Indie Gemは、リリースを控える期待の作品群から、明日を煌めく原石のようなタイトルを発掘し、体験版を元に紹介していくコーナー!
『LITTLE NIGHTMARES -リトルナイトメア-』および『Little Nightmares II -リトルナイトメア 2-』を手掛けたスウェーデンのゲーム開発スタジオ"Tarsier Studios"が、新たに挑む完全新作ホラー・アドベンチャー『REANIMAL』。
最近リリースされた『Little Nightmares III -リトルナイトメア 3-』では同スタジオが開発から離れたこともあり、彼らが次にどんな世界を描くのかに注目していたファンも少なくないだろう。本作は、まさにその問いに応える形で生まれた新たな作品だ。


弊誌はインディーゲームを中心に扱っているが、本作については元・独立系スタジオ(現在はTHQ Nordic傘下)の新作という観点から紹介している。
希望と恐怖が交錯するダークアドベンチャー
物語は、行方不明の友達を救い出すため、兄と妹がかつて故郷と呼んでいた地獄のような島から脱出を試みるところから始まる。海と陸を行き来しながら、互いの力を頼りに過酷な環境を生き抜いていくその旅は、緊張と希望が入り混じるサバイバルとして描かれている。
Tarsier Studiosが得意とする歪んだ造形美と陰影の濃いビジュアルは本作でも健在で、異形の存在が漂う世界の中に、かすかな光と救いの可能性を見出そうとする姿が印象的だ。

『REANIMAL』はシングルプレイに加え、ローカルおよびオンラインの協力プレイにも対応。共有カメラによって2人の行動が同じ画面で捉えられる演出は、単なる共闘ではなく、常に相手の存在を意識させる緊張感を生み出している。
恐怖を共に体験するというコンセプトが貫かれた構成は、Tarsier Studiosが磨いてきた演出力を新たな形で発展させていると言えるだろう。
霧の海を越えて、2人は謎の島へ――体験版で描かれる静かな恐怖と絆
それでは、今回Steam Nextフェスで触ることができた体験版の模様を紹介しよう。
ゲームは、霧の深い洋上でボートを操る少年のシーンから始まる。視界は白くかすみ、先が見通せない。唯一の手がかりである赤いブイの光を頼りに進んでいく途中、海面に浮かぶ少女を見つけて救い上げることで合流を果たし、そこから2人の旅が始まる。

まず驚かされたのは、キャラクターにボイスが当てられているという点だ。しかも日本語吹き替えに対応している。
一見ささいな要素に思えるが、先述の「リトルナイトメア」シリーズや、著名な『LIMBO』や『INSIDE』など、ノンバーバル(セリフや文字を使わず、動きや環境描写だけで物語を伝える)な手法で世界を表現してきた系統の作品とは明確に異なる方向性を示している。
セリフがあることで、キャラクターの心情や関係性をより直接的に感じ取ることができ、世界観への没入を深めている印象だ。もっとも、頻繁に喋るわけではなく、体験版では2度のカットシーンでわずかに言葉を交わす程度にとどまっていた。本編でどの程度語られるのか、今から気になるところだ。

――やがて2人は霧の先に浮かぶ謎めいた島へと上陸し、奥地へと足を踏み入れていく。
本作では少年と少女が力を合わせて行動することになる。冒頭でお伝えしたとおり協力プレイにも対応しているが、今回の体験版をソロでプレイした場合、操作できるのは少年に固定される。少女はAIで動き、呼び寄せたり待たせたりといった簡単な指示を出すことが可能だ。

テキストやUIによる誘導は存在せず、何をすべきかはプレイヤー自身が周囲の環境から判断する。試行錯誤の余地を残しつつも、難易度は理不尽にならないよう慎重に設計されている印象で、基本的にはこの流れを繰り返しながら進んでいく。
ロケーションは全体的に薄暗く、少年はライターを、少女はランタンを手に持ち、2つの小さな光が足元を照らす。操作は歩く・走る・ジャンプといった基本的なものだが、1人では越えられない障害を2人の連携で突破していく設計になっている。片方が踏み台となり、もう一方を上へ押し上げ、手を取って引き上げる──そうした動作が、ゲーム全体の協力要素として組み込まれている。

ステージは海上から島、さらに下水道や荒廃した建物へとシームレスに移り変わっていく。カメラワークは固定ながら、縦にも奥にも動きがあり、画面を立体的に使う構成だ。視点の切り替えがないぶん、場面転換の演出がスムーズで、展開に途切れを感じさせない。探索型アドベンチャーとしての没入度も高い。
終盤では、放棄された車両基地で2人の何倍もある巨大な追跡者に追われるという緊迫したシーンも登場。逃走の最中にもカメラワークや演出によって緊迫感と感情の揺れが伝わり、息をのむ展開のままプレイを終えることになった。

30分程度と短いプレイ時間ながら、作品の完成度や演出面の確かさを感じさせる内容だった。特に、環境の変化やカメラの動きによってプレイヤーを導く設計は見事で、世界をさまよう感覚そのものが物語の一部として機能している。
カットシーンでのボイスの存在はあるものの、基本的にはセリフに頼らず、動作や構図を通して心情を伝える手法には、これまでの制作経験に裏打ちされた確かなノウハウが感じられた。本編では、この閉ざされた世界がどのように広がり、2人がどんな運命を辿るのか――その行方を見届けたくなる作品だ。
『REANIMAL』は、PC(Steam)・コンソール(Nintendo Switch 2, PlayStation 5, Xbox Series X/S)でのリリースに向けて鋭意開発中だ。
| 基本情報 | REANIMAL |
|---|---|
| 開発 | Tarsier Studios |
| 販売 | THQ Nordic, Amplifier Studios |
| 配信日 | 未定 |
| 言語 | 日本語有り |
| 価格 | 未定(Steam) |
ライター:朝比奈 編集:LayerQ

















