2025年9月25日~28日に、千葉県・幕張メッセにて開催の「東京ゲームショウ2025(以下、TGS2025)」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。
なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。


答えのない問いに向き合うゲーム体験
『ドーナツの穴』は、答えの存在しない問いに答えていく思考実験アドベンチャーゲームだ。開発は、宮村あつき氏とかこ の にこみ氏が手掛ける。
「ドーナツに穴はあるのか?」と考えたことはあるだろうか。本作では、このような正解も不正解もない問いに対して、プレイヤーが答えを出していくことで自分自身を深く知ることができる。


今回は、東京ゲームショウ2025限定の試遊版をプレイさせていただいた。まず、画面に現れたのはキービジュアルにも登場している白いキャラクター・わたし(CV:菜月なこ)だ。頭から白い布のようなものをかぶり、二重の花飾りのようなものを上に載せている。
「わたし」は、プレイヤーに対して「いくつか質問をします。間違いも正解もないので、思う通りに答えてみてください」と言う。最初の質問は、「お気に入りのカップは、割れてもお気に入りといえる?」というものだった。
「わたし」の後ろには2つのドアがあり、それぞれに選択肢「割れてもお気に入り」か「もうお気に入りじゃない」が書かれている。そこで、筆者は「もうお気に入りじゃない」を選択。ドアを開けて次の部屋に進むと、その問いに対して、どれくらいの割合のプレイヤーが同じ選択肢を選んだのかを確認できた。
このように、問いに答えたあとには他のプレイヤーの答えを知ることができ、自身の思考をより深く掘り下げられるようになっている。なお、この統計データはドアを開けた瞬間にリアルタイムで集計され、それまでの全プレイヤーの回答が反映される。


今回の試遊版では、計6問の問いに答えた。どの問いも簡単には答えを出せないものばかりで、1問目の「お気に入りのカップ」の問いでさえ、筆者はしばらく考えこんでしまった。正解がないからこそ、自分の価値観が浮き彫りになりそうだ。
中には、「ここはどこだと思う?」という問いに対して、「実験室」「夢」「ゲーム」などの他に「幕張メッセ」というメタ要素を含む選択肢も用意されていた。繊細なフォントや簡潔でわかりやすいUIデザイン、グラフィックによる洗練された世界観の中で、イベント期間中のみの特別な演出が違和感なく機能しており、思考と遊び心が共存する印象的な体験だった。

Unity 1週間ゲームジャムからSteam版へ
試遊したあとに、本作を手掛けた宮村氏とかこ氏にお話をうかがった。宮村氏がメインのディレクションとモーション以外のグラフィックを、かこ氏がプログラミングを担当している。
本作は、2024年12月に開催された「Unity 1週間ゲームジャム」のお題となっていた「ない」の回を通じて開発されたもの。テーマである「ない」を見たときに、宮村氏は数年前に友人から投げかけられた「ドーナツの穴ってあると思う?」という問いを思い出した。
そこから、「植物に魂はあると思う?」などの答えのない問いに答え続けるというゲームコンセプトが生まれた。こうして完成したゲームジャム版を公開したところ、SNSを中心に多くの反響が寄せられたため、Steam版の開発へとつながった。

かこ氏は、プレイヤーが遊んでいる最中に迷わないようSEなどの表現に特にこだわって開発しているとのこと。筆者が試遊時に感じたプレイヤーフレンドリーかつ洗練された世界観は、宮村氏による実体験から生まれた奥深い質問と、かこ氏による丁寧な演出の組み合わせのなせる技と言えそうだ。
なお、本作は選択した答えに応じてストーリーが分岐し、問いも変化する。キャラクター「わたし」がいったい何者なのか、このゲームの世界はどこなのかなどについては、製品版をプレイしたらわかる…かもしれないとのこと。
正解のない問いを通じて、自分自身を深く知ることができる思考実験アドベンチャー『ドーナツの穴』の発売は、2026年内を予定されている。日本語以外にも英語、中国語(簡体字、繁体字)に対応予定とのこと。ひとりでじっくり向き合うのはもちろん、友達と一緒にプレイして考えを共有するのも面白そうだ。気になる方は今すぐウィッシュリストに登録しておこう。なお、1週間ゲームジャム版は公開中なので、そちらも併せてチェックしてみよう。
基本情報 | ドーナツの穴 |
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開発 | 宮村あつき, かこ の にこみ |
販売 | room6 |
配信日 | 2026年 |
言語 | 日本語有り |
価格 | 未定(Steam) |
ライター:ばんじーよこすか
編集:LayerQ