あるゲームジャンルにおいて、ユーザーから高く評価され、その作品抜きには語れないとされるもの。そのビジュアルやゲームシステムが多くのリスペクトを集めるもの。本稿では、そんな"傑作"と称されるインディータイトルを取り上げてご紹介しよう。
『OPUS 地球計画』は、星々の彼方に埋もれた地球を探して宇宙を巡る、ストーリーベースのナラティブなSFアドベンチャーゲームだ。台湾のゲーム開発スタジオ"SIGONO"が手掛ける。
人類が宇宙に進出してから幾星霜。いつしか行き過ぎた遺伝子操作によって、人類は存亡の危機に瀕していた。そこで、人類の起源となる遺伝子を求め、かつての母なる「地球」を探して2人の研究者と1体のロボットを乗せた宇宙船オプス号は、広大な星の海へと飛び立つのだった。


まだ見ぬ地球を求めてオプス号は飛ぶ
本作のゲームシステムは、ゲーム画面を水平方向から見た視点(サイドビュー)の2Dアドベンチャー。地球探査船オプス号を舞台に、今ではその位置座標が不明となってしまった、人類にとっての母星である「地球」の位置を発見することが目的となる。
物語に登場するのは、この地球探査プロジェクトのために搭乗した2人の研究者"リサ・アダムズ博士"と"竹内マコト博士"。そして、リサ博士によって制作された汎用船外活動ロボットOP1414型こと、通称"エム"。物語はこのエムの視点で描かれていく。

だが、この広大な宇宙から正確な座標もわからない地球を探し出そうという探査プロジェクトは、あまりにも壮大すぎるものだった。地球を発見できることを信じるリサ博士と、どこか懐疑的なマコト博士を載せてオプス号は進むが、ある時突然の停電がオプス号を襲う。
やがて部分的に電力が復旧し、自身も再起動したエムだったが、2人の姿はどこにも見当たらない。代わりに姿を現したオプス号のAIが作り出したホログラムの"リサ"と共に、想いを継ぐかのようにエムは地球探査を続けていくのだが――

ゲームの流れとしては、主に「地球探査パート」と「宇宙船内部のパート」で構成されている。
地球探査パートでは、オプス号に備え付けられた宇宙望遠鏡を操作して、地球が存在する可能性がある星域に点のように散らばる星々を1つ1つ探査していく。

探査を試みた星には、半径・温度・質量・水の4つのパラメータがあり、記録上の地球のデータと照らし合わされることで、それが地球であるかどうかを判別する。その過程において、さまざまな恒星・惑星・衛星を発見していくこととなるが、なかなか地球は見つからない。
そうして長い長い時間をかけて、エムは地球を見つけるために銀河を巡っていくのだ。

一方、宇宙船内部パートでは徐々に電力が復旧していくオプス号の中で、過去と現在の時間軸が交錯し、オプス号で起こった出来事が少しずつ明らかになっていく。
本作の魅力となるのがこのストーリー描写で、2人の研究者が直面する人間らしい心の機微や葛藤。ロボットでありながらその心を理解するかのように行動するエムと、言葉を紡ぐAI。その移ろいがドラマチックに描かれる。

現在はPC(Steam)とコンソール(Nintendo Switch)にも配信されているが、もともとはモバイル端末向けに制作された本作。それもあってか2時間程度で結末に至れるようなミニマムな作りとなっているのだが、そこには物語が凝縮されて詰め込まれている。
丁寧に描かれていく物語は、佳境を迎えた瞬間から一気に加速しながらさまざまな真相を明らかにしていき、プレイヤーの感情を一瞬置き去りにするが、やがて追いつくのを待つかのように結末に向かって収束していく。

これは体験なので明確な説明は難しいところだが、緩急の付け方が絶妙なバランス感で成り立っていて、それも踏まえたストーリーテリングの巧みさこそが本作を形作り、プレイヤーの感動を呼び起こす。
本作が描くテーマは「心のつながり・絆」。漫画や小説など媒体を問わず、一篇の物語というものは、それが短編であっても如何にそのテーマを伝えきれるかによって真価が問われるものだが、それが秀逸なレベルで成立しているところが本作が名作として支持される所以なのだろう。
一貫したテーマで描く『OPUS』シリーズ
SIGONOが手掛ける『OPUS』はシリーズ化されており、これまでに『OPUS 魂の架け橋』『Rocket of Whispers: Prologue(『OPUS 魂の架け橋』の前日譚)』『OPUS 星歌の響き』がリリースされている。
基本的にはストーリー上の繋がりはなく時間軸も異なるが、世界観は共通しており、いずれも一貫して「心のつながり・絆」がテーマとなっている。



シリーズ第2弾の『OPUS 魂の架け橋』と『Rocket of Whispers: Prologue』では、今や荒廃した惑星を舞台に、人々の魂をロケットに乗せて宇宙(そら)へと送る役目を担う最後の巫女リン=フェイと、ロケット技師の青年ヨハンの2人の物語が綴られた。
そして、続く第3弾『OPUS 星歌の響き』では、未知なる惑星「龍脈」に眠る膨大なエネルギーの謎と秘密を巡る、龍脈に連なる巫女と呼ばれた少女エイダと青年リバクの永きにわたる宇宙の旅路が描かれている。


2作目以降はリードプラットフォームがモバイル端末からPC(Steam)となったことで、それに応じるかのようにグラフィックや演出が強化され、ストーリーのボリュームも増しているなどプレイフィールの変化は感じられるが、そのテーマは10年近く変わることなく連綿と続いている。
OPUSシリーズ最新作は2025年秋の配信予定
現在、SIGONOはシリーズ最新作となる『OPUS: Prism Peak(原題『OPUS 写心吾山』)』の開発を進めている。
都会からの帰郷をきっかけに、幻想と現実が交錯する不思議な世界へと迷い込んだ主人公。そこで出会った記憶を失った少女と共に、記憶のかけらを求めて旅をしていく。古びたカメラのファインダー越しに覗く風景は世界の真実を映し出し、消えゆく運命にある世界を記憶するかのように収めていくのだという。


今作は集英社ゲームズがパブリッシングしており、2025年4月11日に配信されたインディーゲームの最新情報を届けるオンラインイベント「The Triple-i Initiative 2025」内において、ゲームプレイ映像を納めた最新のトレーラーと共に、配信時期が2025年秋となることがアナウンスされたばかり。
まだ物語の全貌は見えていないが、そのテーマ性は変わることなく引き継がれているようで、ある種の約束された物語として再びその感動に出会わせてくれることを期待してやまないのだ。

基本情報 | OPUS 地球計画 |
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開発 | SIGONO INC. |
販売 | SIGONO INC. |
言語 | 日本語有り |
配信日 | 2015年10月22日 / iOS |
2015年10月22日 / Android(配信終了) | |
2016年4月21日 / Steam | |
2017年11月30日 / Nintendo Switch | |
定価 | 無料~アプリ内課金(iOS) |
1,700円(Steam) | |
500円(Nintendo Switch) |