細部までの描写が光る! 懐かしき80年代アニメリスペクトのSFビジュアルノベルADV『機動戦艦ガンドッグ 太陽系物語』プレイレポート

朝比奈 / Asahina

2025/02/28

本稿は事前にレビューキーをご提供いただき、執筆しています。

機動戦艦ガンドッグ 太陽系物語』は、80年代の日本のアニメーション作品やPC-9800作品にインスパイアされたSFビジュアルノベル・アドベンチャーゲームだ。南ウェールズを中心に、国際的なスタッフで構成されるゲーム開発スタジオ"Space Colony Studios"が手掛ける。

舞台は星暦214年の宇宙。先の大戦を生き残り、新たに木星軌道パトロール艦「ガンドッグ」に警備士官として配属された主人公。パトロール任務の最中、銀河の彼方から謎の救難信号をキャッチしたことをきっかけに、艦のクルーたちは星の海に潜む危機に巻き込まれていくこととなる。

Steam:機動戦艦ガンドッグ 太陽系物語
星暦214年、環太陽系大戦終戦から4年余り―― 先の大戦で仲間を全員失った主人公は、木星軌道パトロール艦——JFS「ガンドッグ」に配属された。その任務は銀河の果てに向かい、謎の救難信号に対する調査を行うこと。しかし、 闇に包まれた星の海に潜むとんでもない危機が一行に襲いかかることに……

謎の救難信号を追って星の海を航海しよう

本作のゲームシステムは、シーンを描いた静止画や動画を背景に、キャラクターの立ち絵や音楽、ゲームならではの画面効果などを組み合わせて、テキストベースで物語を読み進めるビジュアルノベル、または、ノベルゲームと呼ばれるもの。

ビジュアルノベルの中にも分類があるが、本作は一本軸の通った物語の中である程度の自由度を持たせ、一癖も二癖もあるようなキャラクター同士の会話や、シーンに応じた行動や選択によってさまざまな展開が見られるタイプだ。ポイント&クリックによるインタラクティブな操作も含まれている。

ストーリーを進めていく上ではさほど迷うようなことはないと思うが、ある種の脱線をして世界観を深堀りしていくところにこそ本作の真価があるように感じられる。その裏側まで覗き込みたいプレイヤーにとっては「読む」ことの楽しさを味わえる作品となっている。これについては後述しよう。

主人公の名前・性別はスタート時に選択可能。口調や相手の反応が変わる程度でストーリーに変化はないようなので、好みで選んで構わない。

先述のとおり、PC-9800作品にインスパイアされている本作は全体的にレトロスタイル。画面上に常に表示されているUI(ユーザーインターフェース)に並んだ「移動する」「調べる」「使う」「話す」といった各種コマンドを使って、艦内を探索したり、登場人物たちと会話を重ねたりしていく。

現代の直感的なUIに慣れたプレイヤーにとっては、やや画面の狭さや使いにくさを感じるかもしれないが、これも当時のPCゲームを再現した形なのだと思ってほしい。

そんなUIも懐かしいが、やはり特徴となるのはキャラクタービジュアル。ゲーム内オプションから、画面をモノクロ16bitフルカラーに変更できるが、特に16bitフルカラーは80年代当時の絵柄にセルアニメ風の彩色を施したものとなっていて、強烈なノスタルジーを感じさせてくる。

しかも、80年代の日本のアニメーション作品をリスペクトしたシーンが随所に散りばめられていて、例えば『超時空要塞マクロス』をオマージュしたセリフなど、それに気づいたプレイヤーがニヤリとできるものなっているところがまたニクい。

これらの本作を形作る構成全体が徹底されているので、プレイヤーもそれに乗ってみるとより楽しめるだろう。

世界観の背景まで存分に覗き込める

ビジュアルノベルなのでテキストを「読む」ことが主軸となるのだが、筆者がすばらしいと感じたのはその描写の細かさ。直接見えないものはあえて書かないという手法を取ることで、情景描写が簡略化されている作品もあるのだが、本作ではその点に妥協が見られない。

今そこで起きている状況にはどういう背景があるのか。目にしているシーンの画面外にはどういう風景が広がっているのか。手にしたモノの仕組みはどうなっているのか。そして、キャラクターの動作や感情、場の空気感といったものが細やかに描写されている。突然脇道に逸れたかのように科学的・軍事的な説明が差し込まれる脱線も絶妙で、読めば読むほど世界の解像度が深まっていく。

ストーリーを進めるためのいわゆる正解のルート以外の道が用意されていても、さほど重要ではない展開が繰り返されるだけというパターンになってしまうタイトルもあるだろう。だが、その点で本作に妥協はなく、寄り道も含めて物語を形作っているように感じられる。

ハヤカワSF作品などに触れてきたプレイヤーには、特に刺さるのではないかというのが筆者の印象だ。

「太陽系物語」シリーズの第1作目にあたるということで、今後の展開にも注目していきたい『機動戦艦ガンドッグ 太陽系物語』は、2025年2月20日よりPC(Steam)・Nintendo Switch・PlayStation 4/5にて配信中。

開発チームによればSteam Deck互換性認証も取得済とのことなので、携帯機でプレイしてみるのも良さそうだ。


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基本情報 機動戦艦ガンドッグ 太陽系物語
開発 Space Colony Studios
販売 Astrolabe Games
配信日 2025年2月20日 / 日本語有り
定価 1,999円(Steam
1,999円(Nintendo Switch
1,980円(PlayStation 4/5

この記事で紹介されているゲーム

機動戦艦ガンドッグ 太陽系物語

インディー

アドベンチャー

RPG

日本語対応
¥1,999
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発売日2025年2月20日
ジャンル
アドベンチャー
RPG
インディー

カテゴリ
シングルプレイヤー
Steam実績
Steamクラウド
ファミリーシェアリング
部分的コントローラサポート
ストアページリンク

機動戦艦ガンドッグ 太陽系物語

星暦214年、環太陽系大戦終戦から4年余り―― 先の大戦で仲間を全員失った主人公は、木星軌道パトロール艦——JFS「ガンドッグ」に配属された。その任務は銀河の果てに向かい、謎の救難信号に対する調査を行うこと。しかし、 闇に包まれた星の海に潜むとんでもない危機が一行に襲いかかることに……

デラックス エディション & コンプリート エディション

デジタル コンプリート エディション

  • スタンダード版 x 1

  • デジタルサウンドトラック『宇宙の響き』x 1

    • 全22曲を収録

  • アートブック『機動戦艦の軌跡』

    • アートブックは欧米地域限定のフィジカル版アートブックの電子版

      (開発資料・監督コメント付、英語のみ。)

デジタル デラックス エディション

  • スタンダード版 x 1

  • デジタルサウンドトラック『宇宙の響き』x 1

    • 全22曲を収録


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ゲームについて

一つの戦争の終わりは、新たな戦争の始まりにすぎない。

星暦214年、環太陽系大戦終戦から4年余り――

先の大戦で仲間を全員失った主人公は、木星軌道パトロール艦——JFS「ガンドッグ」に配属された。その任務は銀河の果てに向かい、謎の救難信号に対する調査を行うこと。しかし、 闇に包まれた星の海に潜むとんでもない危機が一行に襲いかかることに…

ゲームの特徴——黄金世代への敬意が満載のSFストーリー

この作品は、独自の世界観を持つビジュアルノベルゲームです。開発を行った Space Colony Studios は、洗練された工夫で昔ながらの完璧なSF感を用いて架空の世界を構築しました。機動戦艦「ガンドッグ」とともに星の海に向けて出航することで、黄金世代を築いた素晴らしいSFノベルゲームが作り出す独自の雰囲気を楽しめるでしょう。

物語について――星の海の下に潜むとんでもない危機

重力の束縛から脱することに成功したが、戦争の暗い影から逃れることはできずにいた人類。

星暦214年、環太陽系戦争終戦から4年目を迎えた頃、銀河は依然として束の間の脆い平和の上に成り立っていた。JFS「ガンドッグ」は命令により、無限の星の海に向けて出航し、謎の救難信号に対する調査を行うことに。しかし、そんな彼らに闇に潜む脅威が近づいてきているなど、乗組員は誰も想像さえしていなかった…普通の任務に見えるが、この旅は極めて危険な冒険となるだろう。

遊び方——調査、インタラクション、分析、推進

この作品では、ビジュアルノベルゲームによく見られる典型的なプレイ方法を採用しています。

プレイヤーは複雑な人間関係の中で立ち回り、キャラクターたちの言葉の端々(あるいは大量の会話)から重要な手がかりを見つけ、様々なタイミングや段階で異なる隠され方をしているかもしれない大切なモノやことを調べながらゲームを進めることになります。

ステージについて――機動戦艦の中での冒険

本作は「太陽系物語」シリーズの第1作目であり、すべての物語の原点でもあります。ゲーム内では、すべての物語の始まりの場所である戦艦「ガンドッグ」が完全な形でお披露目されているので、その点もチェックポイントです。様々な仕掛けがある機関室、いつもにぎやかなブリッジエリア、さらには乗組員にそれぞれ与えられている居室――合計、数十個ものステージが細かく描かれています。「ガンドッグ」内を探索するにつれ、他の乗組員たちとの信頼関係も築け、内部には色んな兵器も配備されているので、ぜひたくさん歩き回ってみてください!

キャラクターについて――いきいきとした登場人物

本作で語られる物語には、まさに人間の人生が描かれています。そこに登場するキャラクターの魅力こそ、パブリッシングを担当する我々が何より感動した最大のハイライトかもしれません。颯爽としたバーターミューズ艦長、明るいキャシー、頼もしい姉御肌の機関長……もちろん、魅力的な男性キャラクターも大勢います。性格も容姿も、能力も立場も異なる同僚たちと様々な形で交流し、役に立つ情報を手に入れながらストーリーを進めましょう。