謎の生物を培養する育成ゲームに、体験の奥行きを与えるキャラクターボイスが実装『CultureHouse』ブースレポート&開発者インタビュー【東京ゲームダンジョン7】

ばんじーよこすか

2025/02/21

2025/02/22

2025年2月15日~16日にかけて、東京・浜松町にて「東京ゲームダンジョン7」が開催された。今回は2日目の16日に展示された作品の中から、魅力的なタイトルをピックアップしてご紹介しよう。

東京ゲームダンジョン 7 ► 2025年2月15日(土)・16日(日)、東京・浜松町でコスパ最強のインディゲーム展示会を開催!
「東京ゲームダンジョン」は個人や小規模チームが制作するデジタル・ゲーム(インディゲーム)の展示会です。手頃な出展料と充実した設備で、気軽に作品を出展・試遊できるイベントを目指しています。主催者も個人でゲームを作っているインディ開発者です。みんなで国内のインディゲームを盛り上げましょう!

謎の生物を培養する育成アドベンチャーゲーム

CultureHouse』は、20世紀のモダニズム住宅からインスパイアを受けた研究施設カルチャーハウスで、7日間生活しながら謎の生物を培養する育成アドベンチャーゲームだ。開発はfuturalaが手掛ける。

弊誌では、これまで「東京ゲームショウ2023」「デジゲー博2023」「東京ゲームダンジョン4」とたびたび本作を紹介してきた。今回は、キャラクターの音声が実装されたビルドのプレイレポートと、音声収録についてfuturalaの渡部氏に伺ったインタビューをお届けしよう。

Steam:CultureHouse
CultureHouse(カルチャーハウス)は生物の培養実験を題材とした育成+アドベンチャーゲームです。 20世紀のモダニズム住宅から影響を受けた建物を舞台に、穏やかで奇妙な日々と、実験の背後に隠された幾つもの謎、そして最後に訪れる終末を描きます。

本作の舞台は、20世紀のモダニズム住宅である研究施設カルチャーハウスだ。プレイヤーは、この研究施設兼住宅の持ち主だった生化学者の研究を引き継ぎ、7日間にわたって謎の生命体ジェニオを培養する。

施設を訪れる人物と会話したり、周辺で起こる奇妙な出来事を目撃したりする中で、ごく普通の実験生活が次第に奇妙なものへと変容していく。いったい過去にカルチャーハウスで何が起こったのか、生命体ジェニオとは何なのか…それらの謎を解き明かすのが本作の目的だ。

▲ピペットで培地に移そう
▲温度と濃度管理が大事

今回音声が実装されていたのは、案内役の女性ノモス=ゾーイと、ガスマスクの少女の2人である。

筆者が初めて本作を試遊したのは約2年前のこと。それ以降、折に触れて本作をプレイしてきた。今回実装されたノモス=ゾーイの第一声を聞いたとき、思わずヘッドホンを外し、開発の渡部氏に「めっちゃいいですね…!」と大きな声を上げてしまった。それほど、実装されたゾーイの声は筆者がイメージしていたゾーイの声そのものだったのだ。

▲謎の女性ノモス=ゾーイ

というのも、ゾーイは、本作の「何が起こるのか、次の展開が読めない」というじわじわくる恐怖を演出する大きな要素のひとつを担っている。プレイヤーが少し突っ込んだ質問をしても答えずに話をそらしたり、あまり表情を変えずに淡々とプレイヤーにやるべきことを説明したりなど、ゾーイはミステリアスな女性だ。

今回実装されていたゾーイの声は、そんな謎めいたキャラクターの雰囲気にぴったりで、声が入る前よりも物語への没入感を格段に高めていた。そんなゾーイの声は、ナレーター・声優の成松海悠氏が担当している。

一方、謎のガスマスクの少女の声を担当したのは、声優の山下 歩氏だ。今回プレイしたビルドにおけるこのキャラクターは、ほぼ感情が読み取れないゾーイとは対照的で、「私に近寄らないで!」と声を荒らげるなど、終始要領を得ない言葉ばかりを口走る感情的なキャラクターである。だが、ゲーム全体の雰囲気を壊すこともなく、主人公に対して警戒する様子が表現されていた。

試遊版におけるこの少女の登場シーンは、ゾーイに比べて限定的だ。そのため、筆者には感情的でゾーイより少し年下の少女というイメージしかなかった。今回少女の声を聞いたときに、「あなた、こんな感じだったのね」と自分の中にぼんやりとあった少女のイメージが明確となり、本作の世界が一気に広がった! これまで本作をさまざまなイベントで試遊してきた方も、そうでない方も、ぜひ一度2人の声を聞いてみていただきたい。

▲謎のガスマスクの少女
▲実験は順調…のようだが

「キャラクターボイス実装の経緯」開発者インタビュー

プレイ後、渡部氏に2人のキャラクターの音声収録についてお話を伺った。

――『CultureHouse』に音声を入れたきっかけは何ですか?

開発を始めた当初から、キャラクターに声をつけたいという思いは持っていました。実際、イベントに出展するたびに「声はないんですか?」と聞かれることも多く、そのたびに音声の重要性を感じていました。ただ、NPCは7人ほど登場予定で、どのキャラクターも台詞が多く演技力が求められる役柄ばかりです。音声を入れるとなると、コストも難易度もかなり高そうだと思っていました。

――そこから、どうやって音声収録を実現することになったのでしょうか?

以前から文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業の存在を知っていて、いずれ応募したいと思っていたんです。音声収録という明確な目的ができたことで、「これはチャンスだ」と感じて応募を決めました。

――応募のプロセスはどのようなものでしたか?

企画書や必要な予算の内訳、制作スケジュールなどをまとめて提出し、書類選考とプレゼンを経て、2024年8月に採択の知らせを受けました。制作費は2025年3月末まで支援対象ですが、採択が決まった時点では、声の依頼先もシナリオも決まっていなくて…。そこから7ヶ月しかなかったので、急いで準備を進めました。

――声優はどういった観点で選ばれましたか?

まず、Xで「誰に声を依頼するのがいいか」とアンケートを取ったんです。「声優プロダクション」「ネット声優」「VTuberやYouTuber」「舞台俳優」という選択肢の中で、圧倒的に「声優プロダクション」という回答が多かったんですよね。それに、文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業でアドバイザーをしてくださっている米光一成さんからも、「プロの声優さんに頼んだほうがいい」とアドバイスを頂きました。

――最終的に青二プロダクションに依頼されたと聞きました。

はい。老舗の大手なので、一般的なアニメやゲームのような声だけでなく、外国映画の吹き替えのような雰囲気もリクエストしやすいと考え、自社スタジオを持っている点も大きな魅力でした。

――キャスティングはどのように行いましたか?

ウェブサイトのサンプルボイスを何度も聞き、純粋に声と演技がキャラクターに合っているかどうかで決めました。それと同時に音声収録用の台本も執筆しました。短時間で集中して書き上げたので、本作を作りはじめたときからイメージしていた物語やテーマをしっかり反映できたと思います。

――今回実装されていたのは2人のキャラクターですね。

はい。2025年2月の文化庁の成果発表イベントで展示するデモ用に、案内役の眼鏡の女性ノモス=ゾーイと、ガスマスクの少女の台詞を2025年1月下旬に収録しました。収録は六本木にある青二プロのスタジオで行い、エンジニアと音響監督も手配してもらい、3時間で200以上の台詞を収録しました。ノモス=ゾーイ役は成松海悠さん、ガスマスクの少女役は山下歩さんです。

――キャラクターの声にはどのような演出をお願いしましたか?

本作では「最初は人物像が見えず、会話を重ねることで本当の姿が浮かび上がる声」をお願いしました。文化庁の支援を受けていることもあり、「商業的なゲームでよくある声」や「売るための声」ではなく、「ゲームにおける声の演出の実験」をしたかったためです。

――今後の収録予定や、挑戦したいことはありますか?

残りの登場人物6人分、1000以上の台詞を2025年3月上旬に収録予定です。実は今回、予算の都合で出演を諦めた超ベテラン声優さんがいて…。その方に物語の鍵を握るキャラクターを演じてもらいたいので、開発終盤にその方を起用するためのクラウドファンディングも検討中です。

――最後に、文化庁の成果発表イベントについて教えてください。

2025年2月15日から24日まで開催されています。会場ではゲームに登場するバルセロナチェアに実際に座って、プロジェクターの大画面でプレイできる展示を行います。ぜひ、会場で本作の世界を体験しつつ、キャラクターたちの声にも耳を傾けていただければ嬉しいです。


基本情報 CultureHouse
開発 futurala
販売 Kodansha
配信日 2025年予定 / 日本語有り
定価 未定(Steam

この記事で紹介されているゲーム

CultureHouse

アドベンチャー

インディー

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ジャンル
アドベンチャー
インディー

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シングルプレイヤー
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CultureHouse

CultureHouse(カルチャーハウス)は生物の培養実験を題材とした育成+アドベンチャーゲームです。 20世紀のモダニズム住宅から影響を受けた建物を舞台に、穏やかで奇妙な日々と、実験の背後に隠された幾つもの謎、そして最後に訪れる終末を描きます。

CultureHouseは生物の培養実験と20世紀のモダニズム建築、シュルレアリスムのデペイズマンなどから着想を得た育成+アドベンチャーゲームです。

あなたは、失踪した生化学者が暮らしていた住宅兼研究施設カルチャーハウスで7日間生活しながら、ジェニオと呼ばれる謎めいた生命体を育てていきます。

カルチャーハウスと縁のある訪問客と会話をしたり、周辺で起きる奇妙な出来事を観察しながらジェニオの育成を進めていくうちに、穏やかだった日常が少しずつ奇妙なものへ変容していきます。

世界の滅亡(あるいはあなた自身の死)によって一度幕を閉じた物語は、カルチャーハウスを訪れた1日目の朝から再びスタートし、あなたの選択によってジェニオは前回とは異なる姿に成長します。

破滅的なエンディングを何度か経験しながら、あなたは、生化学者が残したノートや訪問客との会話を手がかりに、カルチャーハウスで起きた悲劇的な過去の出来事、そして滅亡へ向かう世界とジェニオを繋ぐ謎に迫っていきます。