『HYNPYTOL(ヒンピトル)』は、90年代のレトロゲームに影響を受けた、倉庫番パズルのアドベンチャーゲーム。ウイルスが侵入した人体のミクロの世界を舞台に、主人公の「キラーT細胞」が感染細胞を処理していく。
本作はPC版がSteamで2023年9月にリリースされ、新要素を加えたNintendo Switch版が2025年1月16日に配信開始された。PC版もアップデートにより同等の内容になっている。
開発元は韓国を拠点とするインディーゲーム開発スタジオbase0。本作はゲームボーイカラー作品のドット絵やサウンドを意識して制作されており、開発チームにとっては念願叶っての任天堂ゲーム機での発売となる。
筆者は本作の日本語翻訳を担当させていただいた。ひらがな多めのレトロゲーム風のテキストを楽しんでいただけると嬉しい。

免疫系の細胞たちを擬人化した冒険物語
細胞たちはゆるくてかわいいキャラクターデザインで、序盤では集まってにぎやかに暮らしている様子も描かれるが、ウイルスにより体内の世界が滅亡に向かい、次第にシリアスな展開となる。新たに「免疫系図鑑」が追加され、キャラクターとストーリーを振り返りやすくなった。

手を伸ばして何でもこなすハイタッチアクション
主人公のT細胞は、移動するときも壁やブロックを手でつかんで自分の体を引き寄せるようにして進む。他にも、倉庫番パズルのようにブロックを押したり引いたりするときや、感染した細胞を除去するときに手を使う。手だけで何でも解決していくというのが、本作の独特なゲームデザインだ。

レトロゲーム愛に満ちたドット絵とサウンド
本作は元ネタが分かる方ならニヤリとしそうなレトロゲームへのオマージュが至る所に隠されている。小部屋に寄り道したり、オプションで壁紙を変更したりして探してみよう。Nintendo Switch版でもゲーム内で「実績」を獲得できるので、実績を集めながら隠し要素を見つけてほしい。

新たに追加された画面効果を設定すると、ブラウン管テレビのような画面効果や、懐かしの携帯ゲーム機のモノトーンカラーを再現できる。相当なこだわりぶりだ。

大学生が結成したチームの挑戦はまだまだ続く
こんなにもレトロゲーム好きなbase0の開発スタッフたちは、リアルタイム世代ではなく、PC版をリリースしたときは大学生だった若者たちである。その後、メンバーはそれぞれの進路に進み、普段はゲームとほぼ関係のない仕事をしながら、同人サークルのようにインディーゲーム開発を続けているという。
base0(ベースゼロ)というスタジオ名は、基盤となるものがなく未経験から出発したという意味だが、独力でNintendo Switch版の移植と販売まで成し遂げた熱意には驚かされる。『Bathysphere』(公式X)という次回作の制作も始めているので、base0の今後に注目したい。

基本情報 | HYNPYTOL(ヒンピトル) |
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開発 | base0 |
販売 | base0 |
配信日 | Switch版 2025年1月16日 / 日本語有り |
定価 | 1,700円(Switch) |
1,700円(Steam) |