残暑も厳しい今日この頃。猛暑の中で涼める憩いの場所といえば、筆者の中ではやはり喫茶店だ。冷房の効いた店内でよく冷えたアイスティーを一口飲めば、さわやかな口当たりとともに暑さもきれいさっぱり忘れられるというもの。……だが、その注文が"秘密の合言葉"だったとしたらどうだろうか。
今回取り上げる『アイアイ喫茶店』は、どんな注文をしても奥の部屋へ通される「合言葉」になってしまう喫茶店が舞台のマルチエンディング型アドベンチャーゲーム。インディーゲーム制作団体の麺屋すぱいす 東京支店が開発を手掛ける。
本作は喫茶店に訪れたお客さんの視点で、選択肢を選びながらシナリオを読み進めていくビジュアルノベル型の作品となっている。
本稿では、2025年8月29日よりPC(Steam)にて発売されている本作の魅力についてご紹介しよう。


何を頼んでも奥の部屋へ通される喫茶店
本作は朝早くに喫茶店を訪れる場面から始まり、とりあえず店員さんへ頼みたい物を注文する。
メニューには「アイスコーヒー」や「抹茶ラテ」といった喫茶店らしいものから、「見様見真似の炒飯」といった不安になるものまで並んでいる。とりあえずプレイヤー自身が頼みたいものをクリックして注文してみることにする。

そうして注文すると、どういうわけか店員さんの表情が一変し、謎めいた奥の部屋へと通される。どうやら先ほどの注文自体が合言葉だった……と、ここまでは一度憧れるほどにワクワクする展開だが、問題はその合言葉。
決まった組み合わせで注文することで奥の部屋へ行く合言葉になる、というのがこの手の"お約束"だろう。それが、この喫茶店では何を頼んでも奥の部屋へ通されてしまう。それが「アイスコーヒー」でも、「見様見真似の炒飯」でもだ。

本当に「アイスコーヒー」が合言葉だとしたら、この喫茶店は一体何人のお客さんを奥の部屋へ連れ込むつもりなのか。そんなツッコミも追いつくことはなく、プレイヤーは奥の部屋へ通されてしまう。奥の部屋へ通されたあとの展開は、注文全てで異なるという驚異的な差分の多さも本作の魅力だ。
どうでもいいような事実に主人公とシンクロしながらツッコむことになったり、ちょっとメモしたくなるようなお役立ちレシピを教えてくれたりと、奥の部屋に何が待ち受けているかは注文次第。ユーモラスな文章に魅了され始めたら、あなたはもう本喫茶店の虜となるだろう。

喫茶店へ訪れる感覚で遊べる
一見コメディタッチに仕上がっているように見える本作だが、実のところしっかりとした推理要素も存在する。朝5時という異様に早い時間から営業中の喫茶店、多すぎる合言葉、明らかに注文しすぎの先客。状況だけ切り取るとギャグにしかなっていないこれらも全て伏線……かもしれない。
マルチエンディング形式も物語に深みを与えており、ただ喫茶店で注文をするだけかと思いきや、予想外のところからシナリオが分岐していくこともある。エンディングでのさりげない一言がヒントになるときもあり、そのヒントを手掛かりに行動を変えてみると……? という選択式アドベンチャーならではの面白さもつまっている。

周回して遊ばないと解禁されないエンディングもあるが、1周5分程度とサクサクプレイが終わるので、周回が苦にならないのも忙しい現代においては嬉しいところだ。
物語をしっかり推理していくうえで役に立つのが「ストーリーマップ」機能だ。シナリオ内で登場したキャラクターたちの相関図や時系列、重要な単語などを逐一記録してくれるので、メモを取らずとも重要な情報をまとめてくれる。推理に詰まったら、一度ストーリーマップを見返してみるのもありだろう。
それでも詰まってしまった……! というときにも、公式サイトにヒントと解法が載っている。物語を最後まで楽しむ上での憂いはないだろう。

クリアまで1~2時間程度と短編にまとまった本作だが、隙あらばプレイヤーを笑わせてくれるギャグ要素と、裏に潜む真相を探っていく真面目な推理要素が良いバランスでブレンドされている。手に取りやすいお値段に遊びやすいボリュームと、ふらっと喫茶店へ訪れる感覚で遊べる作品だ。
『アイアイ喫茶店』は現在、PC(Steam)にて発売中。涼しい自室で一つ気分転換に、本喫茶店へ「合言葉」を注文しに行ってみてはいかがだろうか。
基本情報 | アイアイ喫茶店 |
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開発 | 麺屋すぱいす 東京支店 |
販売 | 麺屋すぱいす 東京支店 |
配信日 | 2025年8月29日 |
言語 | 日本語有り |
価格 | 450円(Steam) |
ライター:レイリー
編集:nawa