抑えつけられていた森はやがて元の姿へと戻っていくのだ。

▲思い切りよく公園を壊していくスナフキン

ムーミンという作品を表す忠実な翻訳

▲アニメ版のキャラクターたちの声が聴こえてくるよう

国内外のインディーゲームのパブリッシングサポート、および、パブリッシングを担う「架け橋ゲームズ」のサポートタイトルである本作。翻訳は、同社のローカライゼーションマネージャーを務める桑原 頼子氏が担当されている。

日本においても親しまれている『ムーミン』という作品には、キャラクターのセリフ1つとってもファンが思い描く共通のイメージというものがある。感覚的で言語化が難しいが、ムーミンシリーズのキャラクターならば「こう喋るだろう」というものが確実に存在する。それが今作の翻訳においてうまく表現されていると感じられた。

原作ありきの本作において、それは深く作品を理解しなければ実現できない。きっと、多くの日本のファンにとっても「ああ、これはムーミンだ」と感じられるものとなっているはずだ。

なお、2023年9月21日~24日にかけて、千葉県の幕張メッセにて開催された「東京ゲームショウ2023」にブース出展された際に、桑原氏からお話を伺う機会があった。その際の様子は弊誌の別記事にて紹介しているので、併せてご覧いただければと思う。

【TGS2023】トーベ・ヤンソン氏の世界観が忠実に再現された新しい舞台『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』ブースレポート
「東京ゲームショウ2023」出展タイトル『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』のブースレポートをお届けしよう。ムーミン谷を舞台にスナフキンが活躍する音楽アドベンチャーゲームだ。

素敵なパッケージ版も販売予定

今回ローンチを迎えたSteam、および、Nintendo Switch(デジタルダウンロード版)からは約3ヶ月遅れることにはなるが、2024年6月13日にはNintendo Switch向けにパッケージ版の販売が予定されている。

通常版限定版が用意されており、その内容物は以下のとおりだ。

  • 通常版(4,480円)
    • 『スナフキン:ムーミン谷のメロディ』本編
    • 追加コンテンツ「大切な思い出」ダウンロードコード(ゲーム内でスナフキンが身につけられるアイテム2種)
    • ペーパーキャラクタースタンド2枚(8体)
  • 限定版(8,800円)
    • 通常版に含まれる内容物
    • 開発の裏側に迫る100ページ超えフルカラーの豪華なアートブック
    • オリジナルサウンドトラックCD
    • オリジナルピンバッジ

形として手元に置けるというコレクション的な側面もあり、特に限定版に同梱されるオリジナルピンバッジなどはムーミンシリーズのグッズとしての魅力も高い。パッケージ版を待って本編をプレイしたいという方にとっては、もうしばらく待つことにはなってしまうものの、それだけの価値があるだろう。

通常版、限定版はいずれも各店舗にて予約受付中なので、確実に入手したい方は予約を検討されてみてはいかがだろうか。


基本情報 スナフキン:ムーミン谷のメロディ
開発 Hyper Games
販売 Raw Fury
架け橋ゲームズ / パッケージ版
配信日 2024年3月8日 / 日本語有り
定価 2,300円(Steam
2,550円(Nintendo Switch
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